上陸
「トーヤ様……申し訳ありません」
「仕方ないさ。原因も…ほぼわかってるし」
申し訳なさそうに俯くアイリスの頭を撫でて慰める。
見事魔物を撃滅した俺たちは、ついに島の目視圏内までたどり着くことができた。
水平線の上にポツリと佇む孤島の姿に、俺のリナは思わずハイタッチをして喜んだが、そこに一報が入った。
機関室から、1人がヒューマンエラーだと。
自分も何が何だかわからない、といった様子の機関員を落ち着かせて、通信を終了すると、入れ替わるように入ってくる報告。
その全てがヒューマンエラーとしか伝えられず、艦内が混乱に陥る中、とうとう70パー以上の船員が任務続行不可となり、艦自体の航行も支障をきたすほどになった。
その、ヒューマンエラーと判断された隊員全員が口にするのが、
島に近づきたくない。
理由は無く、ただただそう思ってしまうらしく、それは島へと近づくほどに多く、強くなっていったのだ。
そして今、島まで数キロと迫った海上でデ・ラ・ペンネ級駆逐艦の機関は完全に停止し、私兵の中でまともに動ける者はほぼ居なくなっていた。
「本当に護衛は必要ないでしょうか……?」
「あぁ、大丈夫だ。それに、これの影響を受けてないのも俺とリナの2人だけだしな」
後部航空甲板。
最後まで心配そうにこちらを見つめるアイリスの頭をもう一度撫で、俺は駐機しているヘリに向かう。
すでにエンジンを始動してメインローターを回転させているヘリは、アグスタ・ベル AB 212ASW。
UH-1Nツインヒューイの欧州版対潜ヘリで、本来は島に船で接近する予定だったが、それが不可能となったので、俺たちはヘリにのって島に上陸することにした。
操縦席に座るリナがアグスタの出力を上げていき、僅かに残った隊員がヘリの固定用具を外す。
拘束が解かれ、アグスタが上昇を始める。
そんな中、未だに心配そうに見つめるアイリスに、ハンドサインで'大丈夫'と伝え、ヘリが飛び立つ。
白い船体のデ・ラ・ペンネ級駆逐艦の姿がどんどんと小さくなり、向かう先の島の形がはっきりと見えてくる。
「……いよいよだな」
「うん……」
「怖いか?」
「ちょっと…ね。でも大丈夫。こうやってトーヤがいてくれたら、私、頑張れるから」
そう言って操縦桿を握る手と反対の手をこちらに伸ばす。
その白く、小さな手をしっかりと握りしめ、俺はリナと操縦を交代する。
そして、こちらへと抱きついてくるリナ。
少し重くなった操縦桿をしっかりと握りしめ、右肩にかかる心地よい重みを落とさないように、俺は魔島へとヘリを飛ばす。
そして、数十分もしないうちに島の上空まで到達する。
魔島、という割には禍々しい雰囲気など何処にもなく、外見はいたって普通の孤島だ。
俺たちは平地を見つけて、そこにヘリを着陸させる。
ズシンとくる衝撃と共に、上陸。
俺たちはとうとう目的地へと降り立ったのだ。
「……行こうか」
「うん」
ヘリをカバンへとしまい、魔香を探すために島の大地を踏みしめる。
何があるかわからないので、念のためにホルスターに入ってるコルトガバメントM1911に加えてカバンからM4A1を取り出しておく。
言わずもがな知れたカービンライフルで、5.56mm弾を使用し、米軍を始めとして世界各国の軍、警察、更には特殊部隊でも使われているベストセラー小銃の1つだ。
リナも自分のホルスターからワルサーP99を取り出し、俺はレールシステムに取り付けられたACOGサイトを覗きながら周囲を警戒するが、魔物の姿は無く、リナと2人歩き出す。
上空から見た感じ、島のほとんどは俺たちがいる平野で、ところどころに森や山、川などが見えたが、人が住んでるような場所はもちろん見えなかった。
だが、ここに魔香がいるのはほぼ間違いないだろう。
しばらくは探索になるかもしれんな……。
そう考えた時に限って、時は都合よく動くもので、
「お主ら、よくここまでこれたのぉ……。本当に人間か?」
数分の時間の後、俺たちは1人の少女と出会うのであった。
ここからしばらく会話が続きます。
たぶん、この作品の重要な部分になってきそうなので、作者も頑張ります。はい。




