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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第2章:歪んだ成長と、見えざる檻 ~産業革命の光と影、そして世界の違和感~

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第15話:暗殺者の尋問とサラの奥の手

 屋敷の地下。冷たい石壁に囲まれた倉庫の一角で、その男は鎖に繋がれていた。  サーシャが捕らえた暗殺者のリーダー、竜人ドラゴニュートだ。

 俺はマティアス、そしてサーシャと共に彼を見下ろしていた。

「……誰に雇われた?」

 マティアスの低い声が響く。彼は尋問の心得もある。  だが、竜人は鼻で笑うだけだ。

「話すかよ、人間風情が」

「……なぜルイ様を殺そうとした?」

「知らん。仕事だ」

「お前は誰だ? どこの所属だ?」

「…………」

 黙秘。  頑丈な鱗に覆われた皮膚は、拷問すら跳ね返す強度がある。  俺はため息をつき、【国家盤面】を展開した。

 【個体解析】  

名前: ガオリン  

種族: 竜人族  

年齢: 85歳  

LV: 110  

スキル: 剛力、皮膚硬化、念話  

所属: 不明 ※解析不能

(……レベル110だと?)

 俺は戦慄した。  俺の倍近いレベルだ。それを無傷で捕獲し、片腕をへし折ったサーシャは一体何者なんだ?  恐る恐るサーシャを見るが、彼女は能面のような顔で立っている。彼女のステータスはいまだに「解析不能」だ。

「……ルイ様。拷問の許可を。指を一本ずつ潰せば口を割るかと」

 マティアスが平然と提案する。  俺は迷った。現代の倫理観が邪魔をする。だが、サラは殺されかけたのだ。

「……いや、待て」

 俺が躊躇していると、ガオリンが喉の奥で笑った。

「ハハッ……お坊ちゃんが、とんでもねえ事に巻き込まれてるみてえだな」

「なんだと?」

「若いとは聞いていたが、こんな黒髪のガキだったとはな。……いいか小僧。これはお前だけの話じゃねえんだよ」

 ガオリンの瞳が、縦に細まった。  そこには、サクレアの貴族に使われるだけの傭兵とは違う、明確な「意志」があった。

「お前たちが余計なことをするからだ。……この国の『終わり』は近いぜ」

「……国が、だと? お前たちの雇い主は、バールをどうするつもりだ?」

「ハハッ! バールだけ? めでたい頭だ。奴らの狙いは、この王国の根幹そのもの——ぐ、あ!?」

 突然、ガオリンの言葉が止まった。  全身が痙攣し、口から白い泡が溢れ出す。

「ガ、ア……アガッ……!!」

「おい! どうした!?」

 俺が駆け寄ろうとすると、マティアスが制した。  ガオリンの目が白黒と反転し、ドサリと崩れ落ちる。

「……死んでいます」

 マティアスが首の脈を確認し、悔しそうに首を振った。

「『機密保持の呪い』……特定のキーワードを話そうとすると発動する、遅効性の毒魔法です。蘇生は不可能です」

「……くそッ!」

 俺は壁を殴った。  「国の終わり」。ただの貴族の反乱にしては規模が大きすぎる。  しかも、竜人は希少種族だ。そんな彼らを捨て駒にできる組織とは何なのか。  謎は深まるばかりだった。

          ◇

 その後、俺は直ちに局長会議を招集した。  議題は「セキュリティレベルの引き上げ」と「経済への影響緩和」だ。

 円卓にはマティアス、モネ、ヴェスタ、そして包帯姿のサラが座っている。  空席は一つ。外交担当のバロンだけが呼ばれていない。

「単刀直入に言う。バールの防衛体制を抜本的に改革する」

 俺は地図を広げた。

「まず、検問の厳格化だ。  これまでは身分証があれば通していたが、今後は『王都政府発行』もしくは『冒険者ギルドカード』のみを有効とする。  それを持たない者は、別室で尋問し、身元保証人が取れるまで入国させない」

「……ルイ。それは商業的には自殺行為よ」

 経済局長のモネが眉をひそめた。

「行商人の多くは、正式な身分証なんて持ってないわ。それを弾けば、物流が止まる」

「分かっている。だから『ゾーニング(区画分け)』を行う」

 俺は地図の東側、ラナ川沿いのエリアを指差した。

「この港湾エリアと倉庫街の一部を、検問不要の『自由貿易区フリーゾーン』に指定する。  ここだけは、今まで通り誰でも入れるようにし、商売を許可する。ただし、居住区や工場区への立ち入りは物理的に遮断する」

「なるほど。毒と薬を分けるわけね」

 モネが頷いた。

「なら、そのフリーゾーンの商業税を引き下げましょう。行商人への『通行税』も撤廃するわ。  『検問は厳しいが、入れば儲かる』という餌があれば、商人は逃げない」

「……いい案だ。採用しよう」

「サーシャ、検問の人員は確保できるか?」

「はい。専門の検査官を募集します。……不正がないよう、私の配下で監視します。しかし、検査官の他に兵士も必要です。力で押し通す人もいる可能性もあるので」

「そうだな。兵士の確保は難しい、冒険者ギルドで依頼するのはセキュリティー的にも良くない。検討する。  ヴェスタ、壁の設計だ。フリーゾーンと居住区を隔てる壁を、早急に作れ」

「了解です。……港、北、南、東。ゲートを4箇所に絞って、動線を管理します」

 矢継ぎ早に指示を飛ばす。  だが、最大の問題は「武力」だ。

「……サラ。体は大丈夫か?」

 包帯だらけのサラに水を向けると、彼女は不敵に笑った。

「平気よ。それより、みんなに報告があるの」

 彼女は一枚の書類をテーブルに滑らせた。

「数ヶ月前から、軍の準備を進めていたわ」

「ああ、冒険者ギルドとかよく回ってたな」

「ええ。冒険者ギルドからの引き抜き、訓練場の整備、そして武器の製造ラインの確保。  すべて水面下で終わらせてある」

 サラは事もなげに言った。

「現在、契約済みの兵士候補が500名。  彼らはまだ雇用していないけど、私が号令をかければ、明日からでも武装して配置につけるわ」

「500人!? いつの間に……給与はどうするんだ?」

「契約は『有事の際のみ招集』という予備役契約よ。平時は冒険者や労働者として働いてもらい、招集時だけ給料を払う。  これなら財政を圧迫しないでしょ?」

 俺は絶句した。  それはまさに、現代の「予備自衛官」や「ジャスト・イン・タイム」の思想だ。  彼女はただの剣士ではない。軍事システムの構築者アーキテクトだ。

「……優秀すぎるな」

「ふふん。私だって、ルイの背中を見て勉強してるのよ。……とりあえず、彼らを検問の警備に回すわ」

「頼む。……ありがとう、サラ」

「礼には及ばないわ。……私の命を拾ってくれた借りは、仕事で返すだけよ」

 彼女は純粋な笑顔を見せた。普段はクールな彼女とのギャップが大きい。

          ◇

 会議の最後。  俺は声を潜め、全員を見渡した。

「……最後に。『スパイ』についてだ」

 部屋の空気が凍りついた。

「今回の暗殺は内部の情報が漏れている」

 皆、認めたくないこの事実に沈黙する。

「それが誰かはわからない。だが、必ず洗い出して見せる。皆の協力をお願いしたい。」

すると皆頷いた。

 バールを守るためなら、身内をも疑う。  それが、領主としての俺の覚悟だった。


お読みいただきありがとうございます!


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▼次回予告 第2章 第16話  


次回も【明日19時】に更新します!

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