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第23話「ブラコン妹×地味男」

「ブラコン妹と地味男!」


・・・・ヤバイ世界に入ってないか?


如月きさらぎさな、帰宅部一年、極度のブラコンで兄を愛している、和夏わか史乙しおつ囲碁部一年、いたって普通の平凡青年、以上」


「とりあえず、今回はあきらめないか?」


麗治の説明の後、陽介が間髪を入れずにそう言った。

まぁ、気持ちはわからなくもないが・・・。

「如月兄妹といえばこの学校の名所の一つ、『ブラコンの如月』ではないか、名所を消すのは我としてはいけ好かん」

はじめが要するにめんどくさいと言った。

「如月あき、今や人気モデル雑誌にも載っている程の完璧な容姿に加え、その振る舞いは周りの人を幸せにするとまで言われるアイドルモデルですね、そして、その妹さな、兄譲りの完璧な容姿、尚且つ明るい性格が男女とわず人気がありますが・・・・究極の兄好きで、独占欲が強く、周りの目を気にしない堂々振りで、この二人はいつも一緒で仲の良い理由から、『ブラコンの如月』といわれこの高校の名物なのは、間違いないですね」

悠里が麗治にも劣らない完璧な説明をしてくれた。

「そ、そんなにすごい人なんですか?」

こころが控えめに聞くと、


「すごいとかそんなレベルじゃない、あきとは同じクラスで面識があるから言うが、あの兄妹は異常だ、特に妹がな、顔は良いしいつもの性格は申し分ないんだが、兄の事となると、人を殺しかねない」

陽介のセリフに、全員がげんなりした。

「どうしましょう?そんな二人を離すなんて・・・・無理ですわ」

「この依頼はさすがに不可能ですし、あきらめてはどうです?」


「ごめん、無理」


茜が麗佳の提案をあっさり切り捨てた。

「いやさぁ、私も初めは無理だと思ったんだけど〜、如月兄からも依頼されてね〜」

≪金か・・・≫

麗治は静かにそう心で呟いた。


「とりあえずさ、まずはあきと話して妹があきから離れる方法を考えよう」

陽介の提案に、メンバーは賛成してあきの教室へ向かった。


 あきの教室

教室の前まで来たメンバー、だが、教室の中を見て全員がその場にずっこけた。

「しまった、さなの存在を忘れていた」

そう呟く麗治の目線の先には、容姿の整った美形な兄と妹、如月兄妹の姿があった。

「あぁ、キューピットクラブの皆さん、はじめましてあきです」

こいつはどこかネジでも抜けているのだろうか、そう思ってしまう程マイペースな兄、

そして先程から不審な目で睨んでくる妹、

≪絶対無理、今回の依頼は桁違いだ≫

既に負け気の麗治だった。

≪とりあえず、ここでさなに兄離れさせる計画を知られると後々まずい、ここは適当にごまかして史乙に会いに行くべきだな≫


「早速だが、さなちゃん、君はお兄さんと別れるべきだよ」


麗治の作戦を見事に踏みにじる陽介、

しかもさなの不審の目が今度は殺意の目に変わったのを感じる一同。


「私と・・・お兄ちゃんを・・・生き別れにさせるつもり?」


誰もそこまで言ってないとツッコムが、それは心の中でだ。

「俺はそんな事言ってないよ〜、ただね、人として生きるなら今の生活態度を」

 「ドスッ」

陽介の顔の横に、アイスピックが通り過ぎる、※アイスピック、氷を砕くために使うデカイ針


「次は、外さない」


目が本気なので陽介は白目を向きながらはいと返事をした。

「・・・あなた達も、敵?」

今度は麗治達を見て言うさな。


「いえ、ちがいます」

「我は無関係なり」

「僕も無関係です」

「わ、私も何も異論がございませんわ」

麗治とはじめと悠里と花鈴は即座にそう言った。


「なめるなよクソガキ」


一人威勢の良い茜、

新たなアイスピックが突き刺さる前に一同は教室から俊足で逃げた。



「お前はバカか!」

「だってあのガキ生意気だから」

「同い年だろ!!」

麗治と茜はまだ口喧嘩をしている、

その間に、悠里は史乙を呼んでいた。


「単刀直入に聞くけど、あのさなを外見で好きになったって言うならあきらめなさい、それが一番」

茜がばっさりと吐き捨てる。

「待ってくださいよ!僕は彼女を外見で好きになったわけじゃないし!あの表向きの性格が好きなわけでもない!」

史乙は真剣な顔で言った。


「僕は、彼女の本当の姿を知っているんです」


「なんだ?妖怪だったのか?」

いまだにいじけている陽介がバカにしながら言う。

「・・・違いますよ、彼女が・・・兄を好きな理由は・・・」

そう言って、黙り込む史乙、

「なんであろう?」

はじめが聞くと、史乙は、はっと気づいた表情になって慌て始める。

「な、何でもないです、そうですか、僕にはやはり無理な恋愛ですか、あきらめます」

そう言って去ろうとする史乙、


「おい、男なら、その台詞に二言はないな?」


はじめが脅しの口調で言う、そして史乙は立ち止まる。


「どんなわけがあるかは知りえてない、が、きさまが本当にあきらめたのならば、もう如月には手を出さないという事だぞ?」


はじめの言葉は、不思議と心の中に入ってくる、そして、史乙も振り返った。

「・・・生き別れていたんですよ、さなはあきさんと」

ゆっくり語る史乙、話はさなが生まれた頃の事だ、

まだ幼かった二人、その二人に不幸が降り掛かる、

両親の突然の他界、幼い兄と妹は別々に孤児院で育てられた。

転機が訪れたのは、中学生の時、

兄であるあきが雑誌モデルを始めて売れ出した頃だ、

あきは生き別れの妹、さなを見つけて、今は二人で生活をしている。


「いわば、さなにとって唯一の肉親であり、自分を助けてくれたのはあきさん・・・好きになって当然じゃないですか、二人には兄妹として過ごした幼い思い出がないんですから・・・」

寂しく言う史乙、そして、麗治たちも神妙な面持ちになった。

「・・・多分、この話を知っているのは、さなとあきさんに、ここにいる皆さんだけです、もちろんですが、この事は誰にも言わないでください」

さすがに、これほど痛い話をされれば、他人に気軽に話そうなどと思えない、

茜だって困惑の表情をしている。

「・・・では、この話は忘れていただいて結構です、それと、二人をやはり離れさせるなんて無理ですね、この依頼、取り消します」


「まて」


麗治が史乙に声をかける。

「・・・なんですか?」

「・・・お前がどこでその情報を聞いたのか、そんなことはどうでもいい、なぜお前はこの依頼を頼んだ、そこがまだ不透明だ」


「・・・そんなの決まっているでしょ、好きだからですよ」


史乙が、悲しい顔をして言った。

「・・・・中学の頃から、さなとは知り合いでした」


―――――――――――――――――


さなは、中学の頃は今の明るい性格とは正反対で、誰にも喋りかけない暗い奴だったんです。

そんな彼女は、いつもいじめの標的にされていた。

そんな彼女と僕は、学級委員という仕事の関係でした。

黙々と仕事をこなす彼女は、周りからは不気味と噂されたけど

僕には、寂しさが嫌というほど伝わってきたんです。


そんなさなと、親しくなったきっかけは、彼女の暴行事件のときだった。


さなが大切にしていた母の形見であるペンダントを、男子生徒がわざと踏みつけて壊した。


さなは泣きながら狂ったように男子生徒を殴った。


本当に怒っていたのだろう、男子生徒は顔に大きなあざと歯が二本折れた。


その日から、元々あったさなと周りの壁は更に高くなった。


そんな中、僕はなぜか話しかけた。


『スッキリした?』


たしか、初めてかけた言葉はそれだった。


『・・・全然』


それが彼女の答えだった。


『ペンダント見して』

『やだ』

『僕なら直せるかも』

『やだ』

『大丈夫だよ、僕は』

『やだ』

『・・・・・』

『・・・・・』


なんだか、その会話が楽しく思えた、

それから、僕は毎日のように話しかけた。


『おはよう』

『話しかけるな』

『弁当一緒に食べようよ』

『あっちいけ』

『僕とペア組まない?』

『一人で良い』


全部彼女は否定しているのに、

なぜかその言葉に悪意は感じられず、

なぜかそんなやり取りが、面白く感じられた。


そんな彼女が変わったのは・・・・あきさん・・・兄が登場してからだ。


『おはよう!』


今日も、てっきり皮肉が返されると思っていた。


『・・・うん、おはよう!』


にっこりと、見た事もない笑顔で返された。


でも、それは楽しいやり取りではなかった。


  彼女は、変わってしまった。


――――――――――――――――――



「はじめは、動揺程度でしたけど、お兄さんが戻ってきたわけですし、きっと幸せになった、そう思ってました、でも、明らかに無理しているんです」

つらそうな表情で言う史乙、


「彼女は・・・無理に、演じているだけなんです、今の、この幸せを壊したくないから・・」


麗治たちも、それにはただ、黙っているしかなかった。



結構重いな・・・・by陽介

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