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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第2章:歪んだ成長と、見えざる檻 ~産業革命の光と影、そして世界の違和感~

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第2-1話: 地下深く、マグマに照らされた「摩天楼」。――古代文明の残骸

 重力が内臓を押し上げる不快感。  視界が高速で上へと流れていく。



 死ぬ。  普通なら、間違いなく死ぬ高さだ。



 だが、俺は空中で体勢を整え、両手を眼下の暗闇へと向けた。



(……イメージしろ! ルロイに叩き込まれた『密度』の操作!)


 俺は全魔力を地面へと叩きつけた。  土を生成するのではない。そこにある岩盤を粉砕し、空気中の水分を限界まで吸着させる。


「……【泥濘のクッション(マッド・アブソーバー)】ッ!!」


 瞬間、底の岩肌がドロドロの沼のように液状化した。  直後、凄まじい衝撃。

 ズボォッ!!


 泥が飛散し、俺たちの体は柔らかい沼へと沈み込んだ。  泥の粘性が落下の運動エネルギーを食い殺す。


「……ぷはっ!」


 俺は泥の中から顔を出した。  全身泥まみれだが、骨は折れていない。他の護衛たちも次々と泥から這い出してくる。


「……助かった。やるじゃない、ルイ」


 サラが顔の泥を拭いながら剣を抜いた。  だが、安堵する暇はない。


「敵襲ッ!! 総員、構えろ!!」


 サラの絶叫が響く。  暗闇の奥から、ズシン、ズシンという重い足音が近づいてきていた。  岩石で構成された巨体。ゴーレムだ。


「……数は4体! 逃げ場はないぞ!」


 俺は即座に【国家盤面ステータス】を発動した。  


視界に赤い警告文字が走る。



【敵性体解析】

対象: 上級ミスリル・ゴーレム(LV152)他3体

資源評価: ミスリル反応・純度98%(極大)

構造弱点: 右膝関節部に経年劣化による熱歪みあり



 LV150越え。Aランク冒険者パーティーでも全滅しかねない化け物だ。  だが、俺が見たのは敵の強さだけではない。  盤面が弾き出した「環境データ」に、俺は戦慄した。



【環境危険度】

地盤強度: E(極めて脆弱)

崩落リスク: 73%(戦闘衝撃により上昇中)



(……この空洞、戦闘に向いていない! 地盤が薄すぎる!)

 サラが剣を構え、前に出ようとした。


「私が引きつける! あんたたちは——」


「サラ! 長引かせるな!」


 俺は叫んだ。


「この場所は持たない! 衝撃を与えすぎれば全員生き埋めだ!」


「なっ!?」


「それに深追いするな! 無理に倒そうとするな!」


「ルイ!? 何言ってるの、ここで倒さないと——」


「勝つことより、生きて帰ることを優先しろ!」


 俺の声が響いた。  サラが驚いて俺を見る。


 昔の俺なら、「多少のリスクを負ってでもミスリルを確保しろ」と言ったかもしれない。  だが、もう二度とごめんだ。  俺の判断ミスで、誰かが欠けるのは。


「……全滅したら意味がない! 生存サバイブが最優先ミッションだ!」


「……っ、了解!」


 サラの顔つきが変わった。


「聞いたわね野郎ども! 死ぬんじゃないよ!  ダンルイ、ユウマ! 最短で無力化する!  ルイ、弱点は!?」


「右膝だ! 全個体、右膝の関節が熱で歪んでいる! そこを狙え!」


「あいよッ!」


 護衛長のダンルイが、重厚な大剣を構えて飛び出した。  迷いのない一撃。


「うおおおおッ!」


 ダンルイの大剣が、ゴーレムの右膝を正確に打ち抜く。  ガクン、と巨体が崩れ落ちた。


 その隙を突き、カタリーナが「氷結魔法」で関節を凍らせる。  見事な連携だ。


 一方、ユウマ(LV98)も負けていない。  女性特有の柔軟な身のこなしでゴーレムの攻撃を躱し、ルンダの作った土壁を足場にして首元へ斬りかかる。


(……いける!)


 俺は短剣を抜き、サラと共に上級ゴーレムの周りを走った。  シーフのトムが石を投げて気を引く。

 グォォォォォン……!


 上級ゴーレムが腕を振り回す。  硬い。ミスリルの装甲は、俺の魔法もトムのダガーも通さない。


「くそっ、硬すぎる!」


「耐えろルイ! 膝を狙う隙を作るのよ!」


 数分後。  ズゥーン……!  ダンルイとユウマが、3体の中級ゴーレムを沈めた。


「よし! 全員で上級を囲め!」


 サラの号令で、全員が上級ゴーレムに殺到する。  勝てる。  そう確信した瞬間だった。


 ガァァァァァァァッ!!


 危険を察知した上級ゴーレムが咆哮し、輝く両腕を高く振り上げた。  盤面の警告数値が跳ね上がる。




 【崩落リスク:99%】




「全員、退避ッ!!」

 ゴーレムの拳が、地面に叩きつけられた。


 ドゴォォォォォンッ!!


 衝撃波が走る。  だが、それだけではなかった。  俺のスキルが予言した通り、地面が悲鳴を上げた。

 ミシッ……バキキキキッ!!



「嘘だろオォォォッ!?」


 俺たちの足場が、再び崩れ落ちた。  二度目の落下。  全員が宙に投げ出される。



 だが、その中で一人、サラだけが獣のように目を光らせた。



「そこぉッ!!」

 彼女は落下の勢いを利用し、体勢を崩したゴーレムの頭上へ飛び乗った。  装甲の隙間。露出した「コア」を目掛けて、剣を突き立てる。



 ズドンッ!!


 ゴーレムの光が消え、俺たちは瓦礫と共に、さらに深い闇の底へと落ちていった。


          ◇


 ……熱い。




 意識を取り戻した俺が最初に感じたのは、肌を焼くような熱気だった。  ズキズキと頭が痛む。体を起こすと、全身に打撲と擦り傷がある。


 だが、致命傷はない。


「……みんな、無事か?」


「……なんとか、だべ」


 カタリーナが訛りながら答えた。  ラリの回復魔法のおかげで、大きな怪我はないようだ。



 俺は体を起こし、周囲を見渡した。  ——そして、絶句した。



「……なんだ、ここは」



 そこは、異様な空間だった。  高さは、少なくとも100メートル以上。  天井は見えないほど高く、壁は滑らかに削られている。



 そして、遥か下を流れる赤いマグマの川。  その熱源に照らされて浮かび上がっていたのは、巨大な「廃墟」だった。



 石造りでも、煉瓦造りでもない。  灰色の、均一で硬質な石……いや、「コンクリート」でできた、巨大な塔のような建物が立ち並んでいる。



 窓ガラスは失われているが、その形状は明らかに、俺が前世で見た「高層ビル」の残骸だった。



 10階建て、20階建て、中には50階を超えるような巨大な建物もある。  だが、すべて廃墟。崩れかけている。  錆びた鉄骨が露出し、コンクリートは風化している。



 その数、数十。いや、数百。  地平線の彼方まで、廃墟が続いている。



「……嘘だろ……」



 俺は、ゆっくりと立ち上がった。  足元を見る。アスファルトの道路だった。  だが、ひび割れ、所々に穴が開いている。



(前世の未来の世界か? ……いや、そんなはずはない)



 ここは魔法のある異世界だ。地球じゃない。  では、なんだ?  この世界の「過去」が、今よりも遥かに発展していたというのか?



 俺は、近くにあった崩れた建物の壁に、震える手を当てた。  答えを知るために、【国家盤面】を起動する。



 表示された文字列を見た瞬間、俺の心臓が早鐘を打った。



【解析完了】

対象: 旧文明都市遺構

技術レベル:文明等級SSSロスト・テクノロジー

遺物評価:国家再建に革命的影響あり



「……文明等級、SSSだと?」

 俺は息を呑んだ。  今のバールや王都のレベルは「C」か、良くても「B」だ。  ここは、次元が違う。前世の時代と一緒か?それ以上か?

(……これは、単なる遺跡じゃない)


 俺は拳を握りしめた。  絶望的な落下の果てに、俺たちが辿り着いた場所。  そこは——


(……俺たちの国を、世界を変えるための「力」が眠る場所だ)


 これは、バール再建のための最強のジョーカー(切り札)になる。


今回もお読みいただきありがとうございます!


次回も【明日19時】に更新します!


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