02 授業中でも気を抜かず。
ーSide Reiー
授業開始時間ぴったりに教室に入ってきた教師がプリントを配る。
ここだ。
「……あ、足りない」
これ見よがしにそう呟いて後ろを振り返り、プリントを手渡す。
本当は瑠衣に二枚プリントを渡したんだけどな。
「はい、取りあえずどうぞ」
「あ、ありがとう……」
当たり前の事なのに感謝を伝えられる意味がわからない、そんな顔を作りその後にすぐ笑顔になる。
そして席を立ち、教師の元へとプリントを貰いに行く。
席に着くと、瑠衣がこちらをじっと見ている。
俺に見惚れるのも十分に分かる。
だって俺イケメンなの自覚してるもん。
ここ、表情を作れ。
「さっきは言うの遅れたけど、そんな感謝されるほどの事はしてないから。気軽に話そう?」
「うん……!」
おっし決まった、イケメンの定番ゼリフ『感謝されるほどの事はしていない』。
というかここまでチョロいとは……恋愛って簡単だな。
ま、取りあえず話すきっかけぐらいは作れただろ。
後は適当に勉強会でも開くとするか。
面倒くさいけど。
あ、ヤバい。
これ以上話すと先生から怒られる。
真面目なキャラとして売っている俺としては絶対に避けなくては。
またノートと向き合った。
ーSide Ruiー
「……あ、足りない」
三枝君がそう呟き後ろを振り返る。
え?何?それ自分の分じゃないの?
「はい、取りあえずどうぞ」
「あ、ありがとう……」
余り喋ったことが無いため少し返事に戸惑った。
すると三枝君は席を立ちプリントを貰いに行った。
こういうのって少し恥ずかしいから尊敬する。
少し思い出を振り返り、じっと三枝君を見つめる。
すると三枝君はこちらを振り返ってぼそっと言った。
「さっきは言うの遅れたけど、そんな感謝されるほどの事はしてないから。気軽に話そう?」
「うん……!」
三枝君と話すきっかけが出来たのは嬉しい。
思わず笑顔になった。
先生の視線がこちらに向く。
三枝君は慌てた表情をして人さし指を口元に当てる。
そしてまたノートと向き合った。
三枝君は本当に勉強熱心で尊敬する。
今度勉強会にでも誘おうかな。