王都の動き
別視点です。
「ふむ……カッツェルト近郊のドラゴン出現と、それを1人で討伐した少年ですか」
そう言いながら目をつむり、思案する。
ここは王都。世界の3大国の一つを統べる国王が住む場所であり、この王国の全ての中心である。
そんな場所の、ある一室で男性が見ているのは一冊の報告書。
たった今東方から届いたばかりの資料に、メガネをくいっと上げて集中する。
「これは……早々に確認すべきことがたくさんありそうですね」
「お言葉ですが大佐。あくまでもこの報告書はカッツェルト領主から直接届いたもので、内容も含めて事実だとは到底思えません。監査官からの報告を待ったほうが良いのでは……?」
「あの街の監査官は誰でしたか?」
「エリアス少尉です。あっ、今は特務中尉でした」
「あぁ、あのキザ野郎でしたか……」
何かを察したように言った後に、報告書に目を戻す。監査官の名前を聞いて、報告を待つ気など到底なかった。
書かれているのは詳細なドラゴンのデータと、トーヤとリナという名前の2人の旅人。そして少年の戦闘記録。
過去の歴史上でいくつもの街を、場合によっては国を崩壊に追い込んだドラゴンを討伐できる戦闘力。
……強力な戦闘力は今、最も欲しいものの一つだった。
「これが事実なら是非とも確保しておきたいですねぇ……帝国との戦争はもう回避できないでしょうし」
そう言って報告書を置いた後席を立つ。
数年間の間で関係が悪化し続けていた隣国の大国ゼレスタル帝国との小競り合いはすでに限界を突破しており、後はどちらが先に行動を起こすのか。その程度まで進んでいたのだ。
「どちらへ?」
「軍務会議を開きます。軍の幹部を集めてください」
迫り来る危機が明確。
ならば必要なのは迅速の行動だろう。
「了解しました。レイシル情報局長の権限で招集します」
命令を下され走ってその場を離れた部下を尻目に早速会議室へと歩を進める。
東方で起きた異例の事態に王国軍情報局……国内外のあらゆる情報を統括する機関、その長が早速動き出したのだ。
このことが、東方にいるトーヤ達に影響するのは、もう少し先のことである。
ご意見ご感想お待ちしております。
いやぁ、やっぱり自分で話書いてると、ちゃんと書けてるか心配になるので、つまんないとかでも良いので、反応を聞かせて欲しいな(チラチラ)