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第24話「ブラコン妹×地味男続」

史乙は帰っていった。

だが、麗治たちはまだ屋上にいた。


「・・・あきくんも、さなちゃんが無理しているのを知ってて、離れようとしたのですね」

花鈴は静かにそう言う。

オレンジ色の夕陽はもうすぐ沈みそうだ。

誰も、何も言わず、ゆっくりと帰る事にした。


 帰り道

「あ〜!危険人物!」

陽介はその言葉にドキッとして、振り返る。

予想通り、後ろには、如月さながいた。

「や、やぁ、どうも」

「・・・ふ〜ん」

アイスピックを投げつけられ、その上にあんな話を聞いたのだ。

正直さなとはもう会いたくないと思っていた陽介、

だがさなはそんな事はもちろん知らずジロジロと陽介を見る。

「あ、あの〜?」

「ねぇねぇ!呪術家って本当なの?」

「・・・はい?」

その口から出た言葉は、本当にたわいもない言葉だった。

≪・・・普通の子・・・だね、ようくん≫

≪・・・本当、昨日の話が嘘かもって思っちまうぜ≫

麗佳と陽介の気持ちも知らず、さなはかわいい笑顔で話をする。

その内容は、兄の自慢や兄の好きなもの、兄の最近はまっている番組など、

確かに兄の事を好きでいる様だ、


だが、やはり無理にしている感じもした。


その笑顔は作り物で、なぜか怯えているように見えた。


「じゃ!今度私とお兄ちゃんの仲を裂こうなんて思ったら、またアイスピックだからね!」

「・・・・あぁ」

陽介もわかってしまった。

彼女が、この幸せが壊れてしまうかもしれないと、怯えている事に。





「ねぇ、あの制服って、東豪とうごう高校のだよね?」

「えぇ!あの不良が多い高校の?」

はじめが女子生徒の会話を聞いて窓の外を見る。

たしかに、校門の前には頭を金に染めたガラの悪い不良が三人いた。

「・・・全く、何もしなければよいのだが・・・」

はじめは無理に戦う気はなかった、

今この『はじめ』では、怖がられることはない、

だが喧嘩師だった頃は、大の大人にさえ怯えられていた。

毎日のように来る不良を意味もなく殴り倒し、警察に追いかけられた時もあった。

そんな自分に、気軽に話しかけてくれる女性などいなかった。

≪・・・いや、一人だけいたな・・・・≫

だが、もう昔の事だ。

今はこんなにも楽しい、仲間に隠し事があるのは退けるが仕方ない、

でも、麗治だけは、今でも友でいてくれる。

「・・・・まぁ、いいか」

暗い事を考えると、変な自分が現れる。

本当の自分ではなく、見た目だけに気をとられた自分が・・・。

頭をかきながらはじめは廊下を歩いて過ぎた。



さなは驚愕した、兄と一緒にいつもの登校、だが、

あの門の前にいるのは・・・二度と会いたくなかった相手、

 

 ペンダントを踏み潰したあの男子生徒だった。


≪無視して学校に入ろう≫

そう思って早足で校門をくぐろうとするさな、

だが、そんなに上手く行くはずもなかった。


「まてよ」


肩をつかまれる。

振り返ると、あの男子生徒が笑ってこっちを見ている。

「な、なんのようですか?」

「オレだよオレ、大木だよ、忘れたのか?」

なぜ今更・・・そんな事を言う?

「・・・なんのようですか?」

睨みつけながら言うさな、だが相手はなんとも思ってないようだ。

「おいおい、中学校の同級生を忘れたのか?薄情な奴だな〜」

「だから!あなたなんて知りませんし!用がないなら放して下さい!」

「うるせえよ」

さなの肩を掴む手に、力が入る。

「俺と一緒に来いよ、遊んでやるぜ?」


「いい加減にしてくれないか?」


あきが不良の手をさなから振り払う、

「僕の妹に手を出さないでくれ」

はっきりというあき、だが、それが不良たちを怒らせてしまったようだ。




≪あれ?なんだか今日は騒がしいですね麗治さん≫

≪あぁ、確かにそうだな≫

こころと麗治が登校してきた、校門の前で何か騒いでいる。

≪・・・・!!!大変です!≫

≪?、どうした?≫


≪昨日会ったあきさんが!殴られてる!≫


「なに!?」


麗治が走り出す、そして、二人組みに殴られているあきと、泣き叫んでやめろと言っているさな、だが後ろからもう一人の不良に両腕を抑えられている。

「やめて!!やめてよ!!」

暴れ方が尋常じゃない、だが手を振り払う事はできなかった。

その間にもあきは殴られ蹴られている。

「よえ〜、こいつ弱すぎてビックリだぜ〜」

「モデルだからっていい気になんなよバカが!」

ひどい暴行、だが、誰も止めない、

走って素通りする生徒達、だが、麗治は止まった。

そして、更に後ろから誰かが走ってくる。


「「いい加減にしろこのド低脳どもがぁあああ!!!!」」


麗治が不良の一人に渾身の拳を腹に叩き込む、

そして、大木とかいう不良を、史乙が飛び蹴りで吹っ飛ばした。

「なっ!?」

さなを抑えていた不良が驚く、


「無抵抗の奴に二人掛りとは卑怯を通り過ぎて人間のクズとしか言いようがないな!!」


「さなを泣かしやがって!お前らには地獄がお似合いだ!今すぐにでも送ってやろうか?」


麗治と史乙が脅し口調で言う、

先程攻撃した奴らはどうやら気絶しているようだ、

一人になった不良は青い顔になってすぐに二人を立たせて逃げた。


「お兄ちゃん!!」


さなは開放されると、すぐに開きに寄りかかった。

「お兄ちゃん!大丈夫!?お兄ちゃん!!」

「うん、大丈夫」

意外とケロッとしているあき、だが、さなの涙は止まらなかった。


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!本当ごめんなさい!!」


息が続く限り、そう言っていた、言うたびに、涙はとめどなく流れる。

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんな」

「もういいよ、大丈夫だって」

頭をなでるあき、それを見ていた史乙は満足した笑みで去ろうとする。


「いいのか?」


麗治が聞く、


「・・・いいんですよ、これで」


史乙は先に行く、


  それを、さなが振り返ろうとした、


だが、さなは振り返らず、堪えて、兄に抱きつく。


「・・・さな、大丈夫だよ」

「・・・うん、よかった」

「・・・・・さな、僕は、お兄ちゃんはずっとそばにいるから」

「・・・うん」

「だから・・・」


「・・・彼を、追いかけなよ、お兄ちゃんは、さなの側を絶対に離れないから」


「・・・・お兄ちゃんがいれば、それでいい」


「僕はよくないな・・・さなが素直になってくれないから」


あきはそう言ってさなを突き放す。


「さなは、さなで幸せを掴みなよ、僕はいつも、さなの側にいるから、ね?」


「・・・・でも」



「追いかけた方が良いですよ」

こころが言った。


「素直になったほうが良いですよ、今のままでは、お兄さんにも心配かけているし、自分の好きな人だって心配させちゃう、強く生きる事は良いことですけど、力み過ぎて周りが心配してますよ?」


「周りを見てください、あなたはもう、一人じゃないんですよ」


「・・・・仕方ないなぁ」


今までの、演じていたさながふと消えた。

もう、彼女は怯え続ける事はない、素直になった。





「・・・はぁ〜」

史乙は落胆していた。

≪・・・何を落ち込んでるんだオレは、これで良いはずだろ、これでいいんだ、無理に追いかけはしない!・・・それがいいんだ≫


「・・・・史乙」


「はい?なんですか?ちょっと今忙しすぎて困っているので話しかけないでください」


「・・・・やだ」


ふと、史乙が固まる。

驚いて振り返ると、さながいた。


「・・・何で追いかけたんだ?」

「うるさい」

「・・・お兄さんはどうしたの?」

「偉そうに質問するな」

「・・・・いきなりどうしたの?」

「この鈍感バカ」


なぜだろう、やっぱり楽しい、その理由を史乙は長らく忘れていた。

なにせどんな時も演じているさなだったのだ、だが、今は違う。


「・・・・素直になったね」


「・・・そうだよ、バーカ」


口では確かに皮肉を言っている、でも、さなは笑っている。


変だと思っている、でも、さなはあまのじゃくなのだ。


「・・・・好きだよ」

「・・・・あっそ」

「・・・付き合ってくれる?」

「・・・・どうしようかな?」

「・・・・・」

「・・・・・」


笑った、いつ以来だろう、二人でこうやって笑うのは?




「ありがとうね、麗治くん」

「どういたしまして」

立ち上がったあきは麗治にお礼を言った。

「・・・わざと、手を抜いてましたね?」

麗治がピンピンしているあきを見て言う。

「さすが、天才の沖田、鋭いね」

「そうですか、まぁ、あなたのように優しい兄を、僕は知ってますからね」


バックを背負う麗治、

青空の下、今日はどうやらすがすがしい一日が送れそうだ。




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