再び草原にて
「……だいぶ当たるようになってきた…かな?」
ターン……ターン……と、乾いた発砲音が響き渡る。
場所は再び草原、ドラゴンと死闘を繰り広げた場所に俺たちはいた。
「確かに、もうこれだけ当てれるようになってるのは凄いよ」
「えへへー、頑張ったもん!」
だから撫でて、とでも言うかのように頭を差し出すリナ。
その柔らかな白銀の髪を優しく撫でてやると、目を細めて気持ちよさそうに笑みを浮かべる。
そんな子犬のような少女が手に持つのは、ワルサーP99。
9mm弾を使用する拳銃で、ドイツのワルサー社が開発したポリマーフレーム銃である。
もちろん銃自体は俺がリナに渡したものだが、なぜ、リナが銃を撃つ練習をするようになったのか。
それは、数日前に遡る。
「トーヤ!戦い方を教えて!」
突然だった。
俺とリナが晴れて恋人という関係になってから数日。
時にイチャイチャ常にのんびり〜としながら、街で過ごしていたら、リナからの突然のお願いだった。
「どうしたんだ急に。何かあったのか?」
ゴロゴロしていたベットから起き上がり、リナを見る。
意志の強い、力強い目に少し驚きながら、リナの話を聞いた。
「トーヤはずっとこの街にいるつもりは無いんだよね?」
「あぁ、直ぐではないと思うけど、いつかは出て行くつもりだよ」
「そうなったらトーヤと旅をする事になるでしょ?そしたら魔物とか、いろんな敵が出てくると思うんだ。そんな時に、トーヤは強いから負ける事は無いけど、私はトーヤの足手まといにはなりたく無いの。だからね、トーヤに見捨てられたりしないように、一緒に戦えるくらいは無理でも、自分で自分を守れるようにしたいの!」
見捨てる事は何があっても無いんだが……と、心の中でツッコミを入れながら、考える。
正直に言えば、リナが闘えるようになるのは俺としても凄くありがたい。
現代兵器を使うにあたって、1人では扱えない兵器が無数にある。
この先、2人以上で扱うような兵器が必要な場面の時に、リナが居てくれれば戦闘はずっと楽になる。
だが、やはり自分の彼女を戦闘に参加させたく無いというのも本音だ。
だが、答えは決まっていた。
「わかった。俺のできる範囲で教えるよ」
「…やった!トーヤ大好きっ!」
そう言って飛びつき、俺に抱きつくリナ。
決定の理由は単純だった。
リナがそう望むから。
告白の時も、今も、リナは俺と一緒に居てお荷物になるのが一番嫌と言った。
なら、恋人の嫌なことをするようなマネはするべきでは無いだろう。
「早速明日から始めてみるか」
「うん!じゃぁ今日は……ね?良いでしょ?」
明日から訓練することを決め、俺たちはその日を恋人の時間に費やす。
そのせいで次の日に寝坊してしまったのは、2人の中の秘密の話である。
ワルサーP99
説明は本文にほぼほぼ書いてある通りです。
007でジェームスポンドが使ってることで有名な銃ですね。
最初はワルサーPPKかSIG P230にしようと思ったんですけど、作者の中の厳選なる審査の結果、P99が勝利しました。結構迷った。