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第19話「幽霊少女×呪術師少年後編」

「麗治!」

茜が教室のドアに立つ麗治を見て笑顔になった。

それと同時に麗佳と少年も麗治を振り返った。

「あら、誰かと思ったら、臆病な天才沖田さんじゃないの」

「これはこれは、麗佳さんキャラ変わってますよ?」

落ち着いて話す麗治だがよく見ると体が震えていた。

「フフフ、沖田さん、体が震えていますよ」

「まぁな、人の命を盗ろうとする相手には誰だって恐怖心を抱きますよ」

「あら、そう?・・・どうやら冥界へ送る魂が増えちゃったみたい」

「麗佳!だめだ!やってはいけない!」

「よう君は黙ってて・・・大丈夫、寂しくないように、西条姉弟とバカ陰陽師も後で逝かせるからさ」

目が大きく開いている、瞳孔が開いているからかその目は異常に見えた。

少年は耐え切れず麗佳に近づこうとした、だが、麗佳が少年を睨む、

「れ・・・・・・」

金縛りだった。動けなくなった少年ににっこり笑みを浮かべ、麗佳は麗治を睨んだ。


「私とよう君の仲を引き裂く事は、誰にもさせない」


黒いオーラの中にも、一途な恋心が垣間見えた。

「別に引き裂くつもりではありませんよ、あなたの間違いを正しに来たんです」

「私の間違い?・・・フン、みんなそう言うわ」

少しばかり、麗佳の顔つきが厳しくなった。怒りが増したと思われる。


「何で、なんで私は幸せになっちゃいけないの!!何で私は死ななきゃいけないの!!何で私は好きな人と一緒にいれないの!!私だけ、何でこんなひどい目にあうの!!」


涙はもう枯れ果てたのだろうか、

悲しみの雫は流れなかったが、それと同等の怒りをあらわにした。

「・・・ま、生きているあなた達の何を言っても無駄ね、でも、死んでから分かるものなのよ、本当の幸せって」

「・・・あんたの本当の幸せって、なんだ?」

麗治が静かに口を開く。

「言ってるでしょ、私の本当の幸せは、友達やよう君と一緒にいる事よ!」

「・・・なぜ一緒にいたいんだ?」

「楽しいから、そこが、私の居場所だからよ!」

「・・・あんたはその居場所のために、一緒にいたい奴を困らすんだな」

麗佳の表情が一瞬曇った、だが、すぐ怒りの表情になる。

「だから分かってないって言ってるのよ!!あなたは生きているからそんな事が言えるのよ!」

麗佳が麗治の首を絞めようと手を出しかけたとき、麗治が言った。


「少なくとも、こころは死んでお前と同じ境遇だが、わがままなど言っていない」


麗佳の動きが止まった。

「わ、わがままって」

「お前の言っている事は、わがままだ・・・あんた、『死』ってどんなものか分かってるのか?」

「あなたに何がわかるの!」

「死ってのは悲しいものだろうが!死んだものもその周りの人間も悲しませる事だ!これぐらい誰でも分かっている事だろうが!!」

麗佳はまだ止まらず麗治の首に手をかける。

「今のあんたは悲しむ人間を増やすだけだ!自分の都合で人間を殺すなんて最低な行為だ!」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!」

手に力が入る。それでも麗治は言葉を続けた。


「第一!今あんたのやっている事は!あんたを好きだった人を悲しませる行為だ!今までのあんたと違うあんたを!これからも好きでい続けてくれると思うのか!」


麗佳の顔が初めてもとの麗佳の顔になった。涙も出ていた。

だが、その顔はすぐ消えてしまった。


別の表情が現れた。鋭い眼つきで麗治を睨む。

「シネ!シネ!シネ!」

声まで変わった、もう麗佳ではないと言う事に、茜も気づいた。

「ぐがっ!」

麗治はまだ首を絞められている。

「やめて!れ、麗治が・・・麗治が死んじゃう!!!」

茜がそう叫んだ時だった。


その時、念仏の様なものを唱える声が聞こえた。

だが、よく聞くと、もっと別のものだった。

「闇帰れという、光何処かと問う、時は過ぎ、過去は過去、今は今、全ての理はそれを望む、死した魂、帰るがいい」

女性の声だった。麗佳の様子が変わる。

何か苦しむように麗治から手を離し、耳を押さえる。

すると、いつの間にか黒い長髪の女性が麗佳の前に立っていた。

巫女の服装をしたその女性は手を麗佳の上に載せる。


「死した魂、あの世へ帰れ」


黒い気配が麗佳からあふれ出た、そして人の形を創った。

「ありがとう」

いまいちどんな人だったかは分からなかったが、黒い気配は白に変わり、少しずつ薄れて消えていった。

「成仏」

巫女のような女性はそう言って手を合わせた。

「すまんな小僧、少し遅れた」

巫女は少し笑いながら麗治に話しかけた。

「はっ、遅いぜキツネ」

そう言いつつ、麗治は茜に歩み寄った。

「大丈夫か?」

顔を覗き込むと、

「・・・う・・う〜」

まだ泣いているようだった。頬は赤く麗治は初めて見る顔だった。

「なんだ、かわいい顔するんだな、お前も」

「・・・バカ!」

茜は鳴きながら麗治に抱きついた。


まだ教室には麗佳と少年が残っていた。

少年は金縛りが解けるとすぐ麗佳に走りよった。

「麗佳!麗佳!」

黒い気配を出した後、麗佳はすぐ倒れた。

その麗佳を抱き起こし揺さぶる。

幽霊なのに触れる事ができるのはおかしいはずだ。

しかし、それは期限付きのよみがえりだからである。

「・・・よ、よう・・君」

ゆっくりと目を開けた麗佳はそのまま少年を見上げた。


「死んだ者の魂を肉体と共に蘇生させる、『生術』を使ったね?」

キツネが少年と麗佳を見て言った。

馬季陽介まきようすけ、美術部三年、呪術家で有名な『馬季家』の長男だね」

麗治が少年について話す。

「そして、本当は一ヶ月前に交通事故で死んでしまった、菊咲麗佳、彼女を生き返らせたのも、あなただ」

「でも、この術はたまに変な霊を連れ込む事があるんだよ、お陰で、死ななくてもいい人間があの世へ送られそうになっちまったよ」

キツネが厳しい顔で2人を睨んだ。

「すみません、僕が悪いんです、呪術もわかっていない素人なのに変な事をして」

陽介が真剣な顔で謝った。だが、腕はしっかりと麗佳を抱いていた。

「さて、その子をあの世へ返さないとね」

キツネが麗佳を見て言った。

予測はしていたが、明らかに二人は傷ついた。

また、別れる事になるからだ。

「・・・わかってるんだろ、仕方の無い事さ」

キツネは冷たく言う、そして、麗佳が陽介の手を振り解いた。

「・・・ありがとう、よう君、事故でいきなりだからさよならができなかったけど、今なら言えるね・・・バイバイ」

泣き顔は見せなかった、笑顔で、陽介に手を振る麗佳。

「・・・麗佳・・・麗佳は、僕の、最初で最後の、好きな人だから!」

陽介が泣きながら言った。

キツネが何か唱えていた。きっと成仏させる言葉なのだろう。

麗佳がボンヤリ透けてきた。

麗治と茜は静かに二人を見守っていた。

麗佳から、光が放たれる、そして・・・・。






「・・・・・あれ?」

麗佳はまだ残っていた。

姿が透けているので幽霊なのであろう、だが、成仏できていない。

「・・・おい、ようとか言う小僧、何をした?」

キツネが睨む先で陽介は腹黒な笑みをしていた。

「・・・は?」

麗治が固まる。

「フフフ、僕は呪術家の跡取りだよ?・・・これぐらいの芸当できて当たり前」

「うぉい!お前さっきとキャラ違うぞ!なんだその腹黒な性格は!!」

麗治が陽介の襟首を掴む。

「やだな〜・・・誰になんと言われようと好きな子とはずっと一緒にいたいから、僕が死ぬまで一緒の呪いをかけたまでだよ」

「だったらお前をここで殺していいか?いいよな?」

「わ、私って・・・どうなるの?」

「ま、この小僧が死ぬまで幽霊だね」

「・・・・帰ろ」

茜は一人でそそくさと帰った。


「おい、待てって」

学校を出て一人で歩いていた茜に麗治が追いついた。

「なによ?」

「なにって、泣き虫な茜ちゃんを夜道一人にしたらかわいそうだから」

一発殴る茜。

「悪かった、でも、心配だから、送ってやるよ」


静かに夜道を歩く2人。

「・・・花鈴や悠里、はじめはどうしたの?」

「花鈴と悠里は無事家に帰ったよ、はじめは危うく戦国武将にとりつかれそうになったがキツネが何とかしてくれた」

「こころちゃんは?」

「家にいる、成仏させる時巻き込まれるから来るなって言われた」

「そう・・・」

「・・・・」

2人は黙って歩いていた。

茜は何か言いたそうだったがもじもじしている。

「・・・・なぁ、茜」

「な、なによ」

「・・・お前が絶体絶命の時、俺の名前呼んだよな」

「そ、そうだっけ?」

赤くなる茜をよそに、麗治は話を続けた。


「・・・また困った時、いつでも呼べよ、守ってやるから」


「・・・・バカ、もうこの茜様に困る事なんて無いわ!・・・でも、ありがとう」

頭から湯気が出るくらい赤い茜を見て、

麗治は笑った。




もしかするとこの話が一番意味分からないかもしれません。by作者

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