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カバンの中には現代兵器  作者: アンケン
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少女の回想2

1の続きです。

 幸せだった。


 両親は優しく、村は暖かくて。


 友達もいて、いつも遊んで。


 本が好きで、登場人物のお姫様に憧れて、王子様を夢見て。




 そんな幸せな日が続くと思っていた。


 そんな幸せな日が壊れると思ったこともなかった。






 両親の冷たい目や村人の罵倒を思い出すたびに、幸せな世界を思い出す。



 もう、あの頃には戻れないのかな……。







「よかったな。買い手が決まったぞ」




 ある日、そんな声が聞こえた。

 私はもう何も考えたくなかった。




 20人ほどの男の前に立たされる。

 姿からして、盗賊だろうか。

 みんな私を舐め回すように見てる。

 手には私の魔食の影響を打ち消す魔術陣が書かれた手袋をはめている。


 1人が私の服を引き裂いた。



 あぁ、私はこのまま終わるんだろうな……。

 まだ恋だってしてないのに、こんな男たちに初めても奪われちゃうんだ……。










 ……助けて……助けてほしいなぁ……。



















 次の瞬間には、男たちの半分が地面に倒れていた。



 そして目の前には黒い格好の少年。


 まったく理解できなかった。いったい何が起こってるのだろうと。

 この子は誰?私はどうなったの?

 そんなことを思ってると、私はその少年に抱きかかえられていた。





 想像していたような白馬の王子様じゃなかった。

 けど、助けてくれた少年は、今まで見たどんな男よりも、王子様よりもカッコ良く見えた。



 安堵からか、体から力が抜けて、少年の温かい体温に全てが包まれるような気分になって、慌てて気づいた。



 自分が何なのかを。








「離して!」





 私は力一杯叫んだ。

 もう手遅れってことはわかっていたが、それでも叫ばずにいられなかった。




 また、また巻き込んでしまった。

 この人は私を助けてくれたのに、私はこの人を不幸にしてしまった。

 そう思うと申し訳なくて、自分に悔しくて、涙が出た。

 彼の顔を見たくなかった。私に触れると早くて数秒、長くても10分以内には必ず魔力に異常が現れる。

 何も言わないのも卑怯だと思ったけど、何も言えなかった。







 そしてそのまま時間が経った。

 私は何もする気力がなかった。

 何もしたくなかった。


 全てを失って、行き場も失った。

 そんな時に、声が聞こえた。








「落ち着いた?」






 思わず顔を上げた。

 そこには私を助けてくれた人が、こちらに微笑んでいた。



 私は混乱した。

 私の魔食が起こってない?あの魔術陣がない限り回避できないことは実験で分かっていた。



 私は彼に触れた。

 混乱したまま、少年の胸に飛び込んだ。




 なのに、少年は何も変わらない。

 それどころか、温かい、忘れかけていた何かが私の中に入ってきていた。







 私は少年に抱きついていた。

 数年ぶりの人の温かさは私の体の隅々まで染み込んで、また、この温かさを覚えてしまった。




 もう、手放したくない。

 温かい、小さな幸せを私はもう捨てることはできなかった。

やっとヒロインを出せました。

助けるだけの即落ちヒロインってのも何だかなぁと思い、少し理由をつけてみた結果がこれです。

ぞっこん?ヤンデレ?まぁそんな感じになりましたね。





……初期案の清楚系貴族ヒロインはどこに行ったのだろうか。

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