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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第1章:ゴミ溜めからの再建計画(ターンアラウンド) ~「死神」コンサルタントは、数字で悪徳貴族を黙らせる~
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第6話:暴力よりも強い「情報」

ギルド内は殺気立っていた。


 酒臭い息を吐く荒くれ者たちが、10人ほどで俺を取り囲んでいる。


「へへっ、貴族のボンボンが……泣いて詫びても遅ぇぞ!」


 先頭の男が、大振りの右フックを繰り出してくる。


 普通の人間なら、恐怖で足がすくむ場面だろう。  だが、俺の視界には「未来」が見えていた。


(……右斜め45度。速度、遅い。重心がブレている)


 スキル【国家盤面】の応用だ。


 本来は国や組織の動向を読むための演算能力を、個人の肉体動作モーションに適用する。  すると、敵の攻撃軌道が、赤いラインとなって視界にハッキリと浮かび上がるのだ。


「――遅い」


 俺は半歩だけ左に動く。  男の拳が、俺の鼻先数センチを空しく切り裂いた。


「あ?」


 男が目を見開いた瞬間、俺はカウンターでそのチンを掌底で打ち抜いた。  脳を揺らされた男は、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。


「なっ……!?」


「やっちまえ!」


 残りの連中が一斉に襲いかかってくる。  だが、結果は同じだ。


 俺は最小限の動きで攻撃を躱し、足をかけて転ばせ、同士討ちを誘発させる。


 力任せに振るうだけの暴力など、俺の計算の前ではただの「エネルギーの浪費ロス」でしかない。


「ぐあぁっ!」


「な、なんだコイツ……攻撃が当たらねぇ!?」


 数分後。  床には、呻き声を上げる男たちの山ができていた。


 俺は服の埃を払い、涼しい顔で彼らを見下ろす。


「終わりか? あくびが出るな」


 後ろで見ていたボブとサラが、呆気に取られた顔をしている。  特にサラは、いつもの無関心な瞳に、微かな驚きの色を浮かべていた。


 その時だ。


 ――ドォォォォン!!


 奥の扉が蹴破られ、ギルド全体が揺れるほどの轟音が響いた。


「――俺の庭で暴れてる馬鹿は、どこのどいつだぁぁぁ!!」


 現れたのは、岩のような筋肉の塊だった。


 身長は低いが、横幅は俺の倍はある。立派な髭を蓄えたドワーフの男。  このギルドのマスター、ガントだ。


 彼が放つプレッシャー(威圧感)は、さっきのチンピラたちとは次元が違う。  肌がピリピリと痛むほどの覇気。


「……ふん。お前か、騒ぎの元凶は」


 ガントが俺を睨みつける。  俺は冷や汗を一滴だけ流したが、表情には出さずに言い返した。


「暴れているわけではない。君の部下が『業務放棄』をしていたので、代わりに指導していただけだ」


「ほう……? 俺に口答えするとは、いい度胸だ」


 ガントはニヤリと笑い、俺の胸ぐらを掴もうとした――が、寸前で止めた。  俺の目が、一歩も引いていなかったからだ。


「……気に入った。話を聞いてやる。ついて来い」


          ◇


 ギルドマスター室。


 俺は、懐から羊皮紙(事前にまとめておいたデータ)を取り出し、机に叩きつけた。


「死亡率40%。赤字垂れ流し。……これが君の経営する組織の通信簿だ、ガント」


 俺の言葉に、ガントが眉をひそめる。  だが、数字は事実だ。反論はさせない。


「俺なら死者をゼロにし、利益を10倍にできる。……3日だ」


「あぁ?」


「3日以内に、以下の改革を実行しろ。できなければ、俺はこの街のギルド運営権を剥奪し、新しい組織を作る」


 俺は3つの条件を突きつけた。


1.情報のリアルタイム共有  裏方スタッフを2〜3名増員し、巨大な地図マップを作成する。  冒険者からの報告を即座に地図上の「駒」として配置し、常に「誰がどこにいて、どこに魔物がいるか」を可視化すること。


2.パーティ編成の規制  Cランク以下の少人数パーティを禁止。最低5名、かつヒーラーの同行を義務付ける。


3.環境の浄化  昼間の飲酒禁止。清掃の徹底。不衛生な環境は思考力を鈍らせる。


「……面倒くせぇな。うちは荒くれ者の集まりだぞ? そんな管理ができるかよ」


 ガントが渋い顔をする。  だが、俺は畳み掛けた。


「管理しなければ死ぬだけだ。……現に、新しいダンジョンで死人が出ているんだろう?」


 その言葉に、ガントが押し黙った。  図星だ。


「……ああ、そうだ。近くの古代遺跡から、地下ダンジョンが見つかった。だが、中身はアンデッドの巣窟だ。スケルトンにゾンビ……物理攻撃が効きにくい上に、数が多すぎる」


 ガントが地図を広げる。  そこには、地下深層に眠る資源――**「ミスリル鉱脈」**の反応が記されていた。


(ミスリル……! 金貨にして数百枚、いや、加工すればそれ以上の価値になる)


 喉から手が出るほど欲しい資源だ。これを確保できれば、街の財政を一気に立て直せる。


「だが、攻略が進まねぇ。狭い通路に敵が密集してやがる」


「なら、どう攻める?」


 俺が問うと、ガントが腕を組んで唸った。


「火魔法使いを集めて、一気に焼き払うか……」


「却下だ」


 俺は即答した。


「地下の狭い空間で大規模な火魔法を使えば、酸素が一瞬で尽きる。敵を倒す前に、味方が酸欠で全滅するぞ」


「む……」


「なら、重装歩兵で押し込むか?」


 横にいたボブが口を挟む。


「それもダメだ。通路が狭すぎる。大盾を持った兵が詰まったら、後ろがつかえて身動きが取れなくなる。そこを魔法で狙われたら終わりだ」


 手詰まりだ。  ガントもボブも、力技パワープレイしか頭にない。


 俺がため息をつこうとした、その時だった。


「……無駄です。その地形なら、押し込むのではなく『誘い込む』べきです」


 凛とした声が響いた。  発言したのは、それまで空気のように黙っていた魔術師のサラだ。


「誘い込む?」


「はい。この地図を見る限り、入り口を入ってすぐに大きな広間ホールがあり、その奥に敵が出てくる狭い通路があります」


 サラは地図の上を指でなぞった。


「こちらから通路に入るのは愚策です。……広間で大きな音を立て、魔力を放出して、通路の奥にいるアンデッドを広間側へおびき寄せるのです」


 彼女の指が、広間と通路の接続点で止まる。


「敵が通路から顔を出した瞬間、そこを『キルゾーン(殺傷地帯)』として、待ち構えていた魔法部隊で一斉射撃します。狭い出口なら、敵は横に広がれません。必ず一塊になりますから」


「だが、魔法使いの魔力が尽きたらどうする?」


「前衛を3交代制にします。魔法の合間に、漏れてきた敵を前衛が処理する。その間に魔法使いもローテーションする。……これを繰り返せば、永久機関のように敵を狩り続けられます」


 室内が静まり返った。


 完璧な理論。  冒険者の喧嘩殺法ではない。軍隊の「陣地防衛戦術」そのものだ。


「……ほう」


 俺はサラを見た。


「どこでその戦術を学んだ?」


「……実家が、没落した軍人の家系でしたから。小さい頃から、絵本の代わりに戦術書を読んでいました。……冒険者稼業には、何の役にも立ちませんけど」


 サラは自嘲気味に笑った。  彼女はずっと、自分の才能を持て余していたのだ。力任せの冒険者パーティの中で、誰にも理解されずに。


(見つけたぞ。ダイヤの原石だ)


 俺はニヤリと笑った。


「役に立つさ。大いにな」


「え?」


「サラ。君の居場所は、冒険者の後ろじゃない。……俺の隣だ」


 俺は彼女の手を取り、力強く告げた。


「君を、この攻略作戦の『共同指揮官コマンダー』に任命する。俺と一緒に、冒険者たちを指揮しろ」


「し、指揮官!? 私が!?」


「ああ。君の脳みそ(リソース)を俺に貸せ。……俺たちで、このダンジョンを『攻略クリア』するぞ」


 サラは驚きに目を見開き、やがて――その瞳に、初めて強い光が宿った。


「……悪い条件じゃなさそうね。やってみるわ」


 交渉成立だ。  俺はガントたちに向き直り、高らかに宣言した。


「総員に通達! これより『ダンジョン攻略作戦』を開始する。死にたくなければ、俺たちの指示オーダーに従え!」

読んでいただきありがとうございます!


暴力フィジカルもいけるコンサルタント、ルイ。 そして埋もれていた軍師、サラ。


脳筋だらけのギルドで、ようやく話の通じる仲間が見つかりました。 ここからルイとサラの「組織改革」が始まります。


もし「サラ有能!」「ざまぁ展開スカッとした!」と思っていただけましたら、 ページ下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします! (ブックマークもぜひお願いします!)


▼次回予告 第7話『戦場ダンジョンのオペレーション』 ルイとサラによる「ギルド大改革」が始動。 シフト制、無線指揮、キルゾーン戦術……。 無法地帯だったダンジョンが、整然とした「職場」へと変わっていく様を描きます。


次回も【明日18時】に更新します!


【豆知識】


■冒険者のランク制度について この世界では、冒険者の実力を以下の7段階で格付けしています。


【Sランク】(規格外) 単騎で「軍隊」に匹敵する英雄級。ドラゴンや魔王軍幹部と渡り合える化け物たち。国内に数名しかいない。


【Aランク】(超一流) 国の騎士団長クラス。高位の魔法や武技を使いこなす。


【Bランク】(一流) ベテランの域。ここから依頼報酬だけで贅沢な暮らしができるようになる。


【Cランク】(一人前〜中堅の壁) ※ここが最大の壁。 モンスターが「魔法」や「特殊能力」を使い始めるライン。単独での討伐は困難になり、パーティ連携が必須となる。多くの冒険者がここで挫折するか、命を落とす。 (今回話題に出たグレイトグリズリーはこのランク帯)


【Dランク】(駆け出し〜一般) ゴブリンやオークなど、一般的な魔物を狩る層。ルイの身体能力(Lv.26)は現在このあたりの上位に相当する。


【Eランク】(見習い) 登録したての新人。薬草採取やドブさらいが主な仕事。


【Fランク】(雑用) 戦闘能力のない者や、街中での雑用専門。

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