8 悲惨
今回は結構短いです。
時が流れるというものは早いもので、入学してからもう半年経ってしまった。
勿論様々な事があった。
この学院の入学試験は個人の総合的人間性を全く加味していない故入学早々没落(退学)した生徒も少なくなかった。
具体的には、遅刻を多くしていたとか、講義を真面目に聞いていなかったとか、後は問題を起こしてしまったりだとか至ってシンプルな理由だ。
そんなことするなら最初から入学試験にそういう最低基準みたいなのを設けろよと思いつつ、学校側から容赦なく突きつけられる退学命令を受けた生徒の絶望に塗れた顔を幾度か見ていたのだが。
かくいう俺も少なからず問題を起こしてきた。
最初に言っておくが故意じゃないからな?
ただの、本当にただの偶発的な事故だ。
一番印象に残っているのは入学してから間もなく行った魔力操作の授業だな。
魔力操作は魔法において云々などの長ったらしい教師の説明をど真面目に聞いていた俺は、実践訓練の場で支給された魔力の流れを円滑にするという短剣ほどの小さな杖に言われた通りの行動をした。
目を閉じて、手の力を抜いて、手に魔力が来るようなイメージを持って、それを……
そして次の瞬間。分かるだろ?
悲劇の到来だ。
急に杖が熱くなりだし、我慢出来ずに落としてしまったことが悲劇の開幕の最初のドミノを倒してしまったわけだ。
そのまま重力に従って落ちた杖の地面にヒビが入り、それだけならまだ良かったのだが、そのヒビはとどまることを知らず――その教室一帯を崩壊寸前までに追い込んだ。
崩壊寸前、というのは教師が魔法で崩壊を防いでくれたからである。
その事件以来、俺は個別に魔力操作について頭がオーバーヒートしてもおかしくないくらい教え込まれ、結果的に他のクラスメイトよりも早く魔力を上手く操作できるようになった。
あとはこの世界の魔力を凝縮した石、魔石という石についての授業で、魔石の扱いを間違えてしまったために俺の右手が爆散したりと、まあ魔道具関係の授業などで両手の指に収まりきらないほどやらかしていたわけだ。
しかしこれは俺がまだ魔力操作を完全に把握していなかったが故の事故であって、仕方のないことだったのだ。
ついでに言うと、このような事件を受け、詳細を知らない他クラスの生徒が俺のことを「完全にヤバイ生徒」と言うのも仕方のないことである。
そんな俺が未熟だった頃の思い出を思い出し――まだ入学してから半年しか経っていないが――俺は担任から配られた進路先のプリントに目を通していた。
魔法には基本的に火、水、土、風、雷、光、闇の七属性がある。
雷属性は近年発明された属性だと聞いたが、それはさておき。
魔術師の素質を持つものが全ての属性の魔法を扱えるわけではない。
個人的に得意、不得意な属性が存在し、不得意な属性は習得出来ない。
要はいくら努力しようが越えられない壁があるという事だ。
だが過去には全属性扱える魔術師もいたという。
そんな教師の言葉に生徒達が憧憬の声を上げる中、「自分の得意な属性を一生懸命ここで磨けば、きっとその魔術師にも引けを取らない程の実力を得られることが出来るかもしれない」とは教師の言った言葉だが、これには、「そんな大層なものに憧れるくらいだったらもっと堅実に魔法を習得しろ」という言外のニュアンスが込められている気がしてならない。
そんなわけで今までの半年間は、魔力の操作の習得と並行し、自分の得意不得意の属性を見極める時間でもあったのだが、結果だけいうと俺は雷、光、闇の三属性を扱えることが解った。
言い換えればそれらの属性を俺は得意とすることである。
三属性を習得出来るものは多くなく、多くの生徒は大体一か二属性のみであった。
そんな彼らに若干の優越感と憐憫の情を感じていた俺だが、果てさてこれからの学院生活はどうなってくるのか。
それを是非とも書きたいのだが、しばし空いてしまった空白の半年についてめぼしい出来事を書かせてもらおう。
入学してから暫くして訪れた学院祭の話である。




