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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第1章:ゴミ溜めからの再建計画(ターンアラウンド) ~「死神」コンサルタントは、数字で悪徳貴族を黙らせる~
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第8話:指揮官の過信、死の気配

 翌日。

 俺は、ダンジョンの地下2階層にいた。

 湿った空気が漂う薄暗い通路だが、そこにかつてのような「死の気配」はない。

 前日に実施した「誘引作戦」によって、1階層の魔物はほぼ壊滅した。  安全が確保されたため、サラがいる「作戦司令室」も、地上のテントから地下1階の広間へと移動させてある。


「……順調だな」



 俺はコツコツと石畳を叩きながら歩く。

 現在の陣形は、鉄壁だ。

 最前線では、Bランクパーティ『黄金の盾』がボス部屋を探してルートを切り開いている。

 そのすぐ後ろを、CランクやBランクの混成部隊が3班体制で巡回し、残党狩り(掃討)を行っている。

 そして俺がいるのは、さらにその後方。  安全地帯を進む「発掘調査班」の中だ。



「ルイ様、ここです! 反応があります!」



 先行していた調査員が声を上げた。  崩れかけた壁の一角。そこから、淡く、しかし力強い銀色の光が漏れ出している。



「ほう……」



 俺は壁に近づき、ライトで照らした。  岩盤の中に走る、美しい銀の鉱脈。

 ミスリルだ。



「純度は……最高級とまではいかないが、かなり高いな」



 俺は欠片を手に取り、重さを確認する。

(比重も悪くない。この純度なら、1キロあたり金貨10枚にはなるか)

 この壁の奥にどれだけ埋まっているか、まだ計算はできない。  だが、この鉱脈ひとつで、当面の資金繰りが楽になることは間違いない。


「よし、採掘の準備を……」


 俺が指示を出そうとした、その時だった。



 ――ガサッ。





 背後の闇で、乾いた音がした。

「……ん?」

 俺が振り返るよりも早く、護衛についていたCランク冒険者が悲鳴を上げた。


「ひっ……!? な、なんだこいつは!?」


 暗がりから現れたのは、一体のスケルトンだった。  だが、今まで見てきた雑魚(レベル20程度)とは、明らかに風格が違っていた。

 ボロボロだが豪奢な装飾が施されたマント。  錆びついているが、名品と分かる長剣。  そして何より、空洞の眼窩に宿る光が、禍々しい赤色に燃えている。

 スケルトンナイト。

 言い伝えによれば、古代文明の騎士が魔王に魂を乗っ取られ、数百年もの間、死ぬことすら許されず酷使されているという「呪われた騎士」だ。


(……抜け漏れ(リーク)か!)


 俺は舌打ちした。  完璧な陣形を敷いたつもりだったが、隠し部屋か何かから湧いて出たイレギュラーな個体だ。



「さ、下がってくださいルイ様! こいつはヤバい!」



 護衛たちが剣を構えるが、腰が引けている。  彼らのレベルでは、恐怖で足がすくむのも無理はない。

 だが、俺は冷静だった。



「……下がっていろ。俺がやる」


「えっ!? む、無茶です!」


「無茶ではない。計算だ」


 俺は腰の剣を抜いた。

 相手はCランク上位からBランク相当の魔物。  だが、昨日の報告では、Bランクのダンルイが5体を瞬殺している相手だ。


 俺のレベルは26。  Dランク相当だが、スキル【国家盤面】を使えば、格上の動きでも「視る」ことができる。  動きが見えれば、かわして急所を突くだけだ。

(ダンルイにできて、俺にできないはずがない)

 俺は剣を構え、前に出た。  スケルトンナイトが、俺を敵と認識し、ゆっくりと剣を振り上げる。



 ――スキル発動。



 視界がモノクロに変わり、敵の動きに「赤い線(予測軌道)」が重なる。

(視えた! 右からの薙ぎ払い……その後に突き!)

 脳内シミュレーションは完璧だ。  俺は自信満々で、その軌道を避けようと体を沈めた。

 だが。


 ――ブンッ!!


 風切り音が、俺の予想よりも遥かに早く、重く、鼓膜を震わせた。

「――ッ!?」

 回避が、間に合わない。  いや、脳は反応している。目が捉えている。  なのに、筋肉が反応しない。

 レベル60を超えるモンスターの身体能力フィジカルと、レベル26の俺。  その絶望的な「出力差」を、俺は計算に入れていなかった。

 ガギィィィン!!

 とっさに剣で受け止めたが、それは小枝で鉄骨を受け止めるようなものだった。  衝撃が骨まで走り、俺の体はボールのように弾き飛ばされた。

「がはっ……!」

 壁に叩きつけられ、肺から空気が漏れる。  剣を取り落とし、地面に這いつくばる。

 見上げれば、スケルトンナイトが追撃のために剣を振り下ろそうとしていた。

(……あ)

 死ぬ。  論理ロジックも、話術トークも、カネも。  ここには通用しない。

 あるのは、純粋で圧倒的な「暴力」だけ。

 俺の視界が、死の予感で真っ白に染まる。

 その時。

 ――ドォォォォォン!!

 横合いから飛んできた「巨大な鉄塊」が、スケルトンナイトの上半身を粉砕した。

 骨片が飛び散り、鎧が紙屑のようにひしゃげる。  一撃だ。  あの強敵が、文字通り「消滅」した。

「……ったく。世話が焼けるガキだ」

 土煙の中から現れたのは、巨大な戦槌ウォーハンマーを軽々と担いだ男。  ギルドマスター、ガントだった。



「ガ、ガント……? なぜ、ここに……」



 俺は震える声で尋ねた。  彼は司令室の防衛に残っていたはずだ。

「ああ? サラの嬢ちゃんに頼まれたんだよ。『ルイが心配だから、お願いだからついて行ってあげて』ってな」

 ガントは鼻を鳴らし、ニカッと笑った。

「俺ぁ、金髪の美人の頼みは断らねぇ主義でね」

 ……そうか。  サラは気づいていたのだ。俺の過信と、現場を知らない危うさに。  だからこそ、最強のボディーガードを内緒でつけていた。

「それにしても、肝が冷えたぞ」

 ガントは俺を見下ろし、厳つい顔で凄んだ。

「このハンマーは、ドワーフ族に伝わる特注品だ。使い手のレベルの1.5倍……俺ならレベル480の化け物まで粉砕できる代物だが、死んだ人間にゃあ効果がねぇ」

 レベル320のAランク冒険者。  それが、この男の正体だ。

「いいか、ルイ。よーく聞け」

 ガントの大きな手が、俺の頭を乱暴に掴んだ。

キングが歩兵の真似事をしてどうする! テメェの武器は剣じゃねぇ! その頭と、人を動かす力だろうが!」

「……っ」

「死にたくなきゃあ、自分の『分』をわきまえろ。……分かったか!」

 怒号が、洞窟内に響き渡る。  俺は何も言い返せなかった。

 震える手で、自分の膝を握りしめる。  恥ずかしさと、情けなさと、そして生きて戻れた安堵。

 俺は知ったのだ。  盤上の駒ではなく、血の通った現場の恐ろしさを。

「……肝に、銘じる」

 俺は深く頭を下げた。  ミスリルは確保した。作戦は成功だ。  だが、俺のプライドは粉々に砕け散った。


お読みいただきありがとうございます!

「視える」ことと「動ける」ことは違う。 デスクワークの人間が、いきなり現場に出てはいけないという教訓ですね……。

ガントの圧倒的な強さと、サラの静かなファインプレー(ガントへの護衛依頼)に救われました。 ちなみにガントは金髪好き。サラが金髪美女で本当によかった……!

さて、これでミスリル(資金)は確保しました。 次回からは、いよいよ物語が「街全体」へと広がっていきます。

「続きが楽しみ!」「ガントかっこいい!」と思っていただけましたら、 ページ下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします! (ブックマークもぜひ……!)

▼次回予告 第9話『勝利の収支決算』 ダンジョン攻略完了。 手に入れた莫大な資源を元手に、ルイは街の改革を一気に加速させます。 しかし、数字上の好景気とは裏腹に、街には新たな「飢え」の影が忍び寄っていました。

次回も【明日18時】に更新します!


【この世界の豆知識】

■バールの冒険者事情(人材不足の理由) 現在の登録者数は約180名。内訳は以下の通りです。

A級: 0パーティ

B級: 1パーティ(『黄金の盾』のみ)

C級: 14パーティ

D級以下: 20パーティ〜

【レベルの定義について】 この世界における「レベル」とは、あくまで「基礎身体能力(筋力・反応速度・頑丈さ)」と「魔力容量」を示す数値です。技術や知能は含まれません。


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