提案
「すいません……ありがとうございました」
少女がゆっくりと離れる。
泣いていたからか、目は真っ赤になっていたけど、最初見たときのような暗い瞳では無くなっていた。
少女は俺に抱きついたまま、涙声でこれまでのことを話した。
少女の年はおそらく15歳ほどだろう。
そんな、まだ若すぎる少女が無意識に起こしてしまった現象の所為で、村から迫害され、5年間も人から離れて地下に閉じ込められていた挙げ句、親に捨てられ、最後には売られようとしていた。
正直、同情してしまった。
だから故に、考える。
おそらく、少女の起こす現象……魔食が発動しなかったのは、俺自身に魔力が無いからだろう。
この世界では、魔力は人間が生きるために必要な生命力そのものと考えられているらしく、実際、魔力を持たない人間は存在しないらしい。
つまり、この少女が触れられるのは俺だけということになる。
だから、俺はこの子を助けたいと思ってしまった。
仕方ないだろ、こんな美少女ほっておけるか。男の子だもん。
「俺の名前はトーヤ。君は?」
「わ、私はリナです!リナ・アイ……いえ、ただのリナです」
俺から少し離れた少女……リナがこちらに向き直る。
やっぱり、白銀の髪と青い瞳にまだ幼さの残る可愛らしい顔立ちは近くで見ても、綺麗で、ついつい見惚れてしまう。
そんなリナに、俺は提案する。
「もしよかったらさ、俺と一緒に来ない?」
「……え?」
「俺、旅を始めたんだけど、まだここら辺の事まったく知らないし、ずっと1人でいるのも寂しいからさ、リナさえ良ければ……」
「……いいんですか……?」
出会ってすぐの女の子にこんなこと言うなんて……変な人だと思われてるだろうか。
そんなこと思いながらの提案に、リナの、少し震えた声が返ってくる。
「私、魔食です」
「俺には何とも無いから大丈夫」
「トーヤさんに迷惑かけたく無いです」
「迷惑なんて微塵も思わないから大丈夫」
リナの瞳にいろんな感情が混ざってるのがわかる。
しかし、それからすぐにリナは口を開いた。
「お願いです……私も…私も一緒に……トーヤさんと一緒に居たいです!」
リナの中でどんな迷いや考えがあったかはわからない。
けど、リナがこう言ってくれたんだ。なら俺の答えは一つしかなかった。
「これからよろしくな、リナ」
「……はい!よろしくお願いします!トーヤさん!」
リナはまた涙を浮かべながらも、その顔は晴れ晴れとしているように思えた。
やっぱりこの恋愛に関する描写は苦手ですわ。
だって経験無いんだもの……うるせい!DTの何が悪いんじゃい!