私にとっての闇
「ただいま。」
はぁ〜。誰もいなくて薄暗い部屋。家族なんか帰ってこなくて良いのにな。
ガチャ。私が帰ってから6時間ぐらいたったときドアが開いた音がした。そのとき久しぶりにめまいがした。息を整えてお母さんに顔見せなきゃ。
「おかえり。」
「ただいま。ってか担任誰だったの?」
「大西先生。いつもお兄ちゃんが言ってる怖いって体育の先生。」
「うわ。あいつか。最悪。」
「そうそう。英語の勉強した?英語苦手ならやらなきゃいけないよね。」
「今からやってくるから。部屋行ってるね。」
あ〜あ、、まただよ。英語、英語ってうるさくて嫌になる。苦手な事のひとつやふたつぐらい受け入れてほしい。
入学して約一ヶ月がたった。今日は朝から雨が降っていて低気圧で頭が痛くて気持ち悪い。でも私に休むっていう選択肢はないのだ。
「瑞稀!次の授業体育だからいそご!」
「香織って見学でしょ?」
「今日はね。でも瑞稀も体調、わるいんでしょ?」
「そう。ちょっと低気圧でね。」
香織は体が弱くて休むことが多いのだ。
「瑞稀も見学したら?」
「でも紙持ってきてないし。」
「わすれたって言えば大丈夫だよ。」
「そうしよっかな。」
見学の時は紙に書いて提出しなくちゃいけないというルールがある。忘れたって言えば大丈夫だよね。
「あの北野先生。1年1組谷です。紙忘れてしまったんですけど少し頭痛くて見学させてください。」
「それは朝から?」
「はい。」
「朝から体調悪いって事なら保護者の方に紙を書いてもらわないと朝の様子とかが分からないから次からは絶対書いてもらって。」
「分かりました。すみません。」
結局怒られたし。みんながみんな親に体調悪いってこと伝えられると思わないでほしい。
この会話で昔のトラウマがフラッシュバックしてきた。少し息がしづらい。さっきよりも気持ち悪いし。
私の家は多分普通の家庭ではない。私が小学三年で兄が中学一年の時の夏。コロナになった。二週間もあれば元気になるだろう。そう思っていたがそう上手くは行かないものだ。私の兄だけは体調が悪いままだった。それを見た母が病院に連れて行くとコロナの後遺症だという。それからは両親は共働きの上、父は単身赴任をしてるため兄の病院に母が夜に連れていって私は一人でご飯を食べたりしなければならなかった。その時から私は孤独感を感じていたり、家族に心配や迷惑をかけてはいけないと思い、体調崩しても笑顔で過ごして早く寝たりして無理矢理直そうとしていた。時には本当に耐えられなくて自殺しようとし、ベランダにでて足をかけようとした事もあった。その時は兄と母が帰ってきてそのまま何事もなかったようになった。
そんなことを会話で全て思い出した。それだけで私は授業中にも関わらず過呼吸になってしまったのだ。
「ちょっと瑞稀。大丈夫?」
香織が小声で話しかけてきてるのが分かった。あくまで見学だから誰にも見られない。
「瑞稀、深呼吸できる?」
過呼吸は深呼吸したら治ったがその後の授業中も何回か過呼吸になってしまった。その時はとても顔色も悪く、負のオーラがダダ漏れだったのだろう。
でもこんな状態だと周りの目も見えなくてとても孤独だった。




