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プロローグ
あれがさよならだったのか、と緩やかに思い出す。もう最後だったのかも、と思う。思ったところで彼に会えるはずもない。本を読んでいた手を止めて、小夜子は寝ることにした。
どうせ夢でも会えないのだ、と残念がる自分の姿が目に浮かぶ。布団を敷いて、その中に身を委ねるようにして横たわる。こんな自分は彼に、怜の目にどう映っているんだろう。怜の表情は表に出ることはなく、心の中を覗くことはできなかった。あの時もしも自分の気持ちを言えていたなら…と考えて、やめた。考えても答えは出ないのだ。あの夜の星空が浮かぶ。家を飛び出して逢いに行ったあの夜を。星が綺麗だった。すべてを思い出しかけたところで小夜子は眠りについた。もう二度とない、秋の夜だった。