卒業、バルコニーと紙飛行機
「雪奈ちゃん、どうしてバルコニーにいるの?」
「卒業が迫ってるから、学校の景色をもう一度見たくて…」
「そうなんだ。じゃあ、雪奈ちゃんはいつ出発するの?」
「もう少し待っていたいな。夜りんはどうなの?」
「私は荷物も全部片付けたし、あとは帰るだけだよ。」
「そっか、じゃあ私一人ぼっちになっちゃう…」
「そんな悲しいこと言わないで! 雪奈ちゃんはいつでも遊びに来てくれるじゃん。」
「でも、夜りんは将来何をするって決めてるの?」
「多分、先生になりたいかな。でも、なんで急に雪奈ちゃんがそんなこと聞くの?」
「いや、今の私は…未来がちょっと見えなくて。」
「え!? どうしてそんなふうに思うの、雪奈ちゃん?」
「実は、将来何をしたいのか全然わからないだけなの…」
「そうなんだ。じゃあ、雪奈ちゃんはやりたいことはあるの?」
「うーん、修士試験を受けて大学院に行くのもいいかなとか…」
「それって、どうして受けたいと思ったの?」
「わからないけど、何かしらやっていた方がいいかなって思ったから。」
「でも、雪奈ちゃんは勉強あんまり好きじゃないよね?」
「うん、でも今は…本当に自分が何をしたいのかわからなくなってるの。」
「私は、雪奈ちゃんが少し休んでからじっくり考えるのもいいと思うよ! もし何か決めたら、私、全力で応援するからね。」
「まだ決まってないけど…私はまだ止まりたくないんだ。」
「本当に? 雪奈ちゃんが止まりたくないのは、止まったらどう進んでいいかわからなくなるから?」
「夜りん、わからない…」
「私が思うには、雪奈ちゃんが少し休んだら、もっと素敵なスタートが切れると思うんだ。」
「考えてみるね…」
「そういえば、雪奈ちゃんは、飛んで戻ってくる紙飛行機を折ったことある?」
「え? できないよ…」
「じゃあ、ちょっと待っててね!」
「うん!」
「雪奈ちゃん、これは私のおばあちゃんが教えてくれた折り方だよ。」
「うんうん!」
「じゃあ、一緒に順番に折ってみよう!」
「さあ、今度はこれを飛ばしてみよう!」
「でも、夜りん、これも戻ってこないよ…」
「雪奈ちゃん、焦らないでね。」
「もう少し待てば、見らいも出てくるよ。」