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詩小説へのはるかな道 第75話 とまどいながら

作者: 水谷れい

原詩: とまどいながら


とまどいながら

あなたの姿を追ってしまう

理由なんて まだどこにもないのに

心だけが 先に歩き出してしまった


あなたが微笑めば

世界の輪郭がやわらぎ

あなたの残した気配が

わたしの胸へ 静かに沈んでいく


触れもしない距離なのに

なぜだろう

あなたが ただいるだけで

わたしの時間を そっと変えてしまう


とまどいながら

それでも 目が離せない

この小さな予感が いつか

名前を持つ日を ひそかに待っている


ーーーーーーー


詩小説: とまどいながら


放課後の図書室は、冬の西日が差し込んでオレンジ色に染まっていました。

結衣は、貸出カウンターの奥で新着図書の整理をしながら、視線だけを泳がせています。

その先には、窓際の席で数学の参考書を広げている佐々木くんがいました。

(また、見てる……)

自分でも、なぜ彼を目で追ってしまうのか分からりません。

特別な会話をしたことも、一緒に帰ったこともありません。

それなのに、彼がページをめくる指先や、時折ふっと遠くを見る横顔から目が離せなくなるのです。

(心だけが、先に歩き出してるみたいだ)

結衣は小さく苦笑いしました。

理由なんて後回しで、感情だけが勝手にスピードを上げています。


佐々木くんがふと顔を上げました。

目が合いそうになり、結衣は慌てて手元の本に視線を落としました。

心臓がトクンと音を立てます。

しばらくして、椅子を引く音が聞こえました。

「……あの、すみません」

目の前に彼が立っていました。

「これ、返却お願いします」

彼が差し出したのは一冊の古い詩集でした。

結衣はその本をそっと受け取りました。

彼が去ったあと、ふと見ると小さな銀杏の葉が栞代わりに詩集に挟まっていました。

窓の外を見ると、校門へと向かう彼の背中が見えました。

彼は足を止めると眩しそうに空を仰ぎ微笑みました。

彼が微笑むだけで、この無機質な図書室も、冷たい冬の空気も、どこかやわらかいものに変わってしまいます。

「とまどいながら、か」

結衣は詩の一節を指でなぞりました。

まだ「恋」と呼ぶには幼すぎる、けれど無視するには大きすぎるこの予感。

いつかこの気持ちに、本当の名前を付けて彼に手渡せる日が来るでしょうか。

結衣は銀杏の葉を大切に本に挟み直し、彼がいなくなった窓の外をもう少しだけ眺めていました。


=====


わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。


連作短歌:とまどいながら


冬陽さす 図書室の隅 息ひそめ

ページの音に 心だけ揺れ


理由など まだ持たないまま 目が追って

遠くを見る横顔の 静けさまでも


視線から 逃げた指先 熱を帯び

トクンと鳴れば 世界が動く


返却の 古き詩集に 触れたとき

言葉より先に 胸がほどける


銀杏葉の ひかりを挟む そのしるし

名もなき予感の かたちを拾う


校門へ 歩む背中の 微笑みに

冬の空気が やわらぎはじめる


とまどいを そっと抱えた ままの恋

まだ呼べぬ名を 胸にあたため


いつの日か この気持ちにも 名が生まれ

葉書のように 君へ渡せたら

詩をショートショートにする試みです。

詩小説と呼ぶことにしました。

その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。

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