おまけ 異世界の食事
休暇中でのお話です。
「あのっ!トーヤ様!」
「ん?」
夕食の時間。
中世ほどの時代であろうこの世界の食文化は、案外酷いものでもなく、普通の肉や野菜、更には塩砂糖や香辛料まで、一応は全て揃っていたりする。
ただ、やはり塩砂糖などは希少で、その分市場での値段は一般人には手の届きにくいものになってしまうのだが、まぁ金に関しては2度の報酬で有り余ってるので、食費には制限なく使っている。
そんな感じで、我が家の食事を統括するリナさんが毎日の食事を作ってくれているのだが、もちろん味は良く、現代生活で肥えた舌を満足させてくれるのである。
そして、今日も今日とて夕食に舌鼓を打っていると、先に食べ終えていたアイリスと、部隊の少女数名が俺に話しかけてきていた。
「どうしたんだ?」
「えっと……ですね、トーヤ様にお願いしたいことがあって……」
「おう、なんでも言ってくれ」
少し言いにくそうにするアイリス。
そんなに言いにくいお願いなのか?と思いつつも少女の言葉を待った。
「あの……ですね、前の訓練の時にトーヤ様が戦闘糧食にと配られた、甘いお菓子。またもらえたりしませんか?」
そう言って上目遣いに尋ねる少女。
甘いお菓子……と聞いて少し悩むが、隣にいたリナが、その疑問を解決してくれた。
「もしかして、チョコのこと?」
「……あー、そういや渡したことあったな」
リナの言葉で思い出す。
もちろん、チョコとは現代世界にあるチョコレートのことであり、この世界では作られているものではない。
では、どうしてそのチョコを食べることができたのか。
それはもちろんカバンから取り出したのだ。
現代兵器を始めとした戦闘に関するモノを取り出せるのがこのカバンの能力だが、戦闘に関するものの定義は思った以上に広いらしく、各国で扱われているレーション、戦闘糧食も取り出すことができたのだ。
その中にはチョコなどの嗜好品も入っており、リナと味見しても普通に食べることができたので、実戦訓練の時に昼食を取れない部隊にはこのレーションを渡していたのだ。
そして、こうやってわざわざお願いしに来たってことは、まぁ好評だったのだろう。
ちなみにレーションは基本マズイというのを聞いたことがあるので、俺は食べたことがない。
「ダメ…でしょうか?」
「いや、ダメってことはないけど、他のもあるから食べてみる?」
「え、私チョコ以外食べたことないんだけど」
他にもある、という言葉にアイリス達が期待に目を輝かせ、リナが私も〜っとこちらに寄ってくる。
じゃぁ、とりあえず……。
「これは?」
「キャラメルっていうお菓子だ。外側の紙は剥がして食べろよ」
と言って、カバンから一粒ずつ取り出したキャラメルを少女たちの手のひらに乗せる。
これはフランス軍のレーションに入ってるんだったかな?記憶は曖昧だが、取り出せたってことはどっかに入ってたんだろう。
俺が1つ口に入れるのを見て、少女たちが恐る恐るながらも口へと運ぶ。
「……美味しい!」
「すごく甘い!」
そして口元を綻ばせる。
どうやら気に入ってくれたようだ。
「トーヤ!他は?他にもあったりするの?」
「あぁ、もちろんあるぞ」
そう言って思いつく限りのデザートを一気に出す。
プリンにアイスクリーム、ビスケットや羊羹。もちろんチョコレートもだ。
ついでに紅茶とココアも用意して、簡単なお茶会が始まった。
「んん〜!!美味しいっ!」
「クセになっちゃいそうですっ!」
どの世界でも女の子ってのは甘いものに目がなくなるんだな。
そう思い、次々にデザートを口へと運ぶ少女らを眺める。
「あ、ちなみに食べ過ぎると太るから気をつけろよ?」
俺がその言葉を放つまで、彼女たちのお茶会は続いたのだった。
レーション、もしくはミリメシってやつですね。
作者も一度食べたことあるのですが、やっぱり味はあまり良くありませんでしたね。ただ、その中にあったチョコだけはチョコだったので、こんな話を書いてみました。