さよならだけは、読まない
声を失ってから、私は嘘が上手くなった。
本当は嬉しいのに、迷惑そうな顔をする。
本当は帰ってほしくないのに、もう帰ればと書く。
本当はずっと待っていたのに――。
* * *
「よっ紬! 来たぞ~!」
病室の扉を開けて、奏太がいつものように右手を上げた。
今日も学校帰りらしい。制服姿のまま、左手にはコンビニの袋。右手には重そうな学生鞄がぶら下がっていた。
私は枕元に置いていたスケッチブックを手に取り、太いペンで文字を書いた。
『今日も来たの?』
「うん、今日も来ました」
奏太は私の書いた文字を、そのまま声に出して読む。
事故で声を失ってから、それが私達の会話の仕方になった。
私が書き、奏太が読む。
私の言葉なのに、病室へ響くのは彼の声。
最初は少し変な気分だったけれど、三か月も続けば、もうすっかり慣れてしまった。
『暇人』
「だそうですが、これが日課だから。暇とかそういう区分では表せないんだなこれが」
奏太は勝手知ったる様子で椅子を引き、ベッドの横に腰掛けた。
毎日来なくてもいいのに。
学校だってあるし、友達と遊びたい日だってあるだろう。
私の見舞いになんて来ていたら、奏太の時間まで止まってしまう。
――嘘。
本当は全部、言い訳だ。
奏太が扉を開ける音を、私は朝からずっと待っている。
廊下から足音が聞こえるたびに、もしかして、と顔を上げる。
違う人だと分かるたびに、少しだけ落ち込んで。
病室のドアがノックされると、嬉しくてたまらないくせに、慌てて窓の外へ顔を向ける。
『毎日来なくてもいいよ』
書いた途端、胸がきゅっと痛くなった。
奏太は文字を見つめ、少しだけ眉を寄せる。
「毎日来なくてもいいよ?」
私の代わりに読み上げてから、彼は鞄から取り出したノートを丸め、私の額を軽く叩いた。
「俺が来たいから来てるの。紬が気にすることじゃない」
『でも』
「でも、じゃない」
『勉強は?』
「してるしてる」
『嘘』
「失礼な。これでも赤点は回避したんだぜ?」
『自慢にならないよ、ばか』
「うるさいなぁ紬は。声が出なくなっても、口の悪さは変わらないんだな」
『口じゃなくて手です』
「ハッ。屁理屈まで元気そうで安心したよ」
奏太が笑う。
その笑顔につられて、私も笑った。
声は出ない。
息が僅かに漏れるだけ。
それでも奏太は、私の笑顔を見ると嬉しそうに目を細めてくれる。
事故に遭ったのは、三か月前だった。
身体の傷は、もうほとんど治っている。
杖があれば歩くこともできるし、食事だって普通に取れる。
でも、傷ついた喉からは、今も声だけが出てこない。
医師からは、回復の可能性はあると言われている。
明日かもしれない。
一年後かもしれない。
あるいは、二度と戻らないかもしれない。
……誰にも分からない。
「今日は続き、読むか?」
奏太が鞄から小説を取り出した。
私が事故に遭う前から読んでいた、シリーズものの恋愛小説。
入院してからは、何故か奏太が毎日少しずつ読み聞かせてくれている。
『昨日、いいところで終わった』
「でしょ。続きが気になるだろ?」
『奏太、変に照れるから読むの下手』
「ほーん?? じゃあ今日は読まない」
『嘘です。読んでください』
「うむ、素直でよろしい」
奏太は得意げに笑い、本を開いた。
差してあった古びた栞を抜くと、ゆっくりと物語の続きを読み始める。
……決して上手な朗読ではない。
台詞の読み分けもできていないし、難しい漢字で時々詰まる。
それに無理に声を高くして読むせいで、ヒロインの声がガサガサしてるイメージがついてしまった。
……それでも私は、奏太の声が好きだった。
少し低くて。
照れると早口になって。
真剣になると、ほんの少しだけ掠れる声。
この声で名前を呼ばれるたび、胸の奥が温かくなる。
もし私の声が戻ったら。
一番最初に、奏太の名前を呼びたい。
そして、今まで言えなかったことを全部伝えたい。
ありがとう。
毎日来てくれて、嬉しい。
あなたの声を聞いている時間が、何より幸せ。
それから――。
「嫌だ! 俺は……って、紬? 聞いてる?」
奏太が読むのを止め、顔を覗き込んできた。
私は慌てて頷き、スケッチブックへペンを走らせる。
『聞いてる。早く続き読んで』
「んー、偉そうだなぁ」
そう言いながらも、奏太はまた本へ目を落とした。
私は彼の横顔を見つめる。
口にできない言葉を、胸の奥でもう一度だけ繰り返した。
本当はずっと、あなたが好き。
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紬は、嘘をつくのが下手だ。
『今日も来たの?』
いつもそう書くくせに、俺が病室へ入ると、ほんの少しだけ頬が緩んでいる。
『毎日来なくてもいいよ』
そう言いながら、帰る時間が近付くと、何度も時計を気にしている。
声を失ってから嘘が上手くなったと、本人は思っているのかもしれない。
でも、二歳の頃から十五年も隣にいれば、そのくらい簡単に分かる。
「――それでも彼は、泣きじゃくる彼女の手を離さなかった」
小説の一文を読み上げながら、ベッドへ目を向ける。
紬は目を閉じ、静かに俺の声を聞いていた。
でも紬は眠っているわけではない。
面白い場面では僅かに口元が緩み、悲しい場面では眉間に皺が寄る。
昔から、考えていることがすぐ顔に出る。
そんなところも、事故の前と何も変わっていなかった。
変わったのは、声だけだ。
三か月前。
病院へ駆けつけた俺が最初に見たのは、足をギブスで固定され、喉へ包帯を巻かれ、眠っている紬の姿だった。
命に別状はないと聞いて安堵したのも束の間、目を覚ました彼女は、何度口を動かしても声を出すことができなかった。
泣きながら喉を押さえる紬に、俺は何もしてやれなかった。
大丈夫だとも。
きっと治るとも。
無責任に口にすることができず、ただ手を握っていることしかできなかった。
だから、毎日ここへ来る。
同情しているからじゃない。
責任を感じているからでもない。
紬の時間が止まってしまったから、俺も一緒に立ち止まっているわけじゃない。
俺が、紬に会いたいからだ。
「紬。起きてるだろ?」
閉じていた目が、ゆっくりと開く。
紬は少し不満そうな顔をして、スケッチブックへ文字を書いた。
『寝てた』
「嘘つけ。さっき笑ってたぞ」
『寝言』
「声出てないのに?」
『心の寝言』
「何だよ、それ~」
笑いながらページをめくる。
紬が笑ってくれるなら、何時間でも本を読める。
難しい漢字で詰まって馬鹿にされても。
女の子の台詞を読むたび、気持ち悪いと笑われても。
毎日でも、何年でも。
紬が許してくれるなら、読み続けてるつもりだった。
俺は、事故に遭う前から紬が好きだった。
いつからかなんて、もう覚えていない。
朝、家を出れば当たり前のように玄関前で待っている。
登校中もくだらないことで笑い合って。
学校でも一緒に弁当を食べたりして。
いつか卒業して、二人とも大人になっても、この関係がずっと続けばいいと思っていた。
事故の前なら、いつか……彼女に好きと言えたかもしれない。
でも、今は駄目だ。
声を失い、弱っている紬へ好きだと伝えれば、彼女は断れないかもしれない。
毎日見舞いへ来る俺に、恩を感じているかもしれない。
たとえそれで頷いてくれたとしても、それが紬の本当の気持ちなのか、俺には分からないから。
だから、今は言わない。
伝えたい言葉は、小説の中の誰かに任せる。
「君がどこにいたって、僕は必ず会いに行く」
主人公の台詞を読み上げる。
自分で選んだ本なのに、口にした途端、恥ずかしくなった。
恐る恐る紬を見ると、彼女は窓の外へ顔を向けている。
見れば耳だけが、僅かに赤くなっていた。
「……何だよ」
紬は窓の外へ顔を向けたまま、スケッチブックへとペンを走らせる。
『早く続きを読んで』
「はいはい」
再び本へ目を落とす。
ページに並んでいるのは、誰かが書いた言葉だ。
物語の台詞なら、どんなに恥ずかしいことでも口にできる。
好きだとも。
そばにいたいとも。
君を一人にしないとも。
なのに、自分自身の言葉になると、何一つ伝えられない。
俺は声を失った紬の代わりに、彼女の書いた言葉を読み続けている。
――本当は、ずっと聞きたい言葉があった。
もう一度、紬の声で……俺の名前を呼んでほしい。
ただ、それだけだった。
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退院が決まった。
医師からそう告げられたのは、奏太が帰ったあとのことだった。
身体の傷はもう問題ない。
声については、これからもリハビリを続けていく必要がある。
退院後は、専門の施設がある遠くの町へ移り、しばらく祖母の家で暮らすことになった。
いつか声が戻るかもしれない。
戻らないかもしれない。
何一つ分からないまま、それでも病室を出る日はやってくる。
私は枕元のスケッチブックを開いた。
奏太と交わした、たくさんの言葉。
『暇人』
『読むの下手』
『早く続き読んで』
どれも素直じゃなくて、可愛げがなくて。
本当に伝えたかった気持ちは、一つも書けていなかった。
『ありがとう』
『毎日来てくれて、嬉しかった』
『あなたの声に、何度も救われた』
『本当は、ずっと好きだった』
でも、その気持ちを伝えてはいけない。
奏太には、奏太の未来がある。
学校があって、友達がいて、きっとやりたいことだってある。
これから先も、私が傍にいてと願えば、彼はきっと変わらず微笑みかけてくれるだろう。
たとえ、このまま私が声を出せなくても。
遠くへ引っ越しても。
困った顔をしながら、会いに来てくれるだろう。
……だからこそ、怖かった。
私の時間が止まったせいで、奏太の時間まで止めてしまうことが。
* * *
退院前日。
奏太は、何も知らずにいつもの時間へ病室にやってきた。
「よっ。明日、退院なんだってな」
私は驚いて顔を上げた。
「おばさんから聞いた。何で俺には教えないんだよ」
『言うの忘れてた』
「嘘つけ」
奏太は不満そうに言いながらも、どこか嬉しそうだった。
「まあ、よかったじゃん。やっと病院食ともお別れだな」
『結構おいしいよ』
「毎日食べてるから味覚がおかしくなったんじゃないか? 俺なら三日で無理だわ」
『失礼』
「ははっ。退院したら、駅前の店行こうぜ。紬が好きだったパンケーキ、まだあるらしいぞ」
ズキリと胸が痛んだ。
私は明日、この町を離れる。
奏太とパンケーキを食べに行く日は、きっと来ない。
『奏太は行きたい大学、決まった?』
「何だよ、急に」
『いいから』
「一応。県外だけどな。受かるか分からないし、まだ誰にも言ってない」
照れくさそうに笑う奏太を見て、胸の奥が冷たくなる。
やっぱり、彼には彼の未来がある。
私がつなぎ止めてはいけない未来が。
『絶対受かるよ』
「珍しく素直だな。熱でもある?」
『うるさい』
「はいはい。今日は続き読むか?」
奏太が椅子へ座り、いつもの小説を開いた。
物語も、もう終わりに近付いていた。
離ればなれになった二人が、長い時間を越えて再会する場面。
奏太の声が、静かな病室に響く。
「――もう二度と、君を一人にはしない」
やめて。
そんな声で、そんな言葉を読まないで。
このままでは、離れたくないと言ってしまう。
あなたの未来を奪ってでも、そばにいてほしいと願ってしまう。
「紬?」
滲んだ視界を隠すように、俯いてスケッチブックを開いた。
『今日は、ここまででいい』
「まだ時間あるぞ」
『疲れた』
「……そうか」
奏太は本を閉じた。
帰り支度をする彼の横顔を見つめながら、私はスケッチブックの最後のページを開く。
昨夜、何度も書き直した言葉。
これを渡せば、奏太はもう来なくなる。
私を待たずに、自分の未来へ進める。
それでいい。
その方がいい。
「じゃあ、また明日な」
立ち上がった奏太の制服の裾を、私は反射的につかんだ。
「どうした?」
「——っ」
行かないで。
明日も来て。
私を置いていかないで。
喉の奥で、声にならない言葉が震える。
漏れ出すのは、いつもと変わらない掠れた吐息だけ。
私はゆっくりと手を離し、代わりにスケッチブックを差し出した。
奏太は不思議そうな顔をしながら、それを受け取る。
開かれたページには、三つの言葉が並んでいた。
『今までありがとう』
『もう来なくていいよ』
『さようなら』
* * *
「今までありがとう」
奏太は、いつものように私の書いた言葉を読み上げた。
……でも、その声は少しだけ震えていた。
「もう来なくていいよ」
そこで言葉が止まる。
奏太は最後の一行を見つめたまま、動かなかった。
『さようなら』
読んで。
いつもみたいに、私の代わりに。
その言葉を声にして。
そして、私の前からいなくなって。
「……わりぃ」
奏太はスケッチブックを閉じた。
「これは読まない」
私は慌ててスケッチブックを取り返し、新しいページを開いた。
『どうして?』
「どうしても」
『いつも読んでくれるじゃん』
「ほかの言葉なら、何度でも読んでやる」
奏太は私の手からペンを取り上げ、真っすぐに私を見つめた。
「ありがとうも、おはようも、おやすみも。紬が言えないなら、俺が代わりに何度でも言う」
握り締めたペンが、小さく震えている。
「でも、別れの言葉だけは絶対に読まない」
――どうして。
どうして、そんなことを言うの。
決心が揺らいでしまう。
この人を手放せなくなってしまう。
「明日、どこへ行くんだよ」
私は視線を逸らした。
「退院したら、祖母さんのところへ行くんだろ。おばさんから聞いた」
知られていた。
それでも私は答えず、俯いた。
「俺に何も言わずに行くつもりだったのか?」
『言ったら、来るでしょ』
「ああ、行くよ」
『遠いよ』
「ああ、知ってる」
『学校もある』
「休みの日に行く」
『大学受験だってある』
「勉強なら電車でもできる」
『そんなの駄目』
「何が駄目なんだよ」
『私のせいで、奏太の時間まで止まっちゃう』
奏太の表情が歪んだ。
「勝手に決めるなよ」
『でも』
「俺の時間は止まってない」
『毎日ここに来てる』
「俺が来たいから来てるんだ」
『優しいからでしょ』
「違う」
『私が可哀想だから』
「っ……違う!」
病室に、奏太の声が響いた。
驚いて顔を上げると、彼は苦しそうに唇を噛んでいた。
「同情だけで、毎日来られるわけないだろ」
奏太は一度大きく息を吐き、握っていたペンをベッドの上へ置いた。
「俺が紬のそばにいたいんだ」
胸の奥が、大きく揺れた。
「事故に遭ったからじゃない。声が出なくなったからでもない」
やめて。
それ以上、言わないで。
期待してしまうから。
「俺は、事故の前からずっと――」
奏太の目が、私だけを見つめていた。
「紬が好きだった」
聞き間違えるはずのない言葉だった。
それなのに、意味を理解するまでに時間がかかった。
奏太が……私を、好き。
『嘘』
「いや、こんな時に嘘つくかよ」
『だって、一度も言ってくれなかった』
「……言えなかったんだよ」
『どうして?』
「今告白したら、弱ってる紬につけ込むみたいだろ」
奏太は困ったように笑った。
「毎日見舞いに来てる俺に恩を感じて、断れないかもしれない。頷いてくれても、それが紬の本当の気持ちなのか分からない」
『馬鹿』
「……うん」
『大馬鹿』
「……否定できない」
涙が頬を伝った。
私も同じだった。
ずっと好きだったのに。
相手のためだと言い訳をして、自分の気持ちから逃げようとしていた。
『声が戻らないかもしれないよ』
「うん」
『一生、こうやって書かないと話せないかもしれない』
「その時は、俺が読む」
『ずっと?』
「うん、ずっと」
奏太は迷うことなく答え、閉じられたスケッチブックへ手を置く。
「戻らなくたって、俺は紬の隣にいたい」
その言葉を聞いた瞬間、堪えていた涙が溢れ出した。
奏太の手が、私の頬を流れる涙を拭う。
「紬だから、好きなんだ」
――伝えたい。
私も好きだと。
ずっとあなたを待っていたと。
文字ではなく、私自身の声で。
喉に手を当て、大きく息を吸い込む。
「無理するな」
奏太が止めるように手を伸ばすも、私は首を振った。
「書けばいい。ちゃんと読むから」
——それでは駄目。
この言葉だけは、あなたの声を借りたくない。
私の言葉で。
私の声で、伝えたい。
何度も息を吐く。
喉の奥が痛い。
空気だけが漏れ、音にならない。
「紬、もういい」
よくない。
もう逃げたくない。
もう一度、息を吸う。
震える唇を、ゆっくりと動かした。
「……そ……う、た」
掠れた、小さな声。
声と呼ぶには、あまりにも頼りない音だった。
それでも奏太は、目を見開いた。
「……紬?」
もう一度。
彼へ届けるために。
「……奏……太」
奏太の顔が、泣きそうに歪んだ。
「うん」
私の手を、両手で強く握る。
「……聞こえた」
泣きながら、それでも嬉しそうに笑った。
「ちゃんと、聞こえたよ!」
伝えたかった言葉は、まだたくさんある。
ありがとう。
そばにいてほしい。
私もずっと、あなたが好き。
けれど今は、彼の名前を呼べただけで十分だった。
「もう一回、呼んで」
奏太が涙を拭いながら言う。
「……奏太」
「……もう一回」
「……奏太」
「……うん!」
握られた手を、今度は私から強く握り返した。
声にできなかった「私も」という答えまで、きっと彼には伝わっていた。
私の代わりに言葉を読んでくれていた彼が。
今度は、私の声へ返事をしてくれる。
何度も。何度でも。
これから先も、ずっと。
———————————————————————————————————
あの日から、私の声は少しずつ戻っていった。
昔とまったく同じ声にはならなかった。
今も少し掠れていて、長く話すと疲れてしまう。
それでも奏太は、この声が世界で一番好きだと言ってくれる。
――そして、数年後。
白いドレスを身にまとった私は、大切な人の隣に立っていた。
あの日、初めて彼の名前を呼んだ私の声は、掠れて、震えて、決して綺麗なものではなかった。
――それでも俺にとっては、どんな音楽よりも美しい声だった。
今日、私はこの声で、彼と生きていく未来を誓う。
――今日、俺は彼女の言葉に、これからの人生をかけて返事をする。
「これからは、何度でもあなたの名前を呼ぶね」
「じゃあ俺も、何度でも返事をするよ」
声にならなかった想いも。
言葉にできなかった日々も。
もう、二人を隔てるものではない。
「奏太」
「紬」
「「――愛してる」」




