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落ちたり、殴られたり訳わからん。

 俺―都々坂緋色(ととさかひいろ)にとって重要な事件は夏の真昼に起こった。そして、その日は何の前触れもなく訪れる。もしかしたら前触れは起こっていたのかも……知れない。起こってなかったかも、知れない。


 学校が夏休みに入ると、正午前に起床し、昼食を食べ、スマホのアプリをする。そして、夜の午前二時頃に就寝し正午前に起床といった夏休み特有の生活サイクルを送ることが当たり前になりつつあった。


 高校の教師陣が課す宿題なんぞ一切手をつけていなかった。長い休みが終わりを迎える頃に慌てて宿題を済ませるといった描写が目に浮かぶが、終えようとするやる気が湧いてこないため現在も放置プレーとなっている。


「夏休みって、案外つまらないものだな」


 俺はそう思った。


 夏休みといえば友人を誘って海に行ったり、キャンプに行ったり、BBQをしたりとウキウキワクワクの大イベントが行われたりする。しかし、今のところそんな予定はカレンダーには記入されていない。また、そのような招待状も届いていないのが現実だ。


 夏 休みに入ったばかりというものもあるが、正直お誘いが来ないのは胸が痛い。


 今、友達がいないんだろと頭をよぎったかもしれないが友達はいる。決していない訳ではない。いるけど、何度も言うが招待状が来ないだけなのだ。


「緋色! 昼ごはん作ろうと思うんだけど何がいい? 母さんは今日暑いし、素麺がいいかなって思うんだけど」


 階下から母親の声が聞こえた。俺の母親は専業主婦だ。近頃は共働きが多い世の中になりつつあるが、都々坂家では父親が唯一の収入源である。そう言った意味では今時専業主婦がいる家庭は珍しいのかも知れない。


 その父親はというと家の近くにある道場で剣術を教えている。この御時世、そんなものを習いに来るのかと思われがちだが、爆発的なコミュニケーション力もあってか次々と入門者が後を絶たない。


 俺 としては非常に喜ばしいことだ。これなら、俺も復帰しなくて済みそうだ。そう、俺は剣術は辞めたんだ。


 おっと、もう昼ごはんの時間か。昨日の昼飯はチャーハンだったなぁ。んで、今日は母さんの提案通り素麺でいいか。今日は暑いし、麺つゆをキンキンに冷やして食べたらさぞかし美味いことだろう。


「え~と、素麺でいいよっ!」


 ドアを開き、顔だけを出して母親の問いに答える。


「オッケー。じゃあ、錦糸卵は作るとして、後は……蒲鉾と青ネギを買わなきゃいけないわね」


 何やら慌てている様子だったが、どうせ素麺の具材を買いに行かなきゃとかだと思う。


「じゃあ、行ってくるわね。留守番よろしくぅ~」


 ガチャンというドアが閉まる音が聞こえた。おそらく母さんが出かけたのだろう。


「ふあぁ~眠い」


 今日はなぜか早起きをしてしまった。そのせいか急に眠気が襲ってきた。いつもは正午過ぎまで寝ているのだが、この日は二時間早い十時に目が覚めた。


「よし、母さんが帰って来て、昼飯が出来るまで寝るとするか」


 部屋のド真ん中に転がっていく。窓からは鬱陶しいセミの声がガラスを突き抜けて入ってくる。


「やかましいわぁ!」


 と怒鳴ってみたりするが、もちろんそんなこと言ってもセミが分かるはずもない。


 今、夏の照りつける暑さとセミがマインドコントロールをしているかのような大合唱のダブルパンチに悩まされている。


「ね、寝るどころじゃねー」


 仕方なく階段を下り、一階のリビングへと向かう。そして、テレビのスイッチをオンにする。ちょうど正午のバラエティ番組だった。


「平日の昼間って退屈だー」


 ん? なぜか、急に外の景色が鮮明に見えだしたぞ。そもそも、家というのは壁があってようやく成り立つものであってだな。さらに、その周りをガラスが覆っているため、外の景色なんてそう簡単に目に入らないのだ。そうそう、あのような赤い屋根のよ……うな。


「お、俺の家だ!!」



 待て、落ち着くんだ。状況を整理してこの後の展開を考えてみる。


 うん! 落ち◯×△□¥&@$€£%#!


「ああああああああああああああああああ!!」




ガッシャーン。


ドン。


バン。


ゴロゴロ。


パリーン。


パキッ。


グキ。


ボキィ。


ドガーン。


チーン。







「いててて」


 強打したと思われるお尻をさすりながら立ち上がる。どうやら危なげな効果音を出しながらも無事着陸したようだった。


「生きてたのは嬉しいけど、ここどこ?」


 一応、地球のどこかではあるらしい。それも、日本のどこかだ。少なくとも近所ではないことは分かる。こんな変な建物なんてないからだ。


 建物の説明をするとレンガや鉄、鉛を使って作られたツギハギの建物。内部も材料が散乱しており、到底人が住んでるとは思えないほど荒れていた。推理すると廃墟だと思われる。


「何だ、このプニプニは…」


 あらかた、周りの状況を把握した後、一つの謎に着手する。


 先ほどから、右手に何かプニプニしたものが触れている。


 これは何だろう。その謎を確かめる時が来たようだ。この手に触れているのは…。


「いつまで、触ってるんですか! この変態!」


 強烈なアッパーをくらい、吹っ飛ぶ。吹っ飛びながら今回の謎を推理した。そう、答えは女の子の胸!


「このパンチ。かなり、強烈だ。いいパンチだったぜ……」


バタリ。

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