決闘
「これより、エリアス特務中尉と、トーヤ殿の決闘を始める。ルールは殺し以外はすべてを認める」
訓練場にガリアの声が響く。
審判をしてもらっているガリアを真ん中にして、右にはエリアス、左には俺が開始の瞬間を待っていた。
距離は50mほど。剣士達には結構な距離である。
そして観客席は満員。
多くの騎士や、領主を始めとする面々が見にきていた。
「開始の合図は投げたコインが地面に落ちた瞬間だ。それより先に攻撃した場合は不戦敗とする」
そう言いコインを取り出すガリア。
それを見て俺は右手をカバンの中に入れる。
エリアスも剣に手をかけて準備は万全のようだ。
静寂が訪れる。この場の全員が開始の瞬間を静かに待っていた。
そして……
「……はじめっ!」
ガリアのコインが宙を舞い、そのまま落下する。
チリン……と言う音が響いた。
さぁ、蹂躙を始めよう。
「お前がどんな手を使ってドラゴンをアガッ!?」
ターン…と乾いた破裂音の後、エリアスが倒れる。
……何を言おうとしていたが知らんが、そんなことを聞く義理もない。
カバンから取り出したP90から放たれた5.7mmの弾丸は、容赦なくエリアスの鎧を貫通し、そのまま左膝を撃ち抜いていた。
「こんの…!ガッ!?」
50m先。
剣など絶対に届かない位置から腕や足など、致命傷にならない所を一方的に撃ち続ける。
観客が唖然とする中、ターンターンと一定のリズムで鳴り響く破裂音とエリアスの悲鳴が訓練場内を木霊していた。
「……へぇ、まだ耐えるんだ」
P90のマガジンの半分ほど撃ち尽くしたところで攻撃を止める。
まだ1分も経ってないのに手足から血を流すエリアスは、顔を憤怒に染めながらも、今だに立つ事ができていた。
……このまま撃ち続けても良いけど、それは面白くない。
そう思い、P90をしまって、新たにカバンからあるモノを取り出して、エリアスに近づく。
「どうだ?まだ戦うか?」
「きっ、きっさまぁぁぁ!!」
激昂してこちらに突っ込んでくるエリアス。
だが、手足を満足に動かせずに、ただただこちらに突っ込む姿は無様としか言いようがない。
「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」
一心不乱に振り続ける剣。
しかし、それが俺に当たることはなく、その事が余計にエリアスを追い詰める。
「なんだよ……なんなんだよお前!ふざけんじゃねぇよ!」
「そうか。なら死ね」
喚き出したエリアスに冷たく一言だけ放つ。
そして、ドォン!と低い重低音の後にエリアスは倒れる。
頭は銃弾が貫通……する事はなく、脳震盪を起こさせただけだった。
撃ったのはゴム弾。
弾頭がゴムの為、よっぽどの事がない限り死ぬ事がない訓練用の弾丸だ。
そしてそれを撃ち出したのは世界最強の拳銃として名高いデザートイーグル.50AEである。
もちろん、わざわざこんな銃で撃った理由はムカつくから、ただそれだけである。
そしてまた静寂。
この状況に誰も何も言う事ができず、ただ勝者として佇む少年を見ているだけだ。
「し、勝者、トーヤ殿」
そんな中で自分の役目を思い出したガリアが宣言する。
この声で周りが騒めき出し、エリアスは救護班に運ばれていった。
うん、なんか疲れた。精神的に。
この後はすぐ街に行こう。リナと楽しもう。
そう決心しながら、俺とエリアスとの決闘は幕を閉じた。
銃対剣の戦闘を書こうと思えばこうなっちまうんだが、迫力とかはあるだろうか?
まぁ、緊迫した近接戦闘を入れようと思ったらガンカタになってしまうから、申し訳ないけど、この作品ではないと思ってください。