表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウァンパイア物語2  作者: 衣月美優
1/8

巣から逃げたウァンパイア!?


 俺の名前は奏井(かない) まさと。高校二年生になったばかりだ。

 母親の海花(みか)はウァンパイアの研究家、父親の隼人(はやと)はその手伝いとファミレスの店員をしている。

 俺はウァンパイアなんているわけないと思っている。少なくとも、俺が生まれたときには存在していなかった。

 父さんたちはウァンパイアを何度も見たと言うけれど、本当かどうか・・・

 まぁ、本当にいたとしても研究なんてする必要ない。

 もう人間は殺されてなどいないのだから────・・・




 ある日の学校帰り。俺は少し遠回りをして帰っていた。

 帰り道の途中、俺と同い年くらいの少女がボロボロになって倒れていた。

 俺はその少女に駆け寄り

「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」

 と、声をかけた。

 すると、少女は目を覚まして

「だ、大丈夫です。それより助けてください!私、このままじゃ・・・」

 と、怯えた声で俺に訴えてきた。

 俺は何があったのかよくわからないので、とりあえず落ち着いてもらった。

「何があったんだ?」

 落ち着いたところで俺が訊くと、少女はこう答えた。

「私、逃げてきたんです。ウァンパイアの巣から」




 俺たちは近くのベンチに座って話をすることにした。

「・・・で?ウァンパイアの巣から逃げてきたって?」

 俺が首をかしげて訊くと、少女は

「はい。信じてもらえないと思いますけど、私、ウァンパイアなんです。それで、ちょっとしたことから他のウァンパイアたちに命を狙われていて・・・それで逃げてきたんです」

 と、答えた。

 俺は混乱して

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ウァンパイアって本当にいるのか?」

 と訊くと、少女は小さく頷いた。

「じゃあ、他のウァンパイアたちはこれからお前を・・・?」

 俺がまた訊くと

「えぇ。きっと私を殺すまで狙ってくると思います」

 と、少女は答えた。

「じゃあ、これからどうするんだ?」

 また俺が訊くと、少女は困ったように

「どこか、隠れられるところがあればいいんですけど・・・」

 と言うので、俺は思いきって

「じゃあ、うちに来ないか?」

 と、言ってみた。

 少女は驚いたように目を丸くし

「で、でも・・・迷惑じゃないですか?それに、あなたまで危険な目に遭ってしまうかも・・・」

 と、言った。

「それなら大丈夫だ。実は俺の両親・・・特に母親がウァンパイアの研究をしているんだ。だから、他のところより安全だと思う」

 俺はこう言って、迷惑でもなんでもないと伝えた。

 そして、ウァンパイアだということは伏せて命を狙われていると言えば、協力してくれるだろうと言った。

 それなら・・・と、少女は俺の家に来ることを決めたみたいだった。

「じゃあしばらくよろしくな。俺は奏井 まさとだ。お前は・・・っていうか、ウァンパイアに名前ってあるのか?」

 俺は自分の名前を告げてから、少女に訊いた。

 少女は首を横に振って

「いいえ。ウァンパイアにはアルファベットでしか・・・私はYと名付けられていました」

 と、答えた。

「そうか、じゃあ・・・由美(ゆみ)小野寺(おのでら) 由美にしよう」

 俺がそう言うと、少女はコクリと頷いた。

 “小野寺”も“由美”もクラスメイトにいる名前を付けただけだ。

「じゃあよろしくな、由美。あ、あと、敬語はいいから」

 俺は改めてよろしくと言った。

 由美も笑って

「うん。これからよろしくね、まさとくん」

 と、言った。




 やっと見つけた。M・・・いや、奏井 海花の血を引く者を────・・・

 あの、人間になったウァンパイアの息子なんて、生きていていいわけがない。

 一家まとめて殺してしまおう。

 まぁ、しばらくはこの一家の世話になろう。

 そして演じるのだ。ウァンパイアたちに襲われているということを・・・

 奏井 まさとには何の恨みもないが、死んでもらう。

 恨むのなら、母親を恨むのだな。

 ウァンパイアでありながら人間に恋をし、あろうことか人間などになった母親を。

 あんな、人間になったウァンパイアなどいらないのだ。

 私のように“氷の心”を持っていれば、人間なんて弱い者に恋をすることなどないのだ。

 少なくとも、私はしない。

 私は“氷の女王”と呼ばれているのだから・・・

 まぁ、とりあえずしばらくは『小野寺 由美』として過ごそうじゃないか。

 そうしていれば奏井 まさとに、奏井 海花に、奏井一家に深く関わることができる。

 それに奏井 まさとに関わっていれば、人間やこの世界のことも詳しく知ることができるだろう。

 現女王として、人間を殺す計画も立てなければならないしな。

 まぁ、まずは奏井一家を殺すことに力を入れよう。

 人間を殺す計画はそれからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ