夢世界1
誰も知り得ない、湖の畔…
広い森の奥深くにあるにも関わらずこの場所だけは真っ赤な月が照らしていた。
そこには二人の青年が立っていた。
一人は、横長のメガネに、長い銀髪の青年。
その長い銀髪を後ろでゆるく纏めた姿は、妖艶で、でもどこか、知的な印象を与えた。
一人は、短い黒髪の青年。
整いすぎたその顔となりからは、少しばかり恐怖と誰をも魅了する、独特のカリスマを感じた。
背は、いくらか黒髪の青年の方が高かった。
あまり、雰囲気が似ていない二人だが、どことなく血縁を思わせる顔立ちだった。
黒髪の青年は、まだ生まれて間もない赤ん坊を抱えている。
二人はここで会ってからずっと沈黙を続けていた。
ふと、銀髪の青年は切り出した。
「…………本当にいいのか」
銀髪の青年はそう問いただした。
「…あぁ」
黒髪の青年は短く返した。
「そうか」
それだけいってまた沈黙が始まった。
どれくらいの時間がたっただろう。
さっきはまだ夜の始まったぐらいだったのに今はもう少しで夜が明けるというところまできている。
どうして、ずっとここにいるのだろう。
どうして、二人はここにきたのだろう。
と、私は考えた。
「もう、時間だ」
それは唐突だった。
黒髪の青年が言った。
「…最後に、言いたいことはないか?」
「ない」
「本当に?」
「ないものはない」
「なんなら……この子に本性でも晒しとけ」
銀髪の青年がそう言った時、
黒髪の青年の表情は一変した。
「だって~
やっぱり親としての威厳とか、必要でしょ?」
その顔はさっきの凛とした表情とは反対で、
目に涙を溜め、
口をへの字に曲げる、
というなんとも情けない顔だった。
「お前に威厳なんてもとからねーよ」
「まぁ、そうなんだけどさ
でも巷では、理想の魔王様っていわれてるんだよ?」
「本当にな
お前の本性知ってる奴らからしたら、
疑問しか浮かばねえよ
いや、ある意味尊敬かもな
『どうしてそんなに猫かぶれるんだ』ってな」
「あはは、どうしてなんだろうね~」
そこで私の意識が離れ始めた
ダメ……まだ…最後までいってないのに………
「それじゃあ、まかせた」
「そうだな、もう夜も明ける───
次会うときは─年後だな」
「そのときまで──をよろしく」
「おう………って泣くなよ」
「だって───、─────」
「わかってる─────、───、─────」
そこで私の意識は完全に離れた
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