決闘後
「お疲れ様トーヤ!すごくカッコ良かったよ!」
さっきの戦いにかっこいいシーンなんてあったか?
そう思いながらこちらに笑顔で飛び込んでくるリナを受け止める。
そしてそのまま、ふわっと鼻腔をくすぐる甘い匂いとともに、身体をぎゅーっと俺に押し付けてくる。
「……勝ってくれるってわかってたよ」
そう言うリナの声音に含まれるのは、安堵。
いくら自分が魔食で、魔力を持つものは自分に触れられないことをわかっていても、リナはまだ少女なのだ。
あんな明らか様に男から性の対象とされることを宣言されたら、不安になるのは当たり前だろう。
俺はリナの頭を優しく撫でる。これで少しでも気が楽になれば良いのだが………。
……やっぱりあいつ殺しとけば良かったかな。
「トーヤ殿。今回は本当に面倒をかけてしもうた。客人にこの様な振る舞いをした事は領主として一生の恥じゃ」
リナと一緒に最初の面会室に戻ると、早速頭を上げられた。
……うん、ガリアから聞いて事情はわかっているが、迷惑かけられたのは事実だし、謝罪は受け取っておこう。
「ともあれ、これで名実共にトーヤ殿がドラゴンを倒せるほどの実力者である事は知れ渡った。少なくともあの場にいたものがトーヤ殿を疑う様な真似はしなくなるだろう。そこでじゃ、報酬の話なんじゃが……トーヤ殿は何か望むものはあるか?」
そしてそのまま話は決闘の前へと戻って報酬の話になる。
……って言っても、金はもらって、これ以上何を望むと言われても特に何もないからなぁ……。
「正直に言うと、ワシらがトーヤ殿に相応しい報酬など思いつかんのじゃ。おそらく王都にドラゴン討伐の件を知らせればそれ相応のモノはあると思うのじゃが……王都から来た監査員がアレじゃからの。すまぬが監査員以外の報告は王都ではあまり信用されんのじゃ」
「それ相応の報酬って例えば?」
「ふーむ……今回じゃと貴族階級が与えられるのは間違いないじゃろうな」
「あ、貴族とか興味ないんで結構です」
俺は即答する。
まさに言葉のままの意味だ。
最初から俺はこの国に留まる気もないし、貴族なんてなったらさらにややこしくなる事は必至だろう。
「それなら、報酬と言ってはなんですが、俺たちはしばらくこの街に滞在する予定なので、何か不都合があった時とかに力を貸してくれませんか?」
「う、うむ、それくらいなら言われなくてもするつもりじゃったが……」
「有り難うございます。今はそれで結構ですので」
事情がわかったので、俺は話を手早く切り上げる。
本当に今は望むものが無いし、これ以上はこの後の時間が少なくなってしまうからな。
そのままの流れで俺たちは領主の城の門を出る。
そしてそのまま城下町の賑わいに心が躍る。
「行こっか!トーヤ」
リナが勢いよく俺の手を引っ張ろうとする。
俺はその小さな手を握り返して、2人で街へと歩き出した。
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P90
ベルギーのFNハースタル社製のPDW。
使用弾薬は小口径ライフル弾とも言われる5.7mm弾で、貫通力が高いことで有名。
ガンスリンガーガールのアンリエッタちゃんが使っていたことで作者の中では有名。
デザートイーグル
銃好きなら名前を知らない人はいないでしょう。
イスラエル製の大口径拳銃で、使用弾薬は50口径と自動拳銃の中では世界最大。
正直、これならゴム弾でも人殺せそうと作者は思った。