第14話「泣き虫少年×スケバン前編」
笑顔が素敵な君だからby虎衛
「泣き虫少年とスケバン」
茜がげんなりとした表情で言う。
・・・スケバンって。
「渡井虎衛、美術部1年、人物画が得意。巳海羨、2年、スケバンとして有名。以上だ」
「虎衛君は泣き虫で女顔で女子から人気がありましたよね」
「変わって羨とやらは我の傘下「関東スケバン連合」の元幹部」
「え?今なんて?」
「な、なんでもないよ、な!はじめ!」
「そ、その通りだ、耳違い・・」
お前その耳違いって言い方やめろ。
早速依頼者の虎衛に会いに行く。
美術室
「す、すみませんここまで来てもらって」
超低姿勢で受け入れる虎衛。
「あれ?これって今描いている絵?」
茜が近くにある完成まじかの絵を指す。
背景は空をイメージとした青と白、
そして中央に描かれている笑顔の女性。
その目は優しく、口元は緩み、見る者を幸せにする力がある。
「・・・・羨を描いておろう?」
はじめの言葉に正直耳を疑った。
「な!なんでわかったんですか!?」
「え!!嘘・・これ羨?」
「失礼ですが・・・全く別人では?」
「いいえ、よく見てみますと・・・確かに羨さんですわ」
羨はスケバン、だからなのか常に無表情かメンチをきっている怖い顔。
正直、これほどの笑顔は見たこともない・・・。
「驚いた・・・ってこれ想像で描いてないよな?」
「そ!そんなことしませんよ!・・・一度だけ見たんです、羨さんの笑顔」
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それは、入学する前、体験入学の時でした。
絵を描くのが好きな僕は、ここの美術部に憧れていました。
絵画はもちろん、彫刻や写真まで、最優秀者の人は必ず、
この学校の名前がありましたから。
初めて見て、この校舎を描きたいと思ったんです。
『バックはやっぱり空だな、角度はいいかな?』
スケッチブックに校舎のデッサンをして、
そんな時、川が目に入ったんです。
優しい流れで、透明な綺麗な水の流れる。
ふと、川に見入っていると・・・。
羨さんが土手で寝ていたんです。
まばらに咲く花の中で一人の女の人が寝ているのは変でしたが、
一目惚れをしたんです。
静かな、川の流れだけが聞こえる、緩やかな時間。
つい、羨さんに見入って、
スケッチブックに描きはじめちゃって・・・。
今思うと、恥ずかしいですけど、
書かずにはいられなかったんです。
『おい』
夢中で描いていた時、羨さんが行き成り起きたんです。
『なにやってるんだい?』
『え!?す、すみません!あ、怪しいものじゃないです!ただそのあの!』
『女のあんたが私に近づくなんて図々しいね』
『・・・ぼ、僕男です・・』
一瞬沈黙が流れる。
『・・・そうなの?・・・ごめん、見間違えた』
いきなり口調まで変わって、ビクビクしている僕に言ったんです。
『なに?私に惚れた?』
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「その時の笑顔がまだ忘れられないんです・・」
真っ赤になりながら話す虎衛。
「まぁ、告白すれば大丈夫だろ」
麗治がさらっと言う。
「そ、そんな〜、それができないから言ってるんですよ〜」
「案ずるな、何より強気乙女は強気男に惹かれるぞ」
はじめの言葉で少しやる気になる虎衛。
「でもやっぱりな〜」
「もう、意気地がないわね」
「だって、羨さん学校には来るんですけど・・・会えないんです」
「え?まさか入学してから一度も会ってないとか?」
「あ、いや、たまに会えるんですけど・・・そんな告白までは」
「とにかく、アタックが大切ですわ、勇気を出して!」
「サポートならしっかり出来ますから!ね!麗治さん!」
天然のこころがいつもの様につい喋る。
「え?・・・だれでしょう?」
「ぼ、僕が言ったんですよ!ね、ねえ!麗治さん!!」
ナイス悠里、上手く誤魔化す。
「あぁあ!さぁ!羨の元へいざ!」
しかし、いざ探してみるとなかなか羨は見つからなかった。
体育館裏、保健室、倉庫、図書室・・・。
「い、いませんわね」
花鈴が音を上げる。
「も〜、いったいどこにいるのよ!!」
茜が痺れを切らし叫ぶ。
「そういえば、屋上行ってませんね」
「悠里よ、そんな安易な場所におるものか」
「いや、わからない、いるかもしれないから行ってみよう」
「す、すみません、僕は運動場のほうへ探しに行きます」
「え?一緒に来ないの?」
茜がポツンと言った。
「ちょっと、立ち入り禁止場所には・・・」
案外ちょい悪の麗治たち。
仕方なく別行動で麗治達と虎衛は分かれた。
屋上
「お〜い、誰かいねえか?」
麗治が誰もいない屋上で言う。
「いるわけないですよ、スケバンなんてどこに身を潜むか分かりませんから」
悠里がそういうと、上から声がふってきた。
「失礼な言いようだね」
背筋が凍る、怒りと感じる声を聞いたのだから仕方がない。
「あたしに用かい?」
上を見れば屋上の唯一のドアの建物の屋根に羨がいた。
「・・・・・・」
黙ってしまう一同。
「あぁ!呼んだくせに用はないってか!?」
「まぁ、落ち着け」
はじめが喧嘩師バージョンで話す。
「おや、珍しい、総長じゃん」
「実はお前を探している奴がいてな」
「知ってるよ」
面食らう一同、まさか虎衛の事知っているのか!?
「羽螺最刀の連中が探してんだろ?あいつらしつこいんだよね〜、で?総長がタイマン受けろって言いに来たんでしょ?」
「いや、全然違います」
麗治があっさり答える。
「渡井虎衛、知ってますか?」
「ん?あぁ、あのかわいい子か、どうした?」
「お話があるらしいですよ」
悠里が答える。
「ん?話?・・・だが今日はちょっと無理だ」
「羽螺最刀の奴らか?オレが何とかしよう」
はじめがそう言った時だ。
「た、大変ですわ!!虎衛君が!!」
花鈴が下を見ながら言った。
「何よ?・・・あ、あれって・・・暴走族!?」
「何だって!?」
一番に飛び出したのは、羨だった。
次回はアクションよ!!by茜