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ココロ

作者: 鈴夜 音猫


――報われないと解っていても、どうしようもない気持ちがある。




 家も隣で幼稚園から一緒だった幼なじみ、拓真。まるで兄妹のように育ったから、彼のことなら大抵分かる。それは拓真も同じことだろう。

 そして高校から一緒になって、親友になった菜々美。ふわふわした雰囲気で、ガサツな私と反対に女の子らしい子。それはまさに拓真の好みそのもので、2人が付き合い出すのはいわば必然的だとも思えた。

 大切な友達2人が幸せになることは私にとっても喜ばしいこと。なのに何故、こんなにも胸が痛むんだろう?


「朱莉! 帰ろう?」


「あ……うん」


 拓真と付き合い始めた菜々美だけど、放課後になると必ず私を誘いに来る。私と拓真は同じクラスだけど、菜々美は隣のクラス。菜々美が来る前に立ち去ってしまいたいのに、何故か決まって彼女のクラスが先に終わってしまう。

 チラリと拓真を見るけれど、ヤツは私と目が合うや否や視線を反らす。行くべきじゃないって思ってるのに、菜々美の笑顔に弱い私はいつものように2人に付いて行くしかなかった。




 前に並んで歩く2人を一歩離れて追いかける。帰り道は地獄だ。

 楽しげに笑い合う2人を見ているだけで、激しい疎外感と焦燥感で泣きそうになる。


「ごめん! 私、用事思い出した。じゃあ、また明日ね!」


 精一杯の笑顔。2人の顔なんて見る余裕すらなく、私は踵を返すと脱兎のごとく走り去った。

 走りながら溢れ出す涙を拭う。今まで我慢していたせいだろうか、止めたくても止まらない。すれ違う人が変な目で見ているけれど、構ってられなかった。


 私はバカだ。今更、自分の気持ちに気付くなんて。


 この気持ちに今更気付いたって、もうどうしようもないのに。あの2人がくっ付いて初めて、私は自分が拓真のことを好きだってことにやっと気が付いたんだ。

 もう全てが遅いことは私が一番よく解ってる。解っているのにこの気持ちをそう易々と捨てられないのは何故だろう。

 報われないと解っていても、どうしようもないこの気持ちはいったいどこへやったらいいんだろう。


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