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【ドラマパート】連発式小銃

今回もドラマパートです。無煙火薬の開発を無事終えた英梨子。次はせっかくなので小銃弾薬の開発に挑みますが……


7/22:技術的な誤りを修正

8/25:十九年式を十七年式に変更

 壬午軍乱の後始末で日本がごたごたしているころ、東京砲兵工廠に技官として出仕している九条英梨子は無事に無煙火薬の開発を完了していた。


「お疲れさまでした。ここまで九条さんの下で働けて光栄でした」

「そんな、とんでもない! こちらこそ今まで実験を代行いただき、ありがとうございました。本当に助かりました」


 領収試験を終えた帰り道、自分の代わりに試作や実験を代行してくれた稲葉尚秀とお互いをねぎらっている。


「九条さんは今後どうするんですか?」

「そうですね……せっかく無煙火薬を作ったので、次はそれを使用する小銃……歩兵銃弾薬の開発に加勢しようと思います」


 稲葉が去就を尋ねると、英梨子は火薬開発からはいったん離れて別のプロジェクトに加勢することを伝えた。


「弾薬……そういえば、今黒色火薬を使っている歩兵銃の弾薬を、そのまま無煙火薬にすると強力すぎるんでしたっけ?」

「そうです。村田様と有坂様の方で無煙火薬を使用する弾薬に最適化した歩兵銃を並行して検討いただいてますので、弾薬の方を手伝ってもらえないかとお声がけをいただいているのです」


 前世では軍需品に携わる機会がなかったため、小銃弾薬の設計経験なんてあるはずもない。しかし、軍に限らず理系の研究機関はどこも人手不足であるから、小銃開発にも挑戦してみようと英梨子は考えていた。




「これが試作した歩兵銃ですか……」


 数日後、村田経芳のチームに合流した英梨子は、開発中の小銃を有坂に見せてもらっていた。


「管型弾倉を採用した連発銃になっているので、弾薬を弾薬盒から取り出さなくて済むようになっているんです」

「ふーん……それで、弾薬はどんな形のものを想定しているんですか?」


 一般的な箱型弾倉でないことに違和感を感じながら、英梨子は自分の所掌となる部分を確認する。


「管型弾倉なので、後ろの弾薬の先端が前の弾薬の雷管をたたかないようにする必要がありますので、こんな形状にしようかと……」


 そうやって出てきたのが、史実通り平弾頭でリムド薬莢の8mm村田無煙火薬実包であった。


「……弾丸をこの形状にしなければいけないのなら、前線の兵士の皆さんに申し訳ない仕事しかできません。銃ごと作り直したいです」


 近代的な火薬開発に従事し、陸軍内でも一目置かれるようになったと感じていた英梨子は、少し強めの態度に出てみることにする。


「作り直し……ですか?」

「管型弾倉は散弾銃で実績のある信頼性の高い機構ですが、初速の高い歩兵銃用の弾薬を扱うには向きませんよ。なぜなら、有坂様がおっしゃったとおり、弾頭を平たくしなければならないからです。これでは弾丸の空気抵抗が大きくなり、遠くまで飛んでくれません」

「なんとなく私もそんな気はしていますが、目くじら立てるほど致命的な問題になりますかね」

「なるんですよこれが……」


 要は程度問題ではないかと有坂が反論すると、英梨子は十三年式十二連装噴進砲開発時の試験データを提示した。


「同一の射角で比較した時、平弾頭や丸弾頭の噴進弾は、尖弾頭のそれと比較して、散布界でも飛距離でも劣っています。弾丸でも同様の問題が起こる可能性が高いでしょう」

「……結構効くんですね……」


 きちんとしたエビデンスを出されてしまっては、有坂もそれ以上の反論はできない。


「それからこの試作銃、弾倉には一発一発手で弾を入れないといけないですよね。今の十三年式と比べても、弾を込めている時間は大して短縮されないんです。管型弾倉を使っている限り、これを解決することは難しいでしょう」

「それは確かに私も感じていたところではあります。しかし、今のところ管型弾倉を使わない連発機構というと……ガトリング砲か?」

「参考になるかはわかりませんが、少なくとも前例はありますよね」


 英梨子の知識の中に、この当時のガトリング砲の装填機構がどうなっているのかは入っていなかったが、少なくとも諸悪の根源である管型弾倉ではないことは容易に想像がついた。


「では、この管型弾倉案は廃案として、もっと素早く再装填できる方式を考えてみましょう」

「ぜひそうさせてください。出来の悪い兵器をお出しして、陛下の臣民をむやみに死地へ送ることは好ましくありませんから」


 英梨子の機転により、東京砲兵工廠は小銃の改良に際して史実の二十二年式村田連発銃のような回り道を防ぐことに成功する。この結果開発された十七年式村田連発銃をもって、日本の小銃設計能力は、世界水準に追い付いたとみなすことが多い。


十七年式村田連発銃

口径:8 mm

銃身長:650 mm

使用弾薬:十九年式無煙火薬実包(8×60mm Kujo)

 形状:リムレス、ストレート

 銃口初速:700 m/s

作動方式:ボルトアクション

 弾倉:箱型固定弾倉シングルカラム

 装弾数:5

全長:1100 mm

重量:3.8 kg

ゲーム的には、AIが「初期型連発銃」の開発をする前に「初期型連発銃」の開発を始めたが、「基本型連発銃」の方が史実年度が後なので、先行研究ペナルティで時間がかかってしまった、みたいな感じです。


少しでも面白いと思っていただけたり、本作を応援したいと思っていただけましたら、評価(★★★★★)とブックマークをよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ボルトアクション歩兵銃の十九年式村田連発銃が登場ですか となると史実の十八年式村田銃がどうなったかは気になります あと、この小銃の弾薬装填は挿弾子を用いる方式なのでしょうか? 結局どういう…
[良い点] 更新ありがとうございます [気になる点] 二十二年式村田連発銃はボルトアクション式だったそうですが、原案にポンプアクション式のものがあったのでしょうか?
[良い点] 比較的幼い女であっても実績さえあれば話を聞いてくれる……そう、この時代の日本ならね。 世界水準どころか最先端走ってるんだよなあ……まあ機構的にも弾薬的にもまだまだ発展余地があるんだろうけど…
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