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第22話「デート護衛後編」

「ねぇ正志!今度はあっち行こうよ!」

「いいよ美由」

サッカー部のアイドルことマネージャーの美由とラブラブの正志、

だが、既に魔の手はすぐ後ろに潜んでいた。

≪今のところサッカー部員は見当たらないし、もう大丈夫だろ≫

少し気の緩んでいた正志に、誰かが肩を掴んできた。


「えっ?」


美由が正志の気配が消えたことに気づき振り返る。

だが、人の多い遊園地だ、すでに正志の姿は見えなかった。



「優くんあ〜ん♪」

「沖田・・・恥ずかしいよ」

「だ〜か〜ら〜、私のことは笑巳えみって呼んでよ〜」

沖田の姉が伊佐多にべったりでパフェを食べている。

傍から見れば美少女美男子の眩しいカップルに見える。

「そうだ、ジュース買って来るね!」

「いい・・・俺が行く」

有無を言わせず伊佐多が席を立って買いに行った。

「早くしてね〜」

笑顔を絶やさない沖田の姉、だが、伊佐多が行ってしまうと、

なぜか無表情になる。

まぁそれ程伊佐多に惚れているのだろう。


だが、いくら経っても、伊佐多は帰ってこなかった。




PC{キューピットクラブ}がそれに気づいたのは美由からの電話だった。

『正志が!正志が消えちゃったよ〜』

「はい?」

茜の携帯にかかって来たので茜が出る。

『普通に歩いてたら、グスッ、いきなり消えて、ヒック』

「・・・はぐれた・・・ってわけじゃなさそうね」

とりあえず美由を落ち着かせて電話を切る。

「麗治、ヤバイ事になったわ」

「奇遇だな、今さっきオレの姉貴からも電話が来た」

「そっちも?・・・とにかく、探すしかないわね」

「そうだな、他のみんなに電話して伝えてくれ、バカFCを潰すってな」

そう言って二人は行動に出た。


「ふむ、わかり申した、すぐに捜索する」

携帯を切るはじめ、後ろでは悠里が疲れた顔をしている。

「悠里!敵の反逆だ!FCを探すぞ!」

「え!?わかりました!僕はこっちに行きます!」

「うむ!でわ我こちらを探す!」


「ったく、諦めが悪く汚い根性の奴らの所為でデートが台無しだよ」

「ようくん、デートならいつでもできるでしょ?今はFC探そうよ、ね?」

「もちろんさ麗佳!君のためなら何でもするよ!」

目の色を変えて走り出す陽介、現金な奴だ。


「どうですか?いますかこころちゃん?」

「だめ、上からだと人が多すぎて見分けがつかないです!」

花鈴とこころも必死に探すが、なかなか見つからなかった。



時は過ぎる、夕陽も落ち始めて周りはオレンジ色に染まり始めた。

今だ麗治たちはFCを見つけれなかった。

「くそ!どこにいるんだやつらは!」

麗治が走りつかれて息を切らす、

ふと前を見ると、向こうのオープンカフェのテーブルに、姉がいた。

「・・・姉貴」

そう呟く麗治、よく見ると、


  姉は泣いている様だった。


それもそうだろう、折角のデートに、こんな虚しい時間があっては・・。

「・・・FC、絶対ゆるさねぇ」

そう言った麗治はまた走り始めた。



「あ・・・美由ちゃん」

走っていた花鈴がベンチに一人で座っている美由を見つけた。

「み・・・美由・・・・ちゃん・・・」

花鈴は声をかけようとしたが、それを抑えた。


  美由が泣いていたからだ。


「・・・花鈴ちゃん、早く見つけよう」

「・・・えぇ・・・もう少し待っていてください、美由ちゃん」

走り出す花鈴、こころもついてきた。


麗治がある場所で止まった、

すると、他の全員も走ってきた。


「・・・どうやら、残る場所はここだけみたいだな」

麗治がやっと見つけたという顔をした。


「奇遇だな、みなが一同を介するとは」

はじめが笑って言う。


「そうですね、それよりも、早くFCの奴らに文句を言ってやりたいよ」

悠里が不敵な笑みを浮かべていった。


「文句だけじゃ足りないわよ、情報を提供してもらわなきゃ」

続けて茜は邪悪な笑みを浮かべた。


「その後はオレの呪術で呪いでもかけようかな?」

陽介が冗談とも本気ともとれる顔で言う。


「・・・私も、今回だけは、本当に怒れます」

麗佳が目をきつくして言った。


「私も、本気モードで怒らせてもらいますわ!」

珍しくキレてる花鈴。


「さぁ!みんないこ!」

最後にこころが勢いよく遊園地のシンボル、『城』に入って行った。


遊園地のシンボルであり、目玉施設でもあるこの『城』

その中の『王室の間』{ただの休憩所}に、FCと二人がいた。


「よ〜し!この様子だと、美由ちゃんは帰ったぞきっと!」

「あぁ、そして途中で消えた正志を嫌いになる、完璧じゃないか!」

「良かったですね部長!これで美由ちゃんは元に戻ってくれますね!」

サッカー部が笑いながらそう話していた。


「サッカー部も上手くいっているようだ、我々も順調だな?」

「もちろん!こんなに時間が経ちましたし、沖田さんもあきらめて帰りましたよきっと」

「うんうん、そもそもこんな無口な男に惚れてしまったのが良くないんだ、でもこれで、沖田さんも目が覚めるだろう!」

勝手に自分の都合よく解釈していい気になるバカFCたち、


まさかこの後、怒りの鉄槌を喰らうとは、思ってもいなかっただろう。



「にしても、キューピットクラブまで負かしたのは驚きだな!」

「あぁ、天才の沖田に情報屋茜、謎陰陽師はじめに西条姉弟、しかも最近呪術師陽介まで入ったって聞いたからな、計画のほとんどを潰したのはさすがだが、やはり最後は藍が勝つのだよ!!」

「いよ!部長!かっこいい!」


「吐き気のするセリフにかっこいいなどという賞賛はあわないだろう?」


ふざける一同の前に、六人の影が見えた。

「な、まさか・・・」


「キューピットクラブを馬鹿にするのは聞き捨てならないわね」


「さ〜て、腐ったそなた達の性根、完璧に潰して差し上げよう」


「人に迷惑散々かけて、笑っていられるのも今のうちですよ?」


「今回、わたくし本当にムカついておりますので」


「さて、そろそろ死刑執行時だな、バカFC共」


陽介と茜とはじめと悠里と花鈴と麗治が黒い顔で脅し文句を言う。

「ま、まて!、お前らなんでそこまでして俺らの邪魔をする!?」

「そうだそうだ!人の恋は自由なんだぞ!!」


「あなた方のその自由の所為で!!美由さんは泣いたんですよ!!」


こころが叫んだ。


「あなた方は自由をわかっているんですか?少なくとも!今のあなた方の言っている自由はただのわがままです!!」

「・・・・・・・」

「好きだ好きだの一方的で!しかも、大切な人を泣かせてまでして!それなのにあなた方は平気で笑っていられるんですね!!最低です!!」

「・・・・・・」


「いま!!あなた方に恋をする資格なんてありません!!周りを考えてください!!」


衝撃を受けているサッカー部、だがバスケ部は少し気まづいだけの感じだ。


「おい、バスケ部、貴様らも同罪だってわかっているよな?」

麗治がバスケ部を睨みながら言う。

「え?・・・まさか沖田さんも泣いてい」


「黙れ」


麗治が喋っていたバスケ部員の首元を掴みながら言った。


「お前らに、姉貴の気持ちがわかるか?」


そのセリフは、バスケ部に強い衝撃を与えた。



すぐに正志と伊佐多は開放された。

ロープで縛られていたようだ。

「すぐに行ってあげてください」

悠里のセリフに、二人は頷いて走り去った。

「さて、死刑の続きといきますか」

陽介がそう言うと、六人の影の目が光った。



「美由!!」

ベンチで座っている美由を見つけた正志はすぐにかけよった。

「た、正志!」

泣いていた美由は、すぐに笑顔になって正志に抱きついた。

正志は気づく、美由の体温が冷たい事に、

「・・・ずっと、待っててくれたのか?」

「・・・当たり前でしょ!」

そう言う美由に、そっと上着を着せる正志、

「ごめんな、今度のデートは、寂しい思いさせないから」

正志がそう言うと、美由は笑顔になった。



「・・・・ごめん」

伊佐多が息を切らしながら、麗治の姉の元につく。

「・・・遅いよ」

無表情だった、やはり怒らせたか。

「・・・・ごめん」

「・・・・もういいよ」

「・・・・・ごめん」

「・・・うん、わかったから」

「・・・・・・・ごめん」

「あぁもう!それ以上言わないで!」

麗治の姉は目を潤ませながら伊佐多に言った。


「・・・ありがとう」


伊佐多は笑巳に抱きついてそう言った。

「・・・なによ、心配したんだから」

「・・・そっか・・・今度埋め合わせする」

そう言う二人の上の空に、花火が上がる。

『当遊園地の夜の花火ショー!夜空に舞う花火をどうぞご覧ください!』



「・・・部長、花火、きれいですね」

「あぁ・・・そうだな」

「サッカー部部長、お前も酷くやられたな」

「お前もな、バスケ部部長」

ボロボロのFCメンバー、しかも今日限りでFCは解散しろの命令が下った。


「・・・人を愛するって、難しいな、バスケ部部長」


「そうだな・・・それでも、愛するのを止めないのが人間だよな」


夜空に舞う花火は、それぞれに元気を与えてくれたようだ。


「きれいだな、美由」

「うん」


「・・・きれいだね・・・笑巳」

「・・そうだね」



「ほらご覧麗佳、花火が僕らを祝福してくれてるよ」

「お主頭が変になったのではないのか?」

「ちょ、言いすぎですよはじめさん」

「いいですよ悠里君、本当のことですし」

「れ、麗佳ちゃん?本音でた?」

「わ〜い、花火きれ〜〜」



「・・・どう?・・・お姉さんの敵討ちできた?」

茜がイタズラな笑みで麗治に聞く。

「うん、まぁ、お前らも手伝ってくれたしな」

「そっか・・・わ〜、本当きれい」


「・・・・ありがとな」


「・・・え?今何か言った?」

麗治の声は小さすぎて、茜には聞こえなかったようだ。


≪・・・ま、いいか≫

「なんでもねぇよ」


「そう・・・素直じゃないわねぇ」


茜のその言葉は、花火の音にかき消されて、本当に聞こえなかった。


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