再び
「あいつ撃っていい?」
「ダメだ」
最近、リナさんの手が出るのが早くなった気がします。
右手に持ったワルサーP99を金髪の少女に向けようとするのを止める。
場所は草原。
しかし、今いるのはカッツェルトではなく、護衛対象のいる街、フェンベルク近郊の草原である。
そして、またもや戦うことになった俺たちは、目の前にいる2人の騎士と相対していた。
……どうしてこんなことに。
報酬が報酬なだけに依頼を破棄することも躊躇い、やる気満々の3人に思わずため息。
負けるとは思ってない騎士たちは、ニヤニヤした顔を浮かべているが、あのキザ野郎に比べたら大したことない。
これが耐性か……。
「それじゃ、初めていいわよ。2人とも殺しちゃダメよ?」
それは騎士に投げかけられた言葉だろう。
この少女も負けるなんて思ってもいない。彼らは騎士だ。軍の中でも秀でた者だけがなれる騎士である彼らが一介の傭兵に負けるわけがない。
そして、そんな当たり前は簡単に崩れるのだった。
ダダンッ!
「……えっ?」
突然何かの音が聞こえたと思ったら、騎士が足を抑えて倒れ出した。
なぜ2人が倒れているのか、理解することもできず、ただ呆然と見ていると、声が聞こえた。
「これで一太刀ってことで良いのか?」
2人の少年少女が、こちらを見ていた。
手に持つ奇妙なものに目を惹かれるが、それが何かを考える余裕が無い。
まぁ、俺とリナが同時に敵の足を撃っただけなんだがな。
新しく取り出したベレッタ90-twoと、リナが持つワルサーP99から放たれた9mmの弾丸は、30mほど離れていた騎士足の甲に見事命中していた。
「おーい……思考停止してやがる」
「もう'これ'早く積み込んで帰ろーよー」
駄々こね出したリナが俺の服の裾を引っ張る。
……まぁ、リナの言うとおりである。
俺たちの任務はツインテをカッツェルトまで送り届けること。それさえ全うすれば夢のマイホームなのだ。
「……はっ!あなたたち一体何を……」
「何でもいいから、さっさとこれに乗ってくれるか?」
意識が回復したツインテ少女の目の前。
轟音と爆風を立てながら、いつの間にか現れたそれに、少女はまた思考を止めるのだった。
どうしてこんなウザいキャラになったんだ?
そう自分に問いかけても、思いついたから、としか返ってこないのが悩みの作者です。
……これで本作が崩れないことを願うばかりです。