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如月の優雅な一日(?)

「う〜ん、久しぶりによく寝たな〜」


大会から三日後、勇者一行は旅立った。

今日は更に四日後。

つまり、大会から一週間が経っていた。


「やっぱり独り身って気楽だな〜昔を思い出すぜ」


昔とは転生前の事である。

中一からずっと一人だった如月にとって、今の暮らしはとても懐かしく感じていた。


「取り敢えず、ギルド行くかな?久しぶりに面白いクエストあるといいな〜」


取り敢えず、如月は服を着て大会で手に入れた槍を持ち、ギルドに向かった。









今日もギルドは大勢の人で賑わっていた。

如月はカウンターに行き、そこの受付嬢にクエストを聞くことにした。


「ちわーっす。なんか面白いクエスト無いですか?」

「おはようございます如月さん。今朝はこんなクエストで如何でしょうか?」

「んー?ドラゴン討伐か...」

「王都の近くに大きな山があるのはご存じですよね?そこに巨大な暴龍(タイラントドラゴン)が住み着いてしまったんです」

「へぇ、暴龍が...そいつは危険だな」

「あの山には地方に繋がる山道がいくつかあります。ついこの前も商隊が襲われまして。そこで如月さんに討伐していただきたいのですが」

「いいぜ。俺も体が鈍っていた所だ。報酬は?」

「2703万ベイルです」

「よし、それ全部いつものとこに回してやれ」

「やっぱりですか...まぁ如月さんならそう言うと思ってましたけど」

「そう言うこった。んじゃ行ってくるわ」

「一人でいいんですか?」

「問題ない」

「分かりました。お気をつけて」


如月がカウンターを離れると、どよめきが走った。


「お、おい。聞いたかあれ」

「あぁ、暴龍相手に一人とは...流石『光眼の錬』」

「実力は折り紙付きで、どんな相手でも五分以内に倒してるって噂だ」

「しかも金は困った時以外全部孤児院に寄付してるそうだ」

「社会的地位も中々だな」


ーー『光眼の錬』ーー

如月に付いた二つ名である。

魔法を使う時に右眼が光ることから付けられた。

しかし、何故右眼が光るのかを知るのは如月本人唯一人である。

そして、クエストの報酬は全て孤児院の方に回している。

本人曰く、「一人の辛さは分かるから、せめて少しでも生活を豊かにしてやりたい」だそうだ。


「さーて行きますか」


如月は東の山に向かって歩き出した。

さて、如月が移動してる間にこの世界の地理を説明しておこう。

この世界には五つの大陸がある。

それは丁度五角形の先端のような位置にあり、一番上から時計回りに人大陸、魔大陸、剣大陸、神大陸、獣大陸とある。

その五つの大陸の真ん中に一つの島がある。

それは天獄島と呼ばれ、天界と魔界に繋がる道があるとされる。

しかし、そこに行くには各大陸で、ある遺跡を解放しなければならない。

それだけ聞けば簡単そうだが、その遺跡はダンジョンと言っても過言ではなく、最も難易度が低い人大陸の遺跡でさえも、帰ってきた人はいなかったらしい。

さて、如月が目的地に着いたようだ。


「ここか...見た限り何にもいないけどな」


ここは谷になっており、ここでの目撃が最も多いらしい。


「ドラゴンは頭いいからな...こんな所で炎吐かれたらひとたまりもな...あ」


如月は気づいた。

自分がおびき寄せられていた事に。


「やべっ!」


如月は急いで引き返そうとしたが、上から岩が降ってきて道を塞いでしまった。

そして、後方から咆哮と共に熱風が押し寄せてきた。


「うおお!やっべえぇぇ!」


振り向くと、既に手の届く所に炎が来ており、如月は炎に飲み込まれた。

それを見てまたも咆哮を挙げる存在。

それが暴龍(タイラントドラゴン)だった。

血塗られたような紅い鱗に強靭な羽。

逞しい手足を持ち、口からは煉獄の炎を吐き出す。

体長は優に6〜70メートルはあろうか。

しかし、今回の個体は違った。

70メートルどころではなく、80メートル程あるだろうかと言う巨躯を誇っていた。

そして、暴龍の最も恐ろしい物。

それは頭脳だ。

人と同じかそれ以上の知能指数を誇り、声帯の関係で声こそ出せぬものの、テレパシーで会話が出来るほどであった。


グオオオオオ!


その雄叫びは笑っている様にも、見下している様にも聞こえた。

その最中、煙の中から一つの影が飛び出し、暴龍の頭部を殴りつけた。


「何笑ってんだよ。この俺をそんじょそこらの戦士と一緒にすんじゃねぇ!」


更に蹴り飛ばす。

余りの威力に暴龍も蹌踉めく。

如月は槍を構え、一気に暴龍を攻め立てた。

突き、叩き、切り裂く。

鱗が剥がれ、血が飛び、暴龍は苦悶の表情を浮かべる。


「おらあああ!」


振り下ろした槍が頭部に命中。

如月が勝利を確信した瞬間、暴龍は至近距離で炎を吐いて来た。

暴龍はずっとこの瞬間を待っていた。

相手が油断し、最高の攻撃を叩き込める間合いに入ってくるのを。

怯んだ如月を、暴龍はその腕で弾き飛ばした。

更にとどめと言わんばかりに炎弾を放ちまくった。

岩が崩れ、煙が上がる。

そして、最後に巨大な炎弾を放つ。

それは火の粉を振りまきながら正確に飛んでいき、着弾、そして大爆発。

しかし、暴龍は雄叫びをあげる事なくジッと煙を見つめていた。

暴龍は確かに見た。

煙の中でなお輝く一筋の光を。

煙が、少しづつ晴れて来た。

そして、如月が姿を現す。


「危なかった...なかなかやるな」


如月の前には透明な壁がそびえ立っていた。

そして、右眼が光り輝いていた。

よく見るとその右眼には桶を二つ、底を合わせた様な紋章が浮かび上がっていた。


「これ以上食らうのはあまりよろしくないからな。全力でいかせてもらう!」


如月の右眼が光る。

と、如月の周りに透明な弾丸が無数に出現した。

流石の暴龍もヤバイと思ったのか素早く飛び立つ。

が、弾丸はそれを上回るスピードで更に驚異的な追尾力を持って暴龍に迫る。

そこで暴龍は急旋回をして如月の方に向かう。

ギリギリまで引きつけて如月に当てるつもりなのだろうが、如月の方が上手だった。

あと数メートルといったところで、暴龍は何かにぶつかった。

見ると、さっきの透明な壁がまた展開されており、如月は全くの無傷だった。

そうしているうちに弾丸が暴龍の体を貫く。

暴龍は無念とでもいう様に吠えて、崩れ落ちた。

が、死んだ訳ではない。

まだ息はあるが、最早満身創痍と言ったところだ。

如月はそんな暴龍に対してまたも右眼を光らせた。

最早これまでと暴龍が目を瞑った瞬間、暴龍は体が楽になる、とても心地よい感覚を覚えた。

見ると、傷が次々と塞がっていくではないか。


「こんなところか。これでお前の傷も塞がっただろう」

『...ナゼタスケタ』

「うおっ!これがテレパシーってやつか?いいな〜俺も出来ないかな?」

『シツモンニコタエロ!』

「ん〜?何故って...お前が何も悪いことしてないから?」

『ワタシハオオゼイノニンゲンヲコロシタノダゾ?』

「まぁ、傍目から見たらそうだろうな。でも、実際は違うだろ?正確には、人間がお前を見て退治しようとしたからお前が抵抗した。つまり先に手を出したのは人間って訳だ。だろ?」

『......』

「まっ、つー訳だ。俺、帰るから」

『オマエ...ナマエハ?』

「如月だ」


それだけ聞くと、暴龍は何処かへ飛んで行ってしまった。


「さーて、帰るか」


如月はさっきの戦いで剥がれた鱗を拾い集め、山を降りた。







ーギルドにてー


「すいませーん、終わりましたー」

「了解です。それでは証拠を見せて下さい」

「暴龍の鱗だ。これでいいかな?」

「分かりました。またですね?」

「いやー分かっちゃう?」

「分かりますよ。だって見逃したのこれで8回目ですよ?」

「そっかー、もうそんなになるのか...」

「これだけ見逃していたら誰でも感づきますよ」


如月はここ数年、知性のある魔物は見逃していた。

知性の無い奴や反省していない奴は容赦無く殺したが、もう悪さをしないと判断したら如月はその魔物を殺さなかった。

そのため、いつもは山の様に持って帰ってくる素材が見逃した時のみとても少なくなる。

毛が少しや鱗や角などである。

流石の受付嬢もこの異変に気付き如月を問い詰めたところ、如月は全てを吐いたのだ。

それ以来、如月には専属の受付嬢が出来てしまったのである。


「まっ、そこはさ?いい様にしといてくれる?」

「はぁ、まぁ如月さんの頼みですしね。上には上手く行っておきますよ」

「おっサンキュー!」


因みに、受付嬢が上に何と言うかというと、「如月さんが全て消し飛ばしてしまった」である。




ーその夜ー


如月はノックで目を覚ました。

余り来客が来ない如月にとって、一体誰か予想がつかなかった。


「はいはい...どな...た...」


如月がドアを開けると金髪の少女が立っていた。

しかし、問題はそこではなかった。

少女は、全裸であった。


「......」

「......」


沈黙が続く。

そして、それを破ったのは如月の方だった。


「...取り敢えず、入る?」

「...はい」


如月は少女を招き入れ、少女の方を見ない様に、セルフィが作ってくれたジャケットを渡した。

少女はそれで体の前面を隠し、ベッドに腰掛けた。

如月も椅子に腰掛けて、少女を見た。


「君は誰だ?一見人間に見えるが、魔力が人間のそれとは全く違うな」

「...分からないですか?昼間、お会いしたんですが...」

「昼間?別に、あった覚えは無いな...昼間は暴龍と戦ってたし...!」


その時、気づいた。

如月は少女の魔力を何処かで感じたと思っていた。

それは何処か。

答えは簡単、暴龍の魔力と瓜二つ嫌、全く同じものだった。


「まさか、君は...」

「はい、昼間あなたと戦った暴龍...名をフルンと言います」

「え、でも、何で...」

「あの後私は自分の里にもどり、村長に事の顛末を伝えました。すると村長は、命の恩を返してこいと、人間に変身する秘術を授けてくれました」

「...分かった。それで?」

「もし、良ければ、あなたに仕えさせて下さい!」

「よかろう!許可する!」

「え、ええ!本当ですか!?」

「あぁ、勿論だ。て言うか、ここで俺が突っぱねたら後味悪いしな」

「あ、有難うございます!」


こうして如月に一人、いや一匹の従者が出来た。






to be continue...








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