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カバンの中には現代兵器  作者: アンケン
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魔能というもの

 「では、まず魔能者という存在から話しましょう」




 暗い夜。月明かりだけに照らされた夜道と湯畑を温泉が流れる音が木霊す中、レイシルがゆっくりと語りだす。

 魔食……リナを守るという事だけを考えて、核心から目をそらし続けていた事実に今、迫ろうとしていた。







「まず、魔能者とはかつてこの国に存在した魔王と呼ばれる特異能力者が持っていた5つの能力を持つ人を表します」




 魔王。

 ファンタジーの世界では人類の敵として真っ先に上がる名前の1つだが、俺がこの世界に来て魔王と聞いたのはこれが初めてだった。





「魔王はすでに息絶えましたが、その能力は世界中に散らばり、各所で魔能者と呼ばれる能力の継承者が現れました」




 何故、能力が継承され、どのような基準で継承者が選ばれているのかは判明されていませんが、と話が続く。





「その5つの能力は、1つを除いてすでに継承者の存在が確認されました。確認されたのは、魔眼、魔香、魔音、今回のリナ様の魔食。最後は未確認の魔覚、5つです。もちろん、これらの継承者は特異能力を扱うことができ、基本的にはリナ様のように排他される事が多いのですが、帝国では魔眼の継承者を軍事利用しているという情報もあります」





 そりゃ、特異とは言え強力な能力に違いは無いのなら戦力として持つのは当たり前と言えるだろう。


 だが、それならなぜ帝国は魔食を狙うんだ?

 俺が知る限り、魔食に戦闘能力は無い。触れれば相手を行動不能にするという点では強力かもしれないが、それでも部隊を送りこんでまでとなると、すこし不可解だ。




「お前は魔食についてどこまで知ってるんだ?」



「私も書類上だけでしか知りませんが、記録されてる魔王の能力としては、触れた人物の魔力を奪い、その分を自らの魔力、生命力に変換することができる。というもので、魔王の長寿の理由はこれだと言われています」






 ……そうだったの?


 と、言われてから思い返すと、思い当たる節が1つ。帝国の部隊との交戦した時、人質にされようとして魔食が発動し、その時に切られた首の傷が回復するのを見た。おそらく、あれが生命力の変換なのだろう。


 ならば、帝国はリナのこの能力を狙っている?

 そうなれば、リナは不老なのだろうか?

 疑問は尽きない。リナについて知るために聞いたのが、また新しくわからないことが増えることになってしまった。






「私の知っていることはこれくらいですね。ご理解いただけましたか?」




「あぁ。まだいろいろと疑問はあるが、だいたいのことは理解できたと思う。ありがとうな」




「トーヤ様のお役に立てたなら光栄です」






 素直に感謝を伝え、レイシルの話が終わる。

 歩はいつの間にか宿の方へと進んでいたようで、いつの間にか俺たちは宿の前まで戻っていた。


 外はまだ暗い。一通り話が終わったせいか、少し眠気を感じた。

 ……うん、眠い。

 今から寝ても十分の時間は休まるだろう……と宿へと入ろうとすると、レイシルから新たな声が聞こえた。








「では、続いて交渉いたしましょう」








 …交渉?

 この話の流れで出ることは無い言葉に、眠気がどこかへと消え去り、再びレイシルへと視線を戻す。






「はい。私はもう1つ、魔能者についてトーヤ様に有益かと思われる情報を持っています」




「……なるほどね。それを俺がどうするかって交渉か。で、何を場に出すんだ?」




「もちろん、これです」






 そう言って取り出すは、1つの箱。

 俺が受け取るのを保留にしておいた金貨と書類一式の入った豪華な箱である。





「これを受け取るのが情報を教える条件か?」




「はい。ですが、これに加えて1つ、トーヤ様には頼みたいことが」






 まぁ、そうなるよな。

 ここに来て材料にするなら、何か条件を加えるのは当たり前だろう。

 さぁ……何が来るかと少し構える。







「トーヤ様には私兵を持っていただきたいのです」



「……私兵?」



「はい。私の部下をトーヤ様に預けます。もちろんトーヤ様の好きなように使ってもらっても構いませんが、トーヤ様にはその部下に戦いを教えてもらいたい」






 ……なるほどな。


 この場合、戦いを教える、というのはつまりは俺の力を吸収したいのだろう。

 銃は強力だ。それなのに使い方さえ覚えれば誰でも使える。それを知ってか知らずか、レイシルの提案は、銃の力を求めるのと同意義であろう。



 ………これは、別に悪いことでも無い。

 レイシルは戦い方を教えて欲しいと言った。本人は銃の力を狙ったとしても律儀にそれに応える理由も無い。

 銃の扱い方を知ったとしても、銃の本体は今俺しか持っていないわけだし、知識だけ持っていても、複製はおろか、銃の基本ができるまでに何十年の月日が必要となるだろう。



 それを考えるとメリットの方が大きい。

 さすがにリナと2人じゃ扱えない兵器もあるからな。それを考えると私兵を持つ、というのは悪く無い選択だろう。




 ならば、ここで決めてしまおうか。





「……交渉成立です。歓迎します、トーヤ様」







 箱を手に取り、レイシルと握手を交わす。

 こうして俺は貴族として、王国に籍を置くことになったのだった。

魔食に関しては(作者の中でも)謎な部分がまだまだ多いですね。

私兵に関しても、読者さまからの提案で、育成などもしてみればという事で、加えることにしてみました。

これが後々どうなっていくのか……ご意見ご感想お待ちしております。



7月14日 不自然な話を大幅に修正しました。

……うまく直せただろうか、めっちゃ心配しております。

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