依頼
「孫娘の護衛?」
ガリアから領主に呼ばれてると言われ、再び城までやってきた俺とリナ。
ぶすーっと膨れて拗ねているリナを宥めながら面会用の部屋に入った俺たちに領主は開口一番こう言った。
「うむ。ワシには学園に通う孫娘がおっての。来週にこっちへ帰ってくる予定じゃったのじゃが、知っての通り戦争が始まってしもうたせいで、帰り道に襲われないか心配でのぉ……」
なら帰省を取りやめればいいじゃん……と言いたいところだが、このジジイの顔見てると直感でわかる。
こいつ絶対孫バカだ。
「そこで!実力で申し分無いお主らにワシの孫娘を無事この街まで届けて欲しいのじゃ!」
そう声を上げる領主をバカを見る目で見る。
もちろん受けてくれるよね?と言葉にせずとも分かる表情を見て、思わずため息をこぼす。
正直に言って、どっちでもよかった。
引き受けても引き受けなくても大したメリットもデメリットもなく、後に残った判断材料はリナと小旅行するか街でゆっくり寛ぐか、そのくらいだった。
「ここの守りはどうするんだ?」
「既に王都からの援軍は到着しておるし、防衛線の構築も順調に進んでおる。それにあの被害の後じゃからしばらくは大規模な侵攻も無いじゃろ」
防衛戦力としての理由も消え去り、ますますどっちでも良くなってしまった。
……こうなったらリナに任せるか。
「リナは受けたい?受けたく無い?」
「トーヤと2人っきりになりたい」
予想以上に斜めに外れた返答が返ってくる。
こりゃ俺が決めるしか無いかな……。
「そうじゃな……もちろん報酬もそれ相応のものを用意しよう。金……はこの前ので底尽きたから、土地などどうじゃろうか?」
お?と、今日初めて領主の話に興味を持つ。
それに気づいたのか、領主が詳細を語りだした。
「元々は商人が持ってた土地なんじゃが、半年も経たずに、王都への栄転がきまって、それと同時に土地を捨てていってしもうての……広さは十分じゃし、建ててまだ一年も経ってない豪邸もある。どうじゃ?」
俺的には魅力的な提案だった。
元々、家は欲しいと思っていたし、ここに永住する事は無いにしても、旅の拠点ができると考えたら悪くは無い。
そう考え、少し意見が傾きつつある中、もう一度リナに聞いてみる。
「どう?2人で生活するならいずれ家は必要になると思うんだけど……」
「……私も良いと思うよ。ホテルだとまた邪魔されそうだし、家でトーヤと同棲生活するのも……憧れるし」
未だに言葉に棘があるが、どうやらリナも賛成のようだ。
「わかった。その依頼受けるよ」
「おぉ!かたじけない!孫娘をよろしく頼む!」
満面の笑みを浮かべる領主。
孫娘が学園がある街を出発するのは5日後で、片道3日の旅となるらしい。
……車かヘリを使って輸送しても良いかもしれんな……。
そんな事を考えながら準備を進めるのだった。
次回、新たなヒロイン(候補)が登場します。
乞うご期待!