表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺もどき3

翌日

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくななじゅうろく。

 


 ソファに座ってぼうっとしている。


 自分で言うのもなんだが、魂の抜けたような人間とはこんな風になるんだろうな。

 ダラリと腕を落として、足は床に置いているだけで。

 そのまま沈み込むのではないかという程に、ソファに体重をかけている。

 いっそ、このまま埋め込まれてしまいたいところだ。

 そうして、何もせずに、時間の流れるままに、朽ちていくだけのものになりたい。

「……」

 窓の外には、晴れた空が広がっている。

 まるであざ笑うように、燦々と降り注ぐ陽光。

 視界の隅で何かがチカチカとしていて鬱陶しい。

「……」

 リビングは不愉快なほどにジメジメとしていて、扇風機は生ぬるい空気を回しているだけ。

 外からの風は入っているはずなのに、一向に涼しくならない。

 ならばもう少し対策をすればいいのだけど、めんどくさくて仕方ない。

「……」

 昨日帰ってきてから、心ここにあらず状態もいいところで。

 帰宅するだけでも苦心したし、服を着替えられたのが奇跡という感じだ。

 今の状態になっているのが、昨夜からとか言ったら驚かれるだろうか。

「……」

 殆ど一日中、遊びつくして体力も限界だったのもあるだろうけど。

 彼氏と同棲するから、少し遠くに引っ越すことになって、もう会えなくなるかもしれないからと、そう彼女に言われたときから。

 やけに呼吸音が響いたり、心臓の音が重なったり。

 腹の奥底で何かがぐるぐると回り続けていて。

「……」

 吐き出しそうになるソレを何とか抑え込みながら。

 彼女を、友達を、送り出した。

 もう会えないかもしれないなんて。

「……」

 ただの友達の1人だ。

 そのはずだ。

 確かに勝手に思い煩っていたかもしれないが、それはもう諦めたはずなんだ。

「……」

 それを、あの日に殴り起されて。

 ようやく少し落ち着いてきたところに、昨日のことがあって。

 というか、よく昨日一日耐えたな。すごいな私。

「……」

 なんというか、ここまで行くと。

 あまりにも異常な気もするな。

 我ながら。

「……」

 ただ一人の友達と別れただけで。

 連絡はとれるんだから、完全に別れたわけじゃないのに。

 ましてや、彼女に思いを伝えた事があるわけでもないのに。

「……」

 これはきっと、単なる執着でしかない。

 友愛とか恋慕とか、そんな可愛いものではない。

 私は、両性愛者でも異性愛者でも同性愛者でもない気がする。

 なんだか、世間一般で言うような恋愛感情というのは違う気がしている。

「……」

 延々と渦巻くコレは、ただの執着心だと言われた方がすっきりとする。

 子供のような執着だ。

 自分の大切なモノを、他の何者かが触れることに異常なほどに嫌悪を抱いているだけだ。

 私にとって唯一のモノを、汚されるようで嫌で嫌で仕方ないのだ。

「……」

 私は一生このままなんだろう。

 何年たっても変わらないものが、今後変わるとも思えない。

 今こうして何も手につかない状態になっているけど。

 きっと彼女から連絡が来たら、甘えるように飛びつくのだ。

 諦めたくせにと言い聞かせながら。

「……」

 あーあ。

 さっさと切ってしまえばいいのに。





 お題:呼吸音・両性愛者・晴れた空

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ