下衆野郎
「あいつ……エリアス特務中尉は、中央軍から派遣された所謂監察官ってやつだ。中央の権力を自分の力のように振り回すいけ好かない野郎だ」
時と場所を少し飛ばして、領主城内訓練施設前。
エリアスと決闘をする事になった俺は、ガリアから話を聞きながら準備を進めていた。
「最初見た時からそんな感じだろうとは思ってたけどな……。で、強いのか?」
「仮にも中尉まで上がってきた男だ。実力に自信があるからこそトーヤ殿に闘いを挑んだんだろう」
それでもドラゴンを倒せるほどじゃないだろうが、と笑いながら言うガリア。
それでも一応未知の敵だ。油断はしないようにしようと気合を入れ直す。
「頑張ってねトーヤ!早く終わらせてね!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら応援してくれるリナ。
早く、と言う顔にはご丁寧にデートの時間を気にしている事が書かれていた。
……まぁ、元々時間をかけるつもりもない。
早く、そして相手に目一杯の屈辱を与えようじゃないか。
「準備はできたかな?英雄殿」
訓練場の扉を入り次第、嫌味ったらしい声が聞こえる。
エリアスの姿は、最初見た時のまんま、騎士の甲冑と腰に携えるは趣味の悪い金色の剣だった。
「あぁ、待たせたな」
「それでは始めよう……と言いたいところだが、その前に一つ。せっかくの決闘なんだから、賭けをしようじゃないか」
「賭け?」
またなんか言いだしたぞこいつ。
「あぁ、勝者が敗者に一つ要求できる。簡単な賭けだろ?」
「……何が目的だ?」
「いや、僕も楽しみが欲しいのでね。この勝負が終わったらそこの少女を頂こうと思ってね」
そう言って指をさす先には、リナ。
「顔は良いし体つきも悪くない。それなのに味見もできないなんてもったいないじゃないか」
そう言う顔も最初の時と同じ、下心を隠そうともしない下衆の顔。
この時点で決まった。
こいつは絶対殺す。
次は決闘です。
先に言います。敵の攻撃の出番はありません。