第26話「クール系×けなげ少女後編」
「要の気持ちを確かめる・・・か、それは名案だな」
麗治がこころを誉める、珍しく誉められたこころは素直に喜ぶ。
「うん、名案がうかんだ所で、次はどうやって確かめるかだな」
陽介がそう言うと、全員が陽介を見る。
「・・・・ん?どうした?」
「いや・・・ここはあんたが責任を持って、要に聞きに行くべきだろ」
麗治があっさりと言った。
「え?いや、むりっすよ先輩」
「先輩はお前だ、いいから行け、あんたにとっちゃ要だって後輩だろ?先輩の風格を見せ付けろ」
「ほ〜?簡単に言ってくれるねぇ、あの血も涙もないアイスモンスターに立ち向かえと?」
「お願いよう君!やってほしいの、ダメ?」
麗佳の上目遣いでおねだり、甘える声付。
「任せろ、俺に不可能はない」
あっさり態度を変える陽介、ある意味清々しい。
そして、アイスモンスターこと、要に立ち向かうことになった。
下校時間
陽介はハンド部のグランドに来る、そして、要を見つける。
要は一年の後輩達に片づけを押し付け、帰ろうとしていた。
「とことんいけ好かない男だな・・・」
そう呟きながら、陽介は要に声をかけ、グランドの隅に来させた。
「何のようですか先輩?」
「な〜に、簡単な事、珠ちゃんの事は好きなのかい?」
「・・・・・」
ごっつ怖い顔で睨んでくる要、
「・・・何の用なのかがいまいち分からないんですけど?」
「だ〜か〜ら〜、好きかどうか聞いてるんだっつーの!」
「なんで先輩に言わなきゃいけないんですか?そんな必要ないでしょ?」
「ゴツッ!!」
陽介が要の後ろにあった樹木を殴る、その際に大きな穴が開いた。
「お前は、質問に、答えればいい、わかったか?」
今までにない最悪な笑みで脅す陽介、要はさすがに動揺して首を縦に振った。
「で、好きなのか?」
「・・・付き合う前から、珠が俺に興味があったのは知ってて、案の定、告白してきた、正直その時は好きじゃなかった、でも従順な女だったから、利用できるかなって、思って付き合う事にした・・・でも、あいつ・・」
「ずっと・・・笑っているんだよ」
「俺がどんなにひどい事言っても、どんなにけなした態度をとっても、あいつ、笑ってて、そんなあいつを見ていると、ふと、笑顔以外の表情が見たくなってさ、泣き顔なんて、見たことなくて、それで最近は今まで以上に冷たくしてるんだけどさ・・・やっぱ笑ってて」
恥ずかしそうに語る要を、陽介はずっと見ていた。
「・・・まだはっきりしてないけど、多分俺、アイツの事が好きだ」
「・・・そうか、本当に好きなんだな?」
「・・・多分」
頭を照れ隠しにかいている要、そして、陽介は口を開く。
「お前はもうすぐ、一生後悔する場面に会う」
「・・・は?」
いきなりの言葉に、困惑する要。
「ど、どういうことですか?」
「そのままだ、お前はもうすぐ後悔する、その後悔が、一生残るか、ここで食い止められるかは、おまえ自身に掛かっている」
「・・・・」
固まる要を置いて、陽介はグランドを出ようと歩き出した。
「じゃあな、話は以上だ」
そう言って、陽介は要の前から消えた。
「・・・後悔する・・・場面」
要がまだ一人でその意味を理解しようと考えていると、
ふと、気配を感じた。
グランドの隅で座っている要の前に立っているのは、
「・・・珠・・・」
要が少し、緊張してその名を呼ぶ、
「・・・・あぁ、一緒に帰るのか?・・・じゃ、行くか」
「先輩・・・私、あなたのことが大好きです」
顔をうつむいてる珠、要は嫌な予感が的中しそうな気がして、体が震えた。
「・・・それがどうした」
「・・・・だから、私、先輩だけには、嫌われたくないから、これ以上、嫌な女だって、思われたくないから・・・」
「・・・・さようなら」
珠が顔を上げて、その言葉を口にした。
二つの瞳には、大粒の涙が、溢れ出して、流れていた。
要が驚いて、困惑する。
すると、珠は勢いよく走り出した。
「お!おい!待てよ!」
立ち上がる要、そして、後悔しないために、珠を追いかけた。
先輩は、私が嫌いなんだ、
これで、よかったんだよね?・・・これで、私、先輩の迷惑にはならないよね?
これでいいなんて・・・これっぽっちも、思っていない。
ずっと、先輩の隣にいたいと思ってた。
でも・・・もう、できないよ・・・。
涙で目の前が見えなかった、
それでも走った、何もかも忘れたいから、
いつものように、我慢して、笑う事など、到底できなかった。
まてって!!
≪・・・何か聞こえる?≫
まて!珠!
≪・・・うそ?≫
「おい!」
要が、珠を後ろから抱きしめた。
「せ?先輩?何で?」
「・・・お前が好きだからだよ!バカ!」
いつもクールな先輩が、その時だけ別人のように、真っ赤だった。
「お前の事好きだから!お前のその笑顔が好きだから!・・・たのむ、そばで、ずっと笑っててくれよ・・・」
「・・・・はい!」
涙は少しだけ止まった、でも、私はまた、笑顔でいることができた。
「・・・うまくいったか」
陽介が要と珠が抱き合うシーンを見て言った。
「ったく、感謝しろよ沖田たち、ややこしそうな依頼、こなしてやったんだから」
「ご苦労様です」
ふと上から声がする、
陽介は特に驚きもせず答える、
「さすがキューピット、恋人たちが心配で見にきたのか?」
「そうなんですけど・・・いらない心配だったみたいですね」
こころが笑いながら陽介の隣におりる。
「・・・寂しくないんですか?」
「ん?誰が?」
「陽介先輩の事ですよ」
「僕?どこが寂しいの?」
「え?そりゃ、麗佳さんと・・・」
「・・・フッ、やっぱりこころちゃんは子供だね」
「え?」
「大丈夫、大人になれば分かるさ、愛って言うのは、目にも見えなきゃ触る事もできない、でも感じあうことはできるって事」
「・・・よくわかんないです」
こころがそう言って難しい顔で悩んだ。
一方陽介はいつもの爽やかな顔で空を見上げた。
空は真っ赤だったが、とても明るいものに感じれた。
さぁ、感想評価を是非とも書いてくれ by陽介