who are you
ー吾が輩にとってはこれが世界の全てだー
彼らは、恐ろしいほどに巨大で醜く傲慢で利己的な生き物だ
何故あそこまで支配することが、虐げることが好きなのだろう。
吾が輩は怪我をしていた若気の至りというものだろうか
重傷を負い、出血と炎症と化膿が蝕む足を引きずりながら
ただひたすらに歩を進めた
彼らはそんな吾が輩を見つけ、抱えあげて持ち帰った。
身体はひどく熱っぽく思考もままならない状態で感じた恐怖とは別に
彼らからは慈愛を感じた。
不思議なことに喰われるのではないかという不安は無く
吾が輩の足は治療を受け入れた。
彼らと吾が輩はそれから共生を始めた。
ここに来てどれほどの時間が流れたのだろうか
吾が輩は高齢というには若干若く
壮年というには若干老けている
なのにどうだろう、彼らはあの頃とほとんど変わらない風体のままなのだ
種族が違うからそういうこともあるだろうと言われるかもしれない。
しかし、吾が輩と比べるとその歳の取り方は
とても緩やかであり違和感を感じざるを得ないのである。
彼らはしばしば身内であっても争いをする
それはとてもちっぽけな事柄であるのに
あれほど巨大な身体を動かす理由としては十分なのだろう
独特の言語で恐らくは罵倒しあっているのだろう。
彼らには恩義はあるものの、心のなかでは愚かな生き物だと思っているのは
もちろん内緒である。
彼らはしばしば吾が輩のもとに遊びにくる。
長く大きな毛虫のようなものを手に持ち、吾が輩はそれをひたすら叩くのだ
何が楽しいのかまったく理解出来ないが、彼らはそんな吾が輩の姿をみて
満足するらしい。
いつしか彼らと吾が輩は主従関係を築くようになった。
口に出した訳でも無いし仮に口にしようとも、彼らとの意思疏通は
困難であるのは言うまでも無いだろう。
拾われ、治療を施してくれた彼らに
吾が輩の中の恩義は日々増していったのだろう。
長い時間を過ごしたこの場所はもはや
吾が輩にとってはこれが世界の全てだ。
時折窓から見える外の世界
そこはきっと吾が輩の知らない物や
知らない事が無数にあるのだろう
吾が輩の仲間もどこかにいるかもしれない。
知ってる事は少しの恐怖と多くの未知が溢れていることだ、
きっと彼らは外の世界を知っているだろう
しかし彼らすら知らない世界もまたあるのだろう。
窓から差す日の光が暖かく
吾が輩はその温もりを感じながら眠るのが大好きだ。
今日もまた彼らは遊びにくるのだろうか?
吾が輩からしたら
昼寝のほうが好きなのだけれど
それに付き合うのも
吾が輩…………猫としての生き方なのだろう。