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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第2章:歪んだ成長と、見えざる檻 ~産業革命の光と影、そして世界の違和感~

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第3話:物理無効なら、科学(ルール)で殴れ。――数千度の温度差攻撃

 轟音と共に、エネルギー弾が放たれた。


「散開ッ!!」


 サラの絶叫で全員が左右に飛ぶ。  直後、俺たちがいた場所が爆発し、コンクリートの地面が抉り取られた。

「……冗談だろ」

 俺は土煙の中で【国家盤面ステータス】を凝視した。  先ほどの十数秒で、詳細な解析が完了していた。


【敵性体解析完了】

個体名: 拠点防衛用自律フレーム(形式番号:SG-09)

推定脅威レベル: 200〜400(Aランク冒険者2パーティ分に相当)

装甲値(物理): 9,999(測定不能・貫通不可)

エネルギー源: 魔力変換炉(稼働効率98%・外部魔力吸収機能あり)

状態: 経年劣化により「論理回路」破損。無差別排除モード。



「……物理無効に、魔力吸収だと?」

 絶望的なスペックだ。  だが、まだみんなはそれを知らない。

「食らえぇっ! 【火球ファイヤーボール】ッ!!」

 カタリーナが杖を振り、巨大な火の玉を放った。  直撃。炎が黒い巨体を包む。

 だが——

 ブォンッ!

 炎は瞬く間に装甲に吸い込まれ、逆にガーディアンの赤い瞳が、より強く輝いた。

「なっ!? 魔力が吸われただべ!?」

「魔法を使うな! 奴は魔力をエネルギーに変える!」

 俺が叫ぶのと同時に、ガーディアンが加速した。  速い。巨体に似合わぬ敏捷性だ。

「くっ、なら物理で! ユウマ、合わせろ!」

「応ッ!」

 護衛長のダンルイとユウマが左右から斬りかかる。  LV100近い剣士たちの、ミスリルをも断つ渾身の一撃。

 ガギィンッ!!

 嫌な金属音が響き、二人の剣が弾かれた。  傷一つついていない。

「馬鹿な……手応えがまるで岩だぞ!?」

 ガーディアンの裏拳がダンルイを襲う。  ダンルイは大剣を盾にするが、その重さに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「ダンルイ!?」

「……ぐぅ、なんて馬鹿力だ……!」

 サラが舌打ちをして前に出るが、彼女の攻撃も通じない。  最強の矛も、最強の盾も通用しない。

(……くそっ)

 俺は歯を食いしばった。  何もできない。  魔法を撃てば敵を回復させる。剣で挑めば弾かれる。

(……サーシャがいれば)

 いつもなら、サーシャが時間を稼いでくれた。  彼女なら、あの攻撃を躱し続けられたかもしれない。  だが、今はいない。

 俺が弱いから。  俺が守られるだけの存在だから、みんなが危険に晒されている。

「……危ないッ!!」

 ガーディアンの砲口が、体勢を崩したユウマに向けられた。  このままじゃ、死ぬ。  俺のせいで、誰かが死ぬ。

(……嫌だ)

 ミカの顔が過る。  もう、誰も死なせたくない。

(……考えろ!)

 俺は頭を叩いた。  力じゃない。魔法じゃない。俺にあるのは何だ?

 ——前世の知識だ。

 俺は周囲を見た。  遥か下に流れる、赤いマグマ。  そして、俺たちの手元にある「水魔法」。  敵は、超硬度の金属装甲。

 一つの「現象」が脳裏に閃く。

「……いけるか?」

 俺は叫んだ。

「全員、あいつを崖際(マグマ側)へ誘導しろ!」

「はあ!? 落ちたら終わりだよ!」

 サラが叫び返す。

「いいからやれ! 奴の装甲を砕く方法は一つしかない!  **『急冷による金属疲労ヒート・ショック』**だ!!」

「……何だそれは!?」

「焼き入れの逆だ! 熱して急に冷やせば、どんな硬い金属も割れる!」

「……なるほどな!」

 サラがニヤリと笑った。

「トム! 石礫でヘイトを買え! ダンルイ、押すぞ!」

 全員が動き出す。  シーフのトムが素早い動きで撹乱し、ガーディアンを崖際へと誘う。  あと少し。あと一歩で、足場が崩れる位置だ。

 だが、ガーディアンも学習している。  崖の手前で踏みとどまり、遠距離砲撃の構えを取った。

「……しまっ……!」

 近づけない。  今のメンバーには、あいつの重量を無理やり押し込むだけの火力がない。

(……俺がやるしかない)

 俺は魔力を練り上げた。  だが、俺の魔力量は凡人並みだ。  巨大なゴーレムを吹き飛ばすような岩塊を作る魔力はない。

(……思い出せ、土質力学!)

 土は、水を含ませることで密度と重量が変わる。  ただの土じゃない。  「最適含水比」。  土の粒子が最も密になり、強度が最大になる水分量。  コンクリート並みの硬度と重量を持つ「泥の砲弾」を作る!

 ルロイの教えと、前世の物理知識をリンクさせる。  水分量は15%……圧縮率は最大……!

「……計算完了」

 俺は両手を突き出した。

「【超硬質泥弾ヘビー・マッド・キャノン】ッ!!」

 俺の掌から、黒光りする巨大な泥の球体が射出された。  魔力消費は最小限。だが、その質量は岩をも砕く。

 ズドォォォォォンッ!!

 泥弾がガーディアンの胸部に直撃した。  想定外の「物理衝撃」に、巨体がグラつく。

「……落ちろオオォォォッ!!」

 さらに足元の地面が、衝撃で崩壊した。  ガーディアンはバランスを崩し——

 ズブオォォォォッ!!

 真っ赤なマグマの中へと落下した。

「……やったか!?」

 ダンルイが身を乗り出す。  だが、ガーディアンは沈んでいなかった。  魔力障壁を展開し、マグマの中を歩いて岸へ登ろうとしている。

「……しぶとい!」

「いや、これでいい!」

 俺は叫んだ。  ガーディアンの黒い装甲が、マグマの熱で赤熱し、湯気を上げている。  オーバーヒート寸前だ。

「今だ! カタリーナ、ルンダ、ラリ! ありったけの水魔法をぶち込め!!」

「了解だべ!!」

 三人の魔術師と俺が、同時に魔法を放つ。

「【激流ハイドロ・ストリーム】ッ!!」

 大量の冷水が、赤熱したガーディアンに直撃した。

 ジュウウウウウウウウウッ!!

 凄まじい水蒸気が爆発する。  数千度の温度差。  膨張していた金属が、一瞬で収縮する。  物理法則ルールは、古代兵器にも平等だ。


数十メートル上にいる俺たちにも暑い熱気が打ち付けてくる。熱い。


 パキッ、ピキキキキキッ……!

 硬質な音が響き渡る。  「物理無効」を誇った装甲に、無数の亀裂が走った。  そして——

 ガシャアアアアンッ!!

 胸部の装甲が砕け散り、内部が露出した。  奥で輝く、巨大な水晶体。

「トム! コアだ!!」

 俺は叫んだ。

「へいッ!!」

 シーフのトムが影のように走った。  水蒸気の中を突き抜け、砕けた装甲の隙間に侵入する。  彼は盗賊ツールを素早く操り、配線を切断した。

「……いただき!」

 トムがコアを引き抜く。  次の瞬間、ガーディアンの赤い瞳から光が消えた。

 ズゥゥゥゥゥン……

 巨体はその場に崩れ落ち、動かなくなった。


          ◇


 静寂が戻った廃墟で、トムが戻ってきた。  その手には、バスケットボールほどの大きさの水晶が抱えられている。


「……ルイ様。へへ、いい仕事できましたぜ」


 俺はそれを受け取った。  【国家盤面】が震えるほどの高エネルギー反応を示している。


「……すごいな」


 俺は息を吐いた。


「周辺の魔力や、受けた攻撃をエネルギーに変換する『永久機関』に近いコアだ。……こいつも持って帰ろう」


 製鉄炉の設計図。  そして、魔力変換コア。  バールは今日、100年分の技術を手に入れた。


「……流石だわ、ルイ」


 サラが肩を叩いてきた。


「熱して冷やすなんて発想、普通の剣士や魔術師じゃ出てこないよ。……あんたの指示がなきゃ全滅してた」


「いや……」


 俺は首を振った。


「みんなのおかげだ。ダンルイたちの足止めがなきゃ死んでたし、トムがいなきゃトドメは刺せなかった」


 俺は全員を見渡した。

「……サラが集めた『新生護衛チーム』は優秀だよ。ありがとう」

「……へへ、領主様に礼を言われるなんて、長生きはするもんですな」

 ダンルイが兜を脱いで、汗を拭いながら笑った。  全員が、誇らしげな顔をしている。

「よし、長居は無用だ。脱出ルートを探して、ここを出るぞ!」

「応ッ!!」

 俺たちは歩き出した。  古代遺跡の闇を抜けて、光ある地上へと。  その背嚢リュックには、国を変える「未来」を詰め込んで。


お読みいただきありがとうございます!


物理無効の敵を、科学知識(熱衝撃)と土木知識(最適含水比)で撃破! これぞ「異世界コンサル」ルイの真骨頂です。 サーシャの有能ぶりと、チームの絆も深まりました。


手に入れた「製鉄炉の設計図」と「魔力変換コア」。 これでバールの産業革命は止まりません。 しかし、地上に戻ったルイたちを待っていたのは……?



「戦闘シーン熱かった!」「知識チート最高!」と思っていただけましたら、 ページ下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れて応援していただけると嬉しいです!


▼次回予告 第2章 第4話

古代遺跡から生還したルイたち。

だが次に待っていた敵は――魔物ではない。


向かう先は第二都市ヴァルザーク。

そこにあったのは、美しい街並みと、崩壊寸前の財政。


使途不明の金。

機能しないインフラ。

そして――私財を削って民を救う、善人すぎる領主代行。


理想で街を守る少女と、

現実で国を変えようとする少年。


ぶつかるのは剣ではなく、

「統治の在り方」。


次回、

優しさでは国は救えない――その証明が始まる。


次回【本日19時】と【本日20時】トリプル更新です!

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