タイマン一本!無法者VS勇者!
前前話で、如月が赤い魔力を使っていましたが、あれは白いの間違いです。
既に編集は済ませましたが、申し訳ありませんでした。
「だぁっ!」
「でやぁ!」
ゴングと共に二人は飛び出した。
が、急にヴァリアブルが消え、如月の上空に現れた。
「ははーん、まだ魔法の効果が残ってたな」
剣を振り下ろすヴァリアブルに対し、如月は魔力で硬化した棒で受け止めようとする。
が、その光り輝く剣を見て如月は胸騒ぎがした。
とっさに体を捻らせて剣を避ける。
するとどうだろう。
剣はスタジアムに弾かれることなく深々と突き刺さった。
「あ、あっぶね〜。なんつー切れ味だ」
「くっ、見破られたか。だが!」
ヴァリアブルはそのまま剣を振り上げる。
如月はブーストで緊急回避をするが、剣から金色の鎌鼬らしきものが飛ばされた。
「ぐっ、受け止めるしか...」
如月は棒で受け止めようとする。
が、鎌鼬は魔力で硬化された棒を真っ二つにし、如月に迫る。
「なっ!」
ブーストで体を横に移動させ何とか避ける。
しかし、その光景をヴァリアブルはただ見ていた訳ではない。
更に追い討ちの鎌鼬を飛ばす。
「く、くそっ!」
如月はブーストを使って上空に逃げる。
が、そこにはヴァリアブルがいた。
「トドメだ!」
「ぐっ、させるか!」
ヴァリアブルが剣を振るより速く如月は回し蹴りを放ち、ヴァリアブルを叩き落とす。
「ぐああっ!」
ヴァリアブルはそのままスタジアムにめり込んだ。
「ふぅっ危なかった。流石勇者」
「何を言っている。僕はまだ本気を出してないぞ」
「へぇ、そりゃ楽しみだっ!」
如月はブーストを使って飛び出した。
右手に魔力を込め白い魔剣を作り出し、ヴァリアブルに突っ込む。
「何度来ても同じだ!斬り伏せてやる!」
ヴァリアブルも剣を輝かせ、応戦する。
二刀の剣がぶつかる瞬間、如月が掻き消えた。
「何っ!?」
「後ろだ!」
ブーストによって一瞬でヴァリアブルの背後に移動した如月は、剣を振り上げる。
が、ヴァリアブルもそれに反応し、魔剣を受け止める。
「な、何故切れない!?」
「その光り輝く剣。それ、スキルだろ?無効化させて貰ったぜ」
「だがどうした?この体勢なら!」
ヴァリアブルは全体重をかけ、如月を押しつぶそうとする。
が、如月が狙っていたのは正にそれだった。
「よっと」
「!?」
如月は魔剣を縦にし、ヴァリアブルの剣を滑らせたのだ。
全体重をかけていたヴァリアブルはひとたまりもなく、前のめりに倒れる。
「これで終わりだ!」
如月は魔剣を振り下ろした。
が、倒れていたヴァリアブルから金色の魔力が吹き出た。
「むおっ!なんだ!?」
余りの勢いに如月もよろける。
ヴァリアブルはゆっくりと立ち上がった。
如月は何か良くないものを感じ、数歩後退した。
「まだ僕は負けてない。僕の勝利を信じてくれている人達がいるんだ。僕は、負けられないんだ!」
ヴァリアブルは全身に薄く金色のオーラを纏っていた。
少し離れている如月にも伝わる圧力。
正に勇者と言える姿だった。
「そうか...循環を上げたな?」
この世界に住む人々は、体を動かす時にほんの少量だが、魔力を消費する。
勿論、魔力の供給量を上げれば身体能力も飛躍的に上がる。
今ヴァリアブルが行なっているのは全身の筋肉に魔力を限界値まで送り続けると言う荒技。
簡単に言えば、某格闘漫画の界◯拳的な感じのものだ。
「いつもならこの状態が持つのは精々五分。だが今はセルフィさんがくれた膨大な魔力がある。これなら、一時間使い続けてもまだ余裕だな」
「ちっ、セルフィめ余計なことを...これじゃ俺も勝てるかわからんぞ?」
「お前が楽しませろと言うからだ。行くぞ!」
ヴァリアブルが消えた。
正確には、それほどの速さで飛び出した、だが。
気づくと如月の目の前にヴァリアブルはいた。
「でりゃ!」
「ぬおっ!危ね!」
何とか避けたものの、余りに鋭い剣筋。
如月もいつまで避けれるか分からない。
そこにヴァリアブルの追撃が入る。
「ぐっ、くそぉ!」
ブーストで大きく逃げるが、ヴァリアブルはそれについてくる。
「マジかよ!」
「おりゃあ!」
ヴァリアブルにかち上げられる如月。
すかさずヴァリアブルは跳んだ。
如月に追いつき、会場の誰もが見切れないほどの容赦無い斬撃の嵐を如月にお見舞いした。
流石の如月もなす術無く、斬撃の嵐をモロに受けてしまった。
「これで終わりだ!」
振り下ろされた強烈な一撃。
如月はそれを腹部に受け、スタジアムに深くめり込んだ。
「魔力でコーティングしたから死んではいないはずだ。だが骨数本は軽くいってるだろう。場外にさせてもらう」
「......」
如月を掴もうとするヴァリアブル。
が、ヴァリアブルの手は空をつかんだ。
「!?」
「何処を見ている。まだ終わってねぇぞ」
見るとヴァリアブルの背後十メートル程の場所に如月が立っていた。
「お、お前どうして...」
「動けるかって?答えは簡単。気合いだ」
「は?」
「お前の言った通り、実は骨いってんだよね、俺。でも、何とか根性で立てたんだよね」
「そ、それがどうした!もうボロボロじゃないか!」
「そう、ボロボロだ。だが、それが大切なんだ」
如月の体から信じられない量の白い魔力が噴出される。
「な!い、一体お前の何処にここまでの魔力が...」
「俺のもう一つのスキル、『起死回生』だ」
「...なんだそのスキルは...」
「簡単だ。元の魔力量が十分の一になる代わりに、攻撃を受けるたびにその威力に応じて魔力が倍増するんだ。さらに、連続で攻撃を受ければ、更に倍増量は増えるのさ」
「まさか、さっきの攻撃を受け続けていたのは...」
「出来るだけ魔力を増やすためさ。まぁやろうと思えば抜け出せたけどな」
ヴァリアブルは絶句する。
あの斬撃は、全力だった。
それこそ、これで終わらせるぐらいの気持ちで攻撃していた。
それが全く効いていなかった。
ーー錬はおっそろしく強いよーー
セルフィの言葉が頭をよぎる。
油断そして慢心。
その感情がヴァリアブルを支配してしまっていた。
その結果がこれである。
「それじゃ見せてやる。これが俺の、『奥の手』だ!はあああああ!」
魔力が如月に吸収されていき、終いには如月は真っ白な光に包まれてしまった。
そして、少しずつ、光が剥がれていった。
足の方から、まるで鱗が剥がれるように。
そして、全てがあらわとなる。
「ふう、出来たか」
「な、何なんだ...それは...」
如月はフードを脱ぎ、束ねた髪を戻した。
その髪、そして眉、目は白く光り輝いていた。
全身に濃度の濃い魔力を纏い、如月は立っていた。
「爆発させたのさ」
「何っ!?」
「体の中で魔力同士を反応させて爆発。その時に、魔力が数十倍のエネルギーとなって帰ってくるのさ。でも、それほどのエネルギーを体の中に入れたまんまだと、体が破裂しちまう。そこでエネルギーを魔力に変換。余りの量に体に収まりきらなかった魔力がこうやって髪や眉、目やオーラに現れているってわけ」
「し、しかしそんな荒技を使えば魔力がすぐに枯渇するはずだ!それに、体も長くは保たないだろ!」
「まぁな。確かに長くは保たねぇ。だが魔力は枯渇しないさ。足りなくなりゃまた産み出せばいい。気をつけるのは、魔力に変換するまでエネルギーを押さえつけられるだけの魔力を取っておくのと、変換後の魔力の使い方だ」
そう言って、如月は動いた。
一歩、一歩と踏みしめるように。
少しずつヴァリアブルに近づいた。
「くっ..!それでも僕は...負けない!」
如月に向かって剣を投げ、自分も突進する。
如月が剣を跳ね上げると、ヴァリアブルが殴りつけてきた。
それを右に捌くが、ヴァリアブルはその反動を利用して回し蹴り。
それを受け止められ、今度はその足を軸に反対の足で顔を狙う。
如月は体を晒して避けるがそこへ右拳を叩き込む。
それに対し如月は掴んでいた足を離し、ヴァリアブルを蹴り上げる。
ヴァリアブルはその足にてを付き、三メートル程の上昇。
先程跳ね上げられた剣を掴み、振り下ろす。
しかし、如月はそれを読んでいたかのように剣を摘むように受け止めた。
「く、くそぉ!」
「これ以上やっても変わんねぇぞ。今の内にやめておけ」
「誰がやめるか!僕は王子であり、勇者だ!絶対に引かない!」
「...その勇気。確かに立派だ。だが、今のお前じゃその感情は命取りになる」
「何っ!」
「お前、迷ってるだろ」
「!!!」
ヴァリアブルはたじろいだ。
理由は簡単、言い当てられたからだ。
「何に、どうして迷ってるかなんて知らねぇ。けど、お前の攻撃いや、行動全てに迷いが見られる」
「......」
「そんなんじゃ俺には勝てねぇ」
如月は右手をヴァリアブルにかざした。
「終わりだ。『法壊撃』!」
様々な種類の魔法を組み合わせて作った、如月の必殺技。
掌から前方五メートルに核にも匹敵する爆発を起こす大技である。
ヴァリアブルはそれをモロにくらい、スタジアムの溝に吹き飛ばされた。
そこに三人が集まり、レースが治癒魔法をかける。
「ぐっ...」
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ何とかな」
「...終わったでござるな」
「...あぁ、終わった。僕の完敗だ。だが、嬉しくもある。こんな強い奴が...」
「俺は行かねぇからな。勘違いすんなよ?」
「「「「は?」」」」
この言葉にヴァリアブルたち四人は返す言葉が見つからなかった。
優勝者は魔王退治に行く。
言わずと知れた当然のルール。
それをこの男、如月はぶち破ってきた。
「いやだって、ねぇ?めんどくさくね?」
「いやそう言う問題じゃないだろ!」
「そうですよ!世界には困っている人達が沢山いるんですよ!?」
と、反抗的な二人に対し、
「はぁ、まぁ知ってたよ、うん。錬ならそう言うと思ったしね」
「はっはっはっ!流石如月殿!噂に違わぬ男よの!」
呆れ1、関心1の二人。
「つーわけで、帰るわ。そうそう、槍は頂いてくぜ」
「っな!そんなルール破りを誰が認めると...」
「あ?何言ってる。俺は、『無法者』だぜ?俺を縛るルールは存在しねぇ。じゃあな」
そう言ってヴァリアブルたちの横を通り、姿を消そうとする如月。
そして、セルフィの隣を通った時、一言。
「直ぐに追いつく。待ってろ」
とだけ言った。
その言葉は、セルフィにしか聞こえないぐらいの小さな声だった。
その夜ーー
「如月の右目...そして後頭部...あれは、間違いない。『プリュスの右目』と、『悪魔の垂れ角』。何故、あの二つが一人の人間に...。如月 錬、お前は一体ーーー」
何者なんだ?
to be continue...