表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

第13話「ピアニスト少年×ヴァイオリニスト少女」

「ピアニスト少年とヴァイオリニスト少女!」

茜がキラキラとした目で言う。

そういえばこいつ唯一できる教科音楽だったな・・。


五十嵐いがらしえん吹奏楽2年、ピアニストとして将来有望、全国ピアニスト演奏会で審査員特別賞、優秀賞受賞。琴芽ことめ蒼衣あおい吹奏楽1年、ヴァイオリン担当、しかし今だ弾けない初心者」

「なるほど、でも今回は難しくありませんね」

悠里が喜んで答える。

「そうですわね、同じ部活動ならばチャンスは大いにありますわ!」

「ふっ、して、相談者はどちらであろう?」

「蒼衣のほうよ、よし!ちゃっちゃとしちゃいましょう!」

「そうですね!ごー!」


吹奏楽部

「ん?蒼衣ちゃん?確か今なら第3音楽室で練習中よ」

吹奏楽部女子部長に相談者の居所を聞く。

「ちなみに園さんは?」

麗治がそれとなく訊く。

「園君も第3音楽室よ」


「ラッキーですね!これならすぐ恋も上手くいきますよ!」

「であろうな、しかし悠里、まだわからぬぞ?恋敵がおるやも知れぬ」

「フッフッフ、茜ちゃん情報!園を好きなのは今のところ蒼衣ぐらいよ」

「素晴らしいですわ!これで円満に幸せになれますわね!」

「そうですね!麗治さんもそう思うでしょ?」

「おいおい・・こころ、恋ってのはチャンスが多いとか敵がいないからっていいわけじゃねえだろ」

「え!!なんで?そんなわけ!」

「だからお互い好きじゃなきゃ無理だろ」

「「「「「あ」」」」」

見事5人がハモッた。


第3音楽室

行き成り入るのも失礼なのでドアに耳を付ける。

中からはピアノとヴァイオリンの音色が聞こえてきた。

ピアノの音はしっかりとしていて美しい。

だが対照的にヴァイオリンの音は弱々しくお世辞にもうまいとはいえない。

「そんなんじゃダメだ、もう一度最初から」

園の声が聞こえる。

もう一度やるがなかなかヴァイオリンの音はよくならない。

「今のところはフレットで次は休符、あとリズムが崩れている、もう一度」

スパルタで指導をする園。

「す、すみません、手が痛くて動けないんです、少し休憩を」

「・・・ハァ〜、1分だけな」


「・・・・うわ〜」

麗治がなんとも言えない声を出す。

「仲がいいって・・わけでもないようね」

「ちょっと厳しいですわ園君」

「どうします?中へ入ります?」

「いや、ここは退散すべきであろう」

「えぇ?ちょっ!はじめさんここまで来て」

「いや、こころ、はじめの言う通りだ、ここは戻ったほうがいい」

そういって屋上へ向かった一行。


屋上

「どうする〜?」

茜がやりきれない声で言う。

「そうだな、あの様子だと、どうも園は蒼衣を一部員としか見ていない。蒼衣の気持ちを伝えたところで、相手がいいと言うかどうか・・」

「そうですわね、ただ思いを伝えるのはダメでしょうから・・」

「う〜ん、自分の真剣な思いを形として届ければどうですか?」

悠里のなんとなく言った言葉が麗治の頭に止まった。


「そうか!悠里、いい事言うな!それでいこう!」

「え!?な、何ですか?」

「真剣な思いを形にして伝えるんだよ、つまり、ヴァイオリンの特訓をすればいい」

そう言って麗治は作戦を話す。


第4音楽室

「つ、つまり、思いを伝えるためにヴァイオリンを特訓して思いを形にする・・ですか」

蒼衣がヴァイオリンを持って答える。

「そうだ、真剣な思いを伝えるにはいい方法だろ」

「ちなみにコーチは私ね!」

茜が笑顔で言う、よほど音楽がすきなのか?


「違うわ、そこはシャープ、もっと弦をよく見て」

「はい!」


毎日放課の時間に音楽室に来ては特訓を続けた蒼衣。

麗治やはじめや悠里は来れない時があったが、

茜とこころと花鈴は常に練習に付き合った。


三週間後、

蒼衣の成長振りは驚くものだった。

あの初めて聞いた時の音とは違い、力がある。

「これなら大丈夫よ!うまくなったわ」

「あ、ありがとうございます!茜さんに皆さんのお陰です!」

蒼衣は頭を下げてお礼を言った。

「そんな事はない、そなたのがんばりが良かったのだ」

「そうですよ!いつもいつも特訓していたんですから」

「自信をお持ちください、きっと園くんも褒めてくれますわ」

「あぁ、これで思いもしっかり届くだろう」

「よくがんばりました!すごいです!」

「ありがとうございます!・・・・?、あれ?」

ついこころが喋る。

「さ、さぁ!早速園のところへ行くか!」

麗治が慌ててごまかす。

「・・・フフ」

「?、何笑ってるの蒼衣?」

「いや、茜ちゃんに教えてもらっている時、何だが花鈴さんの他にも、応援してくれている人がいるような気がして、へ、変ですよね?でも・・ありがとう」

蒼衣はこころの存在が薄っすら伝わっていたようだ。


「・・・どういたしまして」


そっと、こころはそう言った。


「園先輩、少しいいですか?」

「ん?あぁ、西条君か、何のようだい?」

「ま、気にせず来て頂こう」

はじめが園の腕を掴んで強引に連れて行く。


「ま、待ってくれ!僕はお金はないぞ!」

「我をゴロツキと思うな!悪い事はせぬ、案ずるな」

「あ〜、とにかく来ていただければいいんです」

「・・・時に、そなたは、蒼衣なるものをどう思う?」

「は?琴芽のことかい?・・・どう思うって、大事な後輩だよ?」

「・・・好きではないのか?」

「・・・・え?」

園の表情が困惑する。

「ちょっ!はじめくんそんな事今聞いちゃ!」

「いや、聞かねばならぬ、返答はいかに?」

「・・・そうだね、琴芽の、思いの大きさによるな」

「・・・よかろう、それが返答だな?」


第3音楽室

「連れて来ました」

悠里が先に入る。


「せ、先輩・・」

蒼衣が赤くなる。

「さぁ、蒼衣、ちゃんとやりなさいよ」

茜が背中を押す。


「せ、先輩、私のヴァイオリン、聞いてください」

無言で頷く園。

蒼衣は弾き始めた。

その曲は苦手なものだった、

だが園が好きだという事で蒼衣はその曲を練習した。


特に音楽に興味はなかった。

ヴァイオリンなんて触った事もなかった。

ただ、

園の弾くピアノの音に惹かれ、

園に惹かれ・・・・。

ヴァイオリンを選んだ理由は、

ピアノと練習するから。

ただ、それだけだった。

だが、その思いは変わった。

好きという思いをヴァイオリンで伝える。

ヴァイオリンを選んだ理由が小さかったのに、

ヴァイオリンをやる意味が大きなことになった。


蒼衣が弾き終わる。

麗治達は今までのと比べ物にならない上手さを感じて驚いていた。


「先輩・・・好きです!」

固まっている園。

だが、きっと伝わっているだろう。

そっと音楽室を出た6人だった。


「今回も無事に解決できましたね!」

「うむ、感無量だ」

「そうですわね」

「麗治〜、知ってる?」

茜がニコニコした顔で言う。

「こころちゃんずっと蒼衣ちゃんを応援してたんだよ、その気持ち、伝わったみたいよ」

「そうか、それはよかったな」

「はい!」

こころが元気に返事をする。


「ちなみにコーチ料2万」

茜が麗治に催促した。

「・・・・は?なぜオレ?」

「だって頼んだの麗治じゃん」

「知らん!」

「えー?何?ただ働き?ひどーい」

「お前は慈善事業ということを知ないのか?」

「・・・・?」

茜が何それという顔をする。

「・・・・え!?知らないの?」

「と言うわけで2万円」

「ボランティアってことだ!!」

「なによ、こっちは慈善事業じゃないのよ!」

「知ってるじゃねえか!!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ