10年早い日清戦争
それでは時間を進めていきましょう。英梨子さんがルーチンワークをこなしている間に、ここからの戦略をお話しします。
直近の戦略目標は、日清戦争を起こして勝つことです。清は朝鮮が他国の属国になると、朝鮮を属国化した国に対して宣戦します。普通にゲームを進めた場合、朝鮮を属国化するには甲午農民戦争イベントが必要ですが、このイベントが発生するのは1894年です。こんなに長期間準備しなくても、清相手なら余裕で勝てますので、もっと早く戦争したいですよね。
そこで登場するのが来年の甲申事変イベントです。このイベントでは朝鮮に駐留している日清の戦力で限定戦争を行い、勝った方が自国の反抗的な勢力を朝鮮から追放します。史実では日本が負けたイベントであるため、朝鮮の独立党が壊滅してしまいましたが、このRTAでは勝って事大党を壊滅させますのでぜひご覧ください。
ところで、甲申事変イベントでは朝鮮にその時駐留している戦力のみで日清が戦います。では、両国が事前に置ける戦力の大きさは、何で決まるのでしょうか。答えは、この前の壬午軍乱です。日本は壬午軍乱で朝鮮の軍事通行権を得ますが、平時に朝鮮に置くことができる戦力は、壬午軍乱で得た名誉点に依存します。だから、ソウルを火の海にする必要があったわけですね。ソウルを火の海にするほど、ソウルに置ける戦力が大きくなるので、甲申事変でもう一回ソウルを火の海にするための難易度が下がります。どちらにせよ、準現代型多連装ロケット砲を装備する我軍の前では、清国軍などひとえに風の前の塵に同じなんですけどね。
こうして甲申事変イベントに勝ち、朝鮮に独立党政権が誕生すると、怒り狂った清がそのうち宣戦してきます。清国軍は朝鮮軍より装備が良く、はるかに数が多いですが、陸ドクの遅れっぷりは朝鮮とどっこいどっこいなので士気と防御系ステータスが終わっています。つまり、対人攻撃力の鬼と化した今の日本軍で、気持ちよく溶かせるということですね。おつかれさまでした。
では、日清開戦を前倒しするメリットは何なんでしょうか。
1つ目は、フランスと共同戦線を張ることができる、というものです。フランスは1880年代にインドシナを侵略しますが、この当時のインドシナは清の属国なんですね。清は自分の庭を荒らされて黙っていられる国ではありませんので、当然のように戦争になります。
これが史実の清仏戦争で、このゲームでも史実と同じように1884年ごろ、清とフランスが戦争してます。地理的に日本とフランスで南北から挟み撃ちする構図になるので、清の陸軍AIが混乱して戦力差以上に戦いやすくなるのです。英梨子は部隊を率いる立場ではないので、日本軍の動きにも介入できませんから、敵国AIが混乱してくれるのはとてもありがたいですね。
ちなみに、この時期の清はドイツに戦艦の建造を依頼していますが、清仏戦争がはじまると、停戦するまでイベントで建造作業が止まります。今の日本で欧米の建造する戦艦に対抗できる船は作れませんので、この点でも早期開戦した方が有利と言えるでしょう。
2つ目は、日本が名誉点を早期に稼ぐことができる、というものです。ゲーム開始時点で、日本は様々な不平等条約を結ばされており、主に貿易関係のデバフを背負っています。資源の絶対量が乏しい海洋国家である日本は、貿易収支が生命線になりますので、早急にデバフを解消したいわけです。
不平等条約は名誉点を一定以上稼ぐと撤廃させやすくなりますので、技術が遅れていてボコりやすく、国土がやたら広いせいで勝った時に名誉点を稼ぎやすい清は絶好の標的というわけですね。こんな理由で開戦される清はたまったもんじゃないでしょうが、タイムは命より重いので犠牲になっていただきます。
3つ目は、朝鮮の近代化が早まる、というものです。史実の朝鮮は保守的な大院君派だったり、事大党だったりが政権を握っていたため、両班が庶民を搾取するばかりで一向に近代化が進みませんでした。これを反映してか、このゲームでも保守的な勢力が政権を握っていると、内政関係に強烈なデバフを受け、内政AIの挙動もポンコツになります。
一方、独立党に政権を握らせると、内政関係のデバフが外れ、内政AIの挙動がまともになり、日本外交AIが朝鮮に技術供与をするようになります。これらのおかげで朝鮮の国力が大幅に増し、防波堤としてまともに機能するようになるのです。最終目標である日露戦争での戦力差を少しでも縮められれば、その分講和に持ち込むまでのタイム短縮につながります。
さあ、そんな風に話していたらいつのまにか1884年になってしまいました。菊麿殿下と実施していた「自記記録計」は開発が完了し、政府の運営費が1%削減されています。多分気象台の運営費が削減できたことを表しているのでしょう。菊麿殿下との仲が最高に深まり、お互い機械工学スキルも成長したので狙い通りですね。体力がだいぶ危なかったので、「観測ロケット」の開発はせず、しばらく休日は普通に休むようにします。
ワールドマップを見てみますと……日本軍ユニットがいないので「戦場の霧」がかかっていますが、インドシナ地域にフランスの色が見えます。史実通り、インドシナを侵略しているようですね。このまま戦争までエスカレートしてくれればいいですね。
さて、陸軍の技術開発状況を確認しますと……村田さんたちが「後装式騎銃」の開発を完了させて、英梨子が今まで単独で開発していた「基本型連発銃」の方に合流しています。この調子なら、今年中に開発を終わらせて、次の兵器開発に行けるでしょう。海軍の方にも一次大戦型艦船のアイデアを伝達したので、そろそろ一次大戦型装甲巡洋艦の開発が完了しそうです。とはいえ、就役には1年以上かかりますから、日清戦争には間に合わないでしょうね。
さあ、そろそろ清仏戦争が始まってほしいころなんですが……噂をすれば「バクレ待ち伏せ事件」イベントが起きて開戦しました。バクレ待ち伏せ事件は、インドシナを侵略していたフランスが、清側勢力から待ち伏せ攻撃を受けて逆ギレする酷い事件なんですが……
─────────────────────
┌─┐ システムメッセージ ┌─┐
│〇│ 日本の動向 │〇│
└─┘ かの国は └─┘
「甲申事変」
において
「独立党を支援する」
を選択したようです
─────────────────────
おっと!? 間髪入れず甲申事変イベントが発生しました。普通はタイムラグがあるのですが、今回はいつになく早いですね。そしてあっという間に朝鮮の清国軍を撃滅し、朝鮮に独立党政権が誕生しました。すかさず清が日本と朝鮮に宣戦を布告し、チャート通り10年前倒しの日清戦争が始まります。先ほど解説した通り多分勝てますが、英梨子さんは軍事ユニットを指揮できる立場にないのでAIの機嫌次第なところが大きいです。お祈りをお願いします。
ワールドマップで戦況を見てみましょう。鴨緑江を渡って清国軍が押し寄せてきていますが、日本軍ユニットにぶち当たっては溶けていっています。そうしている間に日本軍の数もどんどん増えていって……清国軍が朝鮮半島からたたき出されましたね。鴨緑江も火力差で渡河し、満州へと侵攻しはじめました。
海軍も戦果を挙げているようで、清国海軍艦艇に対してよいキルレシオを維持しています。制海権もとれてそうですから……予想通り、威海衛に日本軍が上陸しました。続いて陸路から旅順も攻略、北京周辺の軍港を奪取できたので、天津が丸裸になります。プレイヤーが指揮するなら、このまま天津から上陸して北京を衝くところですが……ちゃんとやってくれましたね。上陸せず、陸路から平押しすることがそこそこあるので、今回の日本陸軍AIは優秀です。そして、北京守備隊を撃破して首都を奪取したら……はい、講和が成立したので我が軍の勝ちですね。
清みたいに国民不満度が高い国は、イベント講和がなくても、首都を陥落させて、ある程度軍事点に差をつければ降伏させられます。裏を返せば、軍事点を稼いでも、首都を落とせないと降伏してくれないので、日本からロシアを降伏させるのがいかに大変か、今のうちに想像してみてくださいね。
甲午農民戦争:キリスト教を排斥しようとする農民の反乱。これに乗じて日本軍が朝鮮を傀儡化したため、清がキレて日清戦争が始まった。
陸ドク:陸軍ドクトリンのこと。戦略級RTSにおいて、陸軍がどのような戦い方をしているかを表現する要素で、兵器が良質でも、陸ドクの研究が進んでいないとあっさり蹴散らされることが多い。
観測ロケット:ペイロードを衛星軌道に乗せることができない打ち上げロケットのこと。日本だと「S-520ロケット」が有名。
少しでも面白いと思っていただけたり、本作を応援したいと思っていただけましたら、評価(★★★★★)とブックマークをよろしくお願いします。