第21話「デート護衛中編」
遊園地 朝8:30
入場ゲートに正志と美由が合流、そして入場。
その10分後、麗治の姉と彼氏が入場。
その1時間前に既にFC{ファンクラブ}とPC{キューピットクラブ}は入場していた。
「こちらFCサッカー部対抗隊の茜です!クライアントの二人はジェットコースターに乗る模様!その後ろに露骨に怪しい集団発見!どうやらクライアント同士を一緒に座らせない作戦を取る模様です!」
ジュットコースターの前にはサッカー部員の集団となぜか黒いスーツの茜に悠里に花鈴と麗佳がいた。そして小型のイヤホン式通信機で麗治と連絡を取っていた。
≪了解、集団で襲って隣同士にしないって、幼稚な抵抗だな≫
「いえ!甘く見てはいけません!ジェットコースターでカップルが一緒に乗らずしてどうするんですか!すでに戦場なんですよここは!」
いや、違うから。
「とにかく!どうすればいい?」
≪そうだな、取りあえずクライアントに近づいて合流しろ、後は乗るとき邪魔しに来るサッカー部員を倒すしかないだろ≫
「了解!では、いってきます!」
早速正志たちに近づく茜達。
そしていよいよ順番がまわってきた。
「次の人どうぞ〜」
係員がのんきに二人に声をかける。
「えっと二人で」
「いいえ!!22名です!」
正志の台詞を抑えて後ろのサッカー部員の一人がそう叫んだ。
するとその瞬間、茜のローキックが叫んだ男に直撃した。
「ゴゲフ!!」
鼻血を出しながら吹っ飛ぶサッカー部員、
「ごめんなさ〜い、どうやらこのバカ私達を呼んだと勘違いしたみたい、そこのお二人さんは気にしないでください」
ナイスな茜のフォローで二人は無事仲良く乗る事ができた。
≪オッケー!FCサッカー部の撃退成功よ!≫
「ご苦労様、引き続きがんばってくれ」
麗治が茜の報告を聞いて通信機を切る。
「ふむ、麗治の姉が動いたぞ」
はじめが声をかける、行き先はお化け屋敷らしい。
「お化け屋敷か、邪魔し放題だな」
陽介が困ったように頭をかく。
「困ってる場合かよ、姉さんはもう入ったんだな?」
「バスケ部なら先回りして職員用の入り口から行ったぞ」
「え!?それってやばくないですか?」
「成る程、脅かす時に何かするみたいだな」
麗治達も急いでお化け屋敷へ入っていく。
井戸
「部長〜、本当に大丈夫ですか?こんな事して?」
「バカ野郎!沖田を盗られても良いのか?ここで男を見せろ!いいか?あの伊佐多が沖田と一緒に来たらこの皿を伊佐多にぶつけて気絶させろ!その時絶対に沖田には伊佐多がビビって気絶したと思わせろよ!いいな!」
職員を気絶させてお化け屋敷を乗っ取ったバスケ部、
既に犯罪の領域ではあるが取りあえず気にしない事にする。
「来たぞ!」
井戸で脅かす役のバスケ部員が身をかがめる。
[き、緊張するなぁ、でも!ここで男を見せなきゃ沖田さんは振り向いてくれないもんな!]
妙なやる気を出すバスケ部員、
少しずつ顔を出しまずは驚かせる。
「う、うらめしや〜」
「なにやってんの小松田くん?」
麗治の姉がその部員を見ながら言った。
[あ、顔知られてるんだった・・・え?ちょ、どうするの!?]
「・・・ふ〜ん、小松田君もデートの邪魔しに来たんだ〜」
「いや!その、沖田さんこれには事情が」
「え〜?どんな事情?」
「そ、それは」
[・・・い、言うしかない、ここで好きなんですって告白するしかない!僕は沖田さんに一目惚れしてバスケ部に入ったんだ!ここで自分の思いを告げないときっと後悔する!よし、言うぞ!]
「沖田さん!僕は、あなたの事が!」
「そこにもいたかお邪魔虫ぃいいいいい!!!」
いきなり横から陽介の鉄拳が飛び出した。
「ゴハッ!!」
[・・・え?・・・そんな]
小松田、人生で一番大きな決断をしたのに、あっさり失敗した。
残念だが、彼の恋心は絶対に届かないだろう。
「ちょっと、陽介さんやりすぎじゃないですか?」
「いいのだよこころ、これも恋の試練だ」
はじめのよくわからない台詞は置いといて、結局お化け屋敷に転覆していたバスケ部員は全員三人によって退治させられたのだった。
「意外とお邪魔虫もしつこいね〜」
陽介が気絶しているバスケ部員を外へ運びながら言った。
「やはり男たるもの潔くなくてわな」
はじめがそう言っていると、バスケ部員の一人が気が付いた。
「く、貴様ら、恋をしていないからそんな事が言えるのだ!」
「残念だけど恋人ならいるよ、君達こそ彼女ができないからこんな無様な行動に出るんだろ?」
陽介の惨過ぎる正論に意気消沈するバスケ部員。
「とにかく、邪魔はして欲しくないから、サッカー部員と一緒に隔離させてもらうよ」
陽介がそう言うと、バスケ部員たちを移動させ始めた。
遊園地の人気のないアトラクションの裏路地
「じゃ、FCの軍勢はこれで全員だな?」
麗治が縄で手足を縛られたサッカー部員とバスケ部員を見ながら言った。
「えぇ、これで安心してデートができるわね」
茜のその台詞に部員たちが声を上げる。
「くそぉおお!!放せ!」
「悪魔!鬼!人でなし!」
「自分達はどうなんですか?」
悠里が呆れながら言った。
「じゃ、長居は無用だし、僕らも遊園地を堪能しようではないか!」
「おぉ、良い案だ、我は賛成なり」
「やった〜!遊ぼう遊ぼう!」
陽介の提案にあっさり乗るメンバーたち。
「じゃ、閉館時間になれば係員の人に伝えとくから、バカの集団がいるって」
茜のサディスティックな言動に涙まで流す部員たち。
「許さんからなぁああああ!!!」
だがその怒号も虚しく麗治たちは行ってしまった。
「・・・部長」
「なんだ・・・」
サッカー部員の一人が口を開いた。
「俺・・・悔しいです!好きな人も振り向かせれなくて!あんなやつに取られて!」
「そうか、俺も悔しい・・・だが、どうする事もできん」
「サッカー部、あんたらも愛する者の為に今日は試合をすっぽかしてまできたのか?」
「ふ、そうさ、大事な県大会に通じる試合だが、捨ててやったさ、バカだな俺も・・・」
「そうか、本当にバカだな・・・お前も、俺も」
「あぁ!みんなバカなのさ!・・・だから!ここで諦める訳にはいかねぇえ!」
「そうだ!今こそ団結すべき時だ!」
「・・・ふ、まさか、犬猿の仲と言われたこのサッカー部とバスケ部が手を組むとはな」
「人生、何があるかわからないって事だな、サッカー部部長さんよう」
「よっしゃぁああ!!行くぞお前ら!男を見せるぞぉおお!!」
今ここで、男が魂を燃やし始めた。
ゴーカート
「勝負よ麗治!どちらが先にゴールできるか!」
「いいだろう、負けたって泣くなよ!」
メリーゴーランド
「どうだい麗佳?お姫様抱っこして馬に乗るこのシチュエーションは」
「な、なんだか恥ずかしい」
「ふふ、かわいいやつだな〜」
一人でご満悦の陽介だが、傍から見れば一人の高校生がメリーゴーランドに乗って独り言をしているのではっきり言って不気味だ。
コーヒーカップ
「よっしゃぁああ!!まわすぜオラァアア!!」
「ちょ!待って下さいはじめさん!加減しないと僕酔っちゃいます!」
口調まで戻ってしまうほどはしゃぐはじめ、どうやら遊園地は初めてのようだ。
アイスクリームの売店
[おいしい?こころちゃん]
[うん!とっても美味しい!]
こころを憑依させてアイスを食べさせる花鈴、
それぞれが思い思いに遊ぶ中、恋に燃える男たちの復讐劇が始まるとは、
このとき誰も知らなかったのである・・・。