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五人いるのに四対一とか

「さぁて、残った五人の勇者を紹介していこう!」


その後の紹介は無駄な点も多かったため、省略して説明する。

まず、金髪で手足に鎧を纏った青年がレイ・ヴァリアブル。

年齢は18。

この国の王家であるレイ家の第一子にして、勇者の職業を持つ。

次に青い髪で聖職者の様な風貌の女性がテイル・レース。

年齢は17。

大賢者にも劣らない魔力量を持つ職業、大僧侶を持つ。

孤児院にて育てられ、そこで信仰に出会ったそうだ。

最後に、黒装束に身を包み、如月の背後を取った男が陽炎。

年齢不詳で、見た目の通り忍者の職業を持つ。

如月、セルフィと同じダイヤクラスで、主に暗殺をこなしている。

ついでに如月とセルフィの風貌も説明しておこう。

セルフィは裾が短めの白いローブを纏っており、黒髪を後ろに流している。

如月は長袖のパーカーにズボン、セルフィに作ってもらったジャケット擬きを着ている。

サイクロプス事件の時との変更点はジャケット擬きにフードが追加されたこと。(セルフィの手によって獣耳が付けられているのに気づいたのが五分後、それが魔法によって取れない様になっていることを思い知ったのが三十分後)

そして、もう一つの変更点が髪を伸ばしたこと。

以前は短髪だったが、今は腰辺りまである髪を一つに束ね、常に付けているフードから垂らしている。


「よく俺の衝撃波から逃れられたな」

「あんな物、僕には障害ですらない。一刀の元に切り裂いた」

「私は防壁で塞がせてもらいました。と言っても、あと少し衝撃波が続いたら危なかったですけど...」

「セルフィは...聞くまでもないな」

「私も衝撃波出して相殺させて貰ったよ♪」

「ふむ...それで?そこの忍者...陽炎だっけ。お前は?」

「敵に手の内を明かす必要は無いでござる」

「うん、それが正しい。流石だな『影』」

「...知っていたでござるか」

「あぁ。暗殺専門の凄腕ダイヤがいるって聞いたが、見るのは初めてだ」

「拙者もお主、いやお主たちの噂は聞いているでござる。圧倒的戦闘力でダイヤクラスを引っ掻き回してる新人がいると。お初にお目にかかるでござる」

「あぁ。さて、それじゃあ再開しますか!」


五人の間に緊張が張り詰める。

そして、一斉に攻撃した。

如月一人を。


「うおお!マジか!」


如月はブーストで緊急避難をする。

攻撃を外した四人は何避けてんだとでも言わんばかりに恨めしそうな顔を如月に向ける。


「いやお前ら何考えてんの!?五人いるよね?なのに何の打ち合わせも無しに息ぴったりで俺一人狙いすんのやめてくんない!?」

「いや、だって」

「だってじゃねぇよ!それでも王子か!」

「五人いて一番強い敵を狙い撃つのは当然じゃないですか」

「いやそれ聖職者の言い分じゃないよね!?」

「この四人の中で錬と一対一できるのって誰もいないし...」

「おい!幼馴染!冷たいなおい!」

「戦いとは命のやり取りでござる。その中でそんな悠長な事は言ってられんでござる」

「う...正論過ぎて反論出来ん...。と、とにかく!俺だけ狙うんじゃねぇ!」

「「「「断る」」」でござる」


一斉に反論され、心を粉々にされる如月。

しかし、如月は何とか粉々の心をつぎはぎして立ち上がる。


「と、とにかく!四対一でもいいから再開するぞ!アナウンサーや観客のプレッシャーが凄いんだよ」

「いいのか?本当に」

「あぁ。多分勝てるし」

「...舐められたものですね」

「ちょーっとお仕置きが必要だね♪」

「今の言葉を遺言と見ていいでござるな?」

「ちょ、ちょっと?目が笑ってませんけど?」

「覚悟しろ!如月 錬!」


四人が、お互いに一瞬の目配せをして全員が構える。

沈黙が流れ、最初に動いたのは、


「はっ!」

ボウン!


陽炎だった。

破裂音と共に煙がスタジアムを満たした。


「煙玉か...だが、魔力を探れば...」


煙の中に二種類の魔力を二つずつ感知した。

その計四つの魔力は一つの場所に収束された。


「これはーー攻撃倍増と速さ倍増!?やばっ!」


如月は急いでその場を離れようとしたが、体が何かに縛られていた。

見ると手足に黒い何かが巻きついており、更に背後には陽炎がいた。


「ちっ」

「チェックメイトだ!如月 錬!」


見ると、如月の前にとても低い体勢で木刀を構えるヴァリアブルがいた。

体には青と赤の魔力を纏っており、その魔力が剣に集められていく。


「魔力が集まれば、僕はこの剣を振り上げる。いくらお前でもひとたまりもないだろう。そして、その拘束は力づくでは取れないらしい。降参したらどうだ?」

「...ふっふっふっ...ははははは!」

「何が可笑しい!?」

「お前ら凄えよ。ちょっと目配せするだけでお互いの考えが分かっちまう。以心伝心なんて目じゃねぇや」

「あれは、レースさんのスキルのおかげだ。レースさんのスキルはお互いの心を読めるように出来るんだ」

「いや、そうだとしても一瞬でここまで俺を追い詰めるなんてな。正直驚いた」


だがーーと如月は続けた。


「まだ甘いな」

「何っ!?」

「まず、最悪の場合を想定していない。今勇者さん動けないだろ?この拘束が取れたらどうすんだ」

「ふん、そんなことを言って。現にその拘束は取れていないじゃないか」

「ん?もう取ったけど?」


見ると如月の手足にはあの黒い拘束は付いていなかった。


「ど、どうやって外したでござる!?」

「ん〜?お前ら俺の職業言ってみ」

「無、無法者?」

「そ、無法者。俺に常識なんて鎖をかける事はできねぇ」

「いやいや、意味が分からん」

「ったく、しゃーない奴らだ」


そう言って如月は魔力が注がれている木刀に手を触れた。

すると、注がれていた魔力は如月の手を経由して、如月に吸収された。


「そ、そんな。他人の魔力を己の物にするなんて、そんな芸当が...」

「出来るんだな。俺の職業『無法者』はある一つのルールや法律等々を無効化出来るのさ。まぁ、一度に無効化出来るのは一つだがな」

「な、なんという...」

「さっきの拘束。あれは間違いなくスキルの物だった。そうだと分かれば話は早い。陽炎のスキルを無効化するっていう力を使ったのさ」


その反則級の能力に三人は言葉を失う。


「ほら、どうした?続きをしようぜ」


そう言って如月は手足にリアベルを出し、臨戦体勢となる。

しかし、陽炎以外の二人は目の前の人の形をした化け物にすくんでしまった。


「なんだ聞こえてないのか?なら一気に終わらせるぞ」


ブーストによる超加速でヴァリアブルとの差を一瞬で縮め、アッパーを放つ。


ガキィン!

「へぇ、やっぱり凄いな、勇者ってのは」

「ふん、僕が怖気付いたと思ったか?僕は勇者だ。この程度、ピンチの内には入らない」

「ほう、言うねぇ」


如月が放ったアッパー。

それは、魔力で硬化されたヴァリアブルの木刀によって防がれた。


「そ、そうです!私だって怖気付いてません!」


レースも勇気を振り絞り、魔弾を如月に放つ。

如月は胸の前にリアベルを移動させ、発動。

体を仰け反らせ、魔弾を避けた。

その隙にヴァリアブルが木刀を振るが、既に如月は数メートル後退していた。


「さぁ次はどうくる?もっと俺を楽しませてくれ」

「...分かった」


ヴァリアブルは如月の前に立った。


「僕と一対一の勝負をしろ」

「なっ、何言ってるんですか勇者さん!」

「そうだよ!錬はそんなに甘い相手じゃないよ!?」

「勇者どの。拙者でもその者に勝てるかどうか怪しいものでござる。今勇者どのがやろうとしているのは勇気の行動ではござらぬ。無謀な行動でござる」

「分かってるさ。そんなこと。それでも、僕はやるよ」

「なんでそんなことが言えるんですか...怖くないんですか!?」

「レースさんは怖いの?」

「こ、怖いですよ!今目の前にいるのは人ではありません!人という器を捨てた化け物です!」

「そっか。うん、そうだよね。これはまさしく化け物だ」

「なんかめっちゃボロクソ言われてるんだが」

「それに、僕だって怖いさ。今すぐ逃げ出したいぐらいに。だけど、それじゃダメなんだ。今目の前にあるこの壁を乗り越えないと魔王だって倒せない。僕はそう思う」

「だ、だけど!」

「やめるでござる、レースどの」

「でも...」

「覚悟を決めた男は、強いでござる。今拙者たちに出来ることは、ただただ信じることでござる」

「...分かった。私は、信じてる」

「勇者君。錬はおっそろしく強い。だから、油断しないでね」

「はい。ありがとうございます」

「それともう一つ」


セルフィはヴァリアブルの頭に手を乗せる。

すると、魔力がヴァリアブルの中に流れ込んできた。


「こ、これは」

「勇者君の魔力に適応出来るようにしておいたから、多分使えるはずだよ。錬に出し惜しみなんてしちゃダメ。最初っから全力で当たらないとまず勝てない。君が長い間全力で戦えるように、私の魔力を全て渡しておくよ」

「何から何まで...」

「いいのいいの♪それに私も見てみたいんだ。錬が強い人と戦ってるところを」


そして、魔力の補給が終わる。


「終わったか。なら、自分の剣を取ってこい」

「え?でも武器は...」

「問題ない。お前も使い慣れた武器の方がいいだろう?」

「...分かった」


数分後、ヴァリアブルは自分の剣を持ってきた。


「すまない。セルフィたちは場外になってくれないか?」

「りょーかい。頑張れ!勇者君!」

「はい!」

「ついでに錬もね!」

「俺はついでかよ!」


そして、スタジアムの上にはヴァリアブルと如月の二人が残った。


「行くぞ!」

「どっからでも来い!」


アナウンサーが気を利かせたのか、ゴングがスタジアムに鳴り響く。






to be continue...




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