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男だけど乙女ゲームの世界に転生した。  作者: 鴉野 兄貴
この世界は乙女ゲームの世界だ
1/15

プロローグ。何の罰ゲームだ。これは。

 突然だが。乙女ゲームの世界に主人公の家族として転生した。

 どうせ妹なんだろうとか、姉の逆ハーを奪取する話ハイハイとか、傍観ヒロインハイハイとか言ったやつ表に出ろ。 戦 争 だ 。

 頭おかしいって思っただろ? ガチなんだなこれが。

 俺も精神科行ってみた。医者代の無駄だった。バカにされただけで。


 何かと説明しないといけないがまず転生。

 俺は一四の時に餅を喉に詰まらせて死んだ。

 つまらない死に方なのに詰まってしんだとはこれいかに。死に際にゲームの世界に転生できたらいいなとは思ったが。

 なんだよ? 悪いかよ? 彼女もいなければ成績も悪く、モテない男の最後の望みがヒーローになることでっ?!

 まぁ俺の望みであるギャルゲでもエロゲでもなかったのがミソだ。RPGですらない。なんで乙女ゲー。誰得?!

 なに? 女から見たギャルゲーエロゲ―もそうだって? 確かに。


 で。気が付いたら赤ん坊になっていた。

 赤ん坊になってしまったら本能が先だ。

 俺の前世の記憶は吹っ飛び、平穏無事に育つはずだった。しかし運命はそれを許さない。


 俺たち姉弟の目の前で両親が轢き殺されたのだ。その瞬間に思い出した。



 この世界が忌々しいゲームの世界であることを。

 姉貴が幸せな結婚をするまで、この悲劇は繰り返されることを。


 なんの拷問だ。ケンカ売ってるのか。



 さて、おれの話はほどほどに姉の話をしたい。

 姉は普通の女子高生である。

 普通の顔に普通の身長、普通の体重に普通体型。

 普通の成績に普通の運動能力を持っているが、訓練次第で東大合格も海外留学も可能。

 各スポーツを高校生ではじめてもオリンピック出場楽勝のスペックを持っている。

 ……ってそれ普通ちゃうわっ?!


 そもそも『普通の顔』とぬかすが、化粧をしていない地味子状態で『普通顔』だ。

 姉はファッションもいまいちだ。化粧して服を綺麗にしたらどれだけ化けるかわかったもんじゃない。姉の身長は159センチ。体重51キロ。スリーサイズは82のCで 63 86だ。一見普通体型だがどこも悪くない。

 なんでスリーサイズがわかるのかだと? サポートキャラ特権だ。うん。

 姉は必死で彼女いうところの寸胴をへこませる努力をしているが、別にいらねえんじゃねぇかとか思う。

 ちゃんとくびれているし。

 そもそも『普通』な体型ということはいくらでも誤魔化せるということだし、姉は普通の娘と違ってとんでもなく足が長い。さすが乙女ゲーの世界だ。この世界に胴長短足の男女はいない。

 いないといっても俺みたいなモブは普通の胴長短足だけどな。例外というものはあるもんだ。うん。

 話を戻すが姉の特技は家事全般。幼くして両親を失った姉と俺は奨学金を受けながらひっそり二人で暮らしてきた。


 ってそんな設定通るかっ?!

 このドリーム脚本家っ?! 出てこいっ!

 遺産問題のドロドロとか生活費とかどうなってるっ?!



 一軒家に帰れば姉の明るい歌声(『音楽』の授業に力を入れていないので現在音痴)が響く。家庭菜園のプランタの野菜の味に舌鼓をうちながら俺たちはラジオとテレビをかけ、食事を楽しむ。


 日々はのんびりとすぎていき。


「わーちこくちこくっ! どうして時計を遅らせたのよっ?!」

「本来の時間より十分も早くするとかおかしいだろ」


「ひっどいー! 私を遅刻させる気だなっ!」


 遅刻してくれないとイベントが起きないのだよな。ベタだなぁ。

 しかしこれも俺と姉の幸せのためである。甘受してくれ。姉よ。

 姉よ頑張れ! まず最初のイベントだ!


「たいえへん! ちごくちご」ぐぶ。

 味噌汁を飲みながらパンを飲み込み、喉を詰まらせた姉はダウンした。


 ……。


 姉よ! 早く学校に行け!

 間に合わなくなっても知らんぞ~!!


「間に合わなくしたのは『弟』君だもん!」


 そう。俺には名前はない。モブだからな。

 正確には姉の名前もない。プレイヤー次第で決まるみたいだ。公式には『菜月なつきみどり』というらしいが。


 味噌汁の味と香りを楽しみながら俺は悶絶する姉を見下ろす。


「なぜパンを食う。しかもベーグル」


 地味にベーグルは保存が効く分高い。

「おいじかったから」


 ふごふご。ダメだ。このままでは姉が転生する。俺の二の舞にするわけにはいかない。


 俺は姉の喉に掃除機を突っ込んでみた。

 姉の抗議は無視するしかない。


「さっさといけ! バカ姉貴っ!」

「うるさいっ! ばかっていう『弟』君のほうがばかだもん!」


 姉には『勉強』『文学』コマンドをやらせるべきだな。

 このままでは本当に残念な子のままだ。

 掃除機を喉に突っ込まれて機嫌のいい女はこの世にいない。俺は学習した。別の口ならいいのだろうか。

 そういうと姉にひっぱたたかれた。


「『弟』君の耳年増!」


 真っ赤な顔をして姉貴が走り出す。俺が朝設置したバナナに転べば第一のイベント、『一之宮 栄一』との接触イベントがあるはずだ。


「ぎゃあ!」

「お、おばあちゃん大丈夫ですか?!」


 あれ?


「あたしゃまだ六三だよ?! 小娘っ?! まだ若い! というか、このバナナはあんたのイタズラかねっ?!」

 姉が家の外で叱られている。

 こんなはずではなかったのだが。

 と、いうか、イベントに間に合わん。なんとかせんと。


 俺は思案し、飛び出す。


「お姉さん! 好きですっ 付き合ってくださいっ!」

 なぜ俺が婆に。

 俺の突然の告白に婆は上機嫌。姉貴は唖然茫然。

 チャンスは今しかない。


 俺は姉貴を突き飛ばし、何とかバナナに乗せた。

「きゃあっ」

 おし、ストライク。何とか『一之宮 栄一』にヒットした。


「どこみて歩いているんだっ?!」


 遅刻して急ぐ少女がパンを咥えながら転んでイケメンと遭遇というイベントだが。


 普通に姉は『一之宮 栄一』に叱られていた。



 姉よ。イベントを起こしてくれ。

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