第18話「幽霊ちゃん×謎の少年中編?」
話が崩れていく!?
屋上
今ここには麗治とこころしかいなかった。
なぜならば、降りると言った麗治がそのまま逃げてきたからである。
「・・・あの、麗治さん?」
「なんだ」
恐る恐る話しかけるこころに雑に返事をする麗治。
「・・・幽霊、怖いんですか?」
「・・・・・まぁな」
「・・な、何でですか?」
「幽霊が怖い理由は怖いからだろうが」
「・・・わ、私は平気なんですね」
「始めは怖かったがな」
「そ、そうなんですか・・・・」
フェンスにもたれる麗治は夕焼けを見ていた。
こころは体操座りで麗治の隣にいた。
「あ、あの・・・」
「なんだ」
「・・・機嫌直してくれませんか?」
「・・・・そうだな、ところで、あいつらなんか言ってたか?」
「茜ちゃん達ですか?・・・今夜学校に乗り込むって・・」
「はぁ〜、そうだと思ったよ」
「・・・麗治さん」
「なんだ?」
「・・・実は・・この学校にいる幽霊、かなり性質が悪いんです」
ポツリと爆弾発言。
「はぁあああ!!!??マジか!?本当かそれ!」
「はい、一応私も幽霊なんでわかります、結構ドス黒いです」
「・・・茜達を止めるべきだよな?」
「無理です、茜ちゃんやる気満々だし、はじめさんがいるからって」
「でもあいつ幽霊見えないんだよな?」
「霊感ゼロです」
「・・・その幽霊って、茜達に危害加えそうか?」
「・・・あの〜、実はそこの所から話がややこしくなるんです」
「なに?」
「さっきもこれをどうやって説明しようか悩んでて」
「説明に悩むって、どんだけ馬鹿なんだよ」
「取りあえず聞いてくださいよ、実は・・・」
そして、麗治は本当の事実を知る。
「・・・・やばくないか?」
「正直、幽霊のエキスパートでもいないと・・・」
「だったら、いい奴がいるだろ」
そう言うと麗治は動き始めた。
夜の学校
それは、まさに現実世界から切り放されたかのごとく、静かである。
いつも見る様子と違うというのは、それだけで恐怖感を感じさせる。
「いい?みんな揃った?」
茜が楽しみで仕方ないように明るい声で言う。
「奇怪なモノを前にして揚々とするとは、やはり只者ではないな」
はじめがボソリと呟いた。
「でも確かに、怖いですけどワクワクしますね」
悠里が好奇心の光る目で学校を見る。
花鈴はさすがに怯えているのか目が白くなっている。
そして、依頼人の麗佳がいた。
「さて、まぁ頭脳である麗治と肝心なこころちゃんがいないけど、キューピットクラブ出陣!」
「え?こころちゃん?どなたなんですか?」
「え?あ、うん、あれよ、麗治の妹」
「へぇ〜、妹さんがいらっしゃるんですね」
危うくこころがばれる所だったと茜達はあせったが、悠里だけ何か違和感を覚えた。
[あれ?・・・確かこの人、幽霊見たのに、こころさんは見えないのか?]
変に思ったが、特に気にもとめなかった悠里だった。
麗佳の見たと言われる幽霊の出現位置はいまいち特定できないためあの日の再現をする作戦を立てた茜、はじめ達もそれに納得しまずは資料室へ向かった。
はじめが管理人を操り玄関を開けたままにしたお陰で侵入はできた。
そして、目的の場所にも到達。
歴史資料室
麗佳はあの日と同じ感じがした。
直感ともいえる感性が働いたとでも言うようだ、あの時と同じだ。
暗い廊下には何もないはずなのに何かが見えた気がした。
「さて!じゃ、探すとしますか!」
茜が先頭を切って行く。
麗佳の話によるとまずは生徒玄関を目指したそうだ。
生徒玄関までは少し遠い、謎の場所に入る可能性は十分にあった。
歩いて進む、茜達はなんとも思わず進んでいたが、花鈴は違った。
弟の悠里に引っ付きながら歩く、
「姉さん歩きにくいよ」
「お願いだから見捨てないで!怖いの!怖いのよ!」
すでに涙目の花鈴。
よほどビビっているようだ、それなら来なければいいのにと悠里は思った。
そんな花鈴が、異変に気づいた。
後ろから何かの足音がする。
片足を引きずるような、歩み寄ってくる足音。
「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆうり」
「そのリアクションだと幽霊が出たって感じですね」
「あ、あ、ああああああああしししあしああししあしあ」
「足音ですか?成る程、足音が後ろから聞こえてくると、フフ、姉さんは臆病だな〜、普通幽霊だったら足はないでしょう?つまり幽霊ではない、ってことは人ですよ」
そう言いながら振り返る悠里。
すると、一メートルほど後ろにガイコツの戦国鎧を着た武士が日本刀を持って片足でこっちに向かっていた。
足が一本しかない、故にけんけんで寄って来ている。
表情など分かるわけがない、ガイコツなのだ、骨である。
だが日本刀を持っているのはかなり恐怖であった。
それ以前にマジで怖かった。
花鈴も一緒に振り向いたようだ、口から泡を出している。
「・・・茜さん、僕達帰らせてもらいます」
悠里は焦点のあっていない目で姉を担いだままダッシュして茜達を抜いていった。
「え?あ、ちょっと?」
いきなりの事で止める事もできず行ってしまった悠里と花鈴。
茜はぶつぶつ言いながら前へ進んだ。
しかし今度は麗佳が気づいた。
「あ、あ、あああああかあかああかかああか」
「なに?茜ちゃんかわいい?そりゃそうよ」
「ちがちちちががちがい」
「え?血がいっぱい?なに、鼻血?」
「う、う・し・ろ」
やっとの事で単語を言えた麗佳、茜はくるりと後ろを向く。
そしてガイコツの戦国武将。
「ふ、現れたわね古より今尚現世に存ずる悪霊よ、天と地が変わらずとも時代は変わる、そなたの肉体も果てているのだ!今こそ黄泉へ帰りけり!悪霊退散!」
常人ではできない行動をやってのけたうえに御札を取り出す茜。
突如ガイコツの戦国武将が苦しむように地面にひれ伏した。
「す、すごい」
「茜ちゃんパワーをなめるなよ★」
まさに優勢に見えた、のだが、
「なんちゃって」
ガイコツが喋った。しかもお茶目に。
茜と麗佳は真っ白になり、石になった。
だが次の瞬間目にも見えぬ速さで生徒玄関を目指して走った。
ガイコツは笑った。
舌もないのに笑った。
顎が動いていた、その光景は奇妙の一言だった。
そして一人取り残されるはじめ・・・・。
「はて、なんであろう?固まりかと思えば矢の如く脱兎しおって」
そう、完璧にはじめはこのガイコツを見ることができなかった。
故に感じることもどうする事もできない。
「・・・我はどうすればいい?」
ただ一人で突っ立ってる事しかできなかった。
茜と麗佳が走っている。
そして既にあの不思議な空間へ迷い込んでいた。
走っても走っても廊下が続く。
麗佳は前は気づかなかったが教室のプレートがあることに気づく。
「32456−987」
「な、なにこれ!?」
その数字を見ると、なぜか更に恐怖心が増幅した。
茜も気が気でないようだ。
初めて顔に恐怖に怯える様子を表した。
麗佳はあの時と同じ願いをした。
「助けて!」
いつの間にか口にすら出して言っていた。
今尚走り続ける2人。
体力は限界に近づいていた。
だが、麗佳はまた感じた。あの時の感覚を。
「こっちだ!」
前方の教室から、あの少年が手を出していた。
麗佳は笑顔になった。
安堵の気持ちと、また、彼に会えた喜びから。
教室内で息をゼイハァ言わせながら茜と麗佳は床に座っていた。
「ま、また、助けてくれたね」
「・・・・うん」
大人しそうなショートカットの少年。
可愛い顔をしている。
茜は彼が幽霊である事を分かっていたが、そんな感じがしなかった。
幽霊にしては幽霊っぽさが感じない。
茜はそう思っていた。
しばらくその教室で休んでいた。
その間特に会話はなかった。
その沈黙を破ったのは少年だった。
「さて、そろそろ帰ろうか」
少年がポケットに手を入れた、そして、何かを取り出した。
茜にはそれがお札に見えた。
しかし、それは一瞬で燃えて塵と化した。
「やめてよ、よう君」
茜は背中を凍らす思いをした。
麗佳が、黒いオーラを出しているからだ。
それは雰囲気ではなく、目に見えるオーラ。
「よう君、ひどいよ、あっちの世界へ連れて行くつもりなの?」
「もう、約束の時が来たんだ、わかってるだろ?」
「・・・わからない、わかりたくない!私はまだ死にたくない!友達ともっといたい!よう君の彼女であり続けたい!」
「麗佳は、たった一人の僕の彼女だよ、今までも、これからも」
「でも一緒にいれないじゃない、だから・・・・ごめんね茜ちゃん?」
麗佳が薄ら笑いを浮かべながら茜を見て、言った。
「わたしの代わりに、あの世へ行って」
茜は声を出す事すらできなかった。
今まで依頼人と思っていた麗佳は幽霊、そして、この男の子は人間、
そして、今、わたしはあの世へ連れて行かれそうになっている。
「なにそれ、わたしに死ねって言ってるの!!」
「麗佳!そんなことしちゃダメだ!」
「・・・よう君はずっと私といたいでしょ?だから、ごめんね茜ちゃん」
「いや、いやよ!」
立ち上がり寄って来る麗佳、顔は既に今までの麗佳ではなかった。
「いや!!れいじぃいい!!!!!!!」
茜がそう叫んだ時だった。
「見つけたぞ、幽霊さん」
麗治の声がした。