表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/84

77.宇宙人とアキバ

「こんにちは〜」

「生きてるか」

『地球は食事がウマイからな。いつにも増して生き生きしているぞ』


 タバコ屋を出て博士ハウスに住みはじめたメロ。こっちの方が商店街よりは潜伏しやすいか。

 今はもうお下がりの変Tじゃなくて、普通のシャツとワイドパンツ。


「地球より発展してるクセにメシマズなのか」

『特に私の出身地域では、保存食以外は基本生だからな。料理という概念がほぼない。サラダ刺身ユッケだ。地球は炭水化物や野菜料理がウマイ』

「たしかに生麦生米はキツいわなぁ」


 最近メロ’sブームらしいバゲットのBLTサンドを見つめるイチコ。結局野菜は生じゃないか。

 でも生野菜はともかく食べ物の話とか。そういう抜けた話題を振っては、気を紛らわせようとしてくれている。

 もしくは、そのうち自分にも別れが来るのを直視しないようにしているのか。


『まぁそういうワケで。落ち込んだりもしたけれど、ダーリンのママに浮気チクるくらいには元気です』

「意味分からん」


 とにかく元気そうならいい。おねえさんに頼まれた手前、野垂れ死にさせるワケにゃいかないからな。まぁ病気されたら何もできないけど。

 飢えてたらこっそり食べ物持ってくるくらい? 橋の下で捨て猫飼ってるみたいだ。


「まぁ元気ならいいよ。また来る。オレになんかできることあるなら、遠慮するなよ」

「アタシもおるで! 麻婆無料!」

『ほー、そうかね。なら早速だが、このあと暇か?』

「え? 暇だけど?」

「暇やなくても暇ってことにするけど」


 メロはBLTサンドの残りを口に詰め込む。バゲットでムチャすると喉詰めるぞ。

 調子の悪い翻訳機が飲み込む音で奇妙に唸る。その次に出たのはちゃんとした言葉。


『ならちょっと、買い物に付き合え』






 まさかの電車に乗って移動。気付けば僕らは秋葉原まで連れ出されていた。


「すごぉい! 人並みにアニメも好きやけど、来るんは初めてやぁ!」

「急にこんなところ来て、いったいどうしたんだよ」

『電化製品を物色したいんだよ』


 メロはパーカーとカーゴパンツに着替えている。さすがに部屋着で遠出しないのは宇宙人も一緒らしい。

 ただ、その格好でマントをスカーフみたいに首へ巻くのはな。ファッションの世界観がアンバランス。


「そりゃまたどうして」

『んん、あー、んん。翻訳機の調子が悪すぎる。このまま音が低くなると「流れる季節にハバトケントだけ足りない」になってしまう』

「ハスキーなんやね」

「分かる例えをしてくれ」

『とにかく修理に使えそうなものを探す。そのための一大電気街だ』

「今はもうコンカフェジャングルだけどな」


 宇宙人リサーチはイマイチ情報が古い。ついていけるイチコは何者なんだよ。


「にしても、精密機械なんてどれも結構な値段するぞ? 金あるのか?」

『それならソラコが結構な額を置いていっている。さすがブラックカード持ちだな。迎えにくる気ないレベルだぞ』

「そういえば、よく国連だかに追われてカード凍結されなかったよな」

『そうだな、おそらく』


 メロはショーウィンドウのドデカいテレビに釘付け。絶対翻訳機の素材としてじゃなくて高画質に惹かれている。


「翻訳機が4Kになってどうするんだ」

『UFOのモニターに使えるかもしれないし』

「オマエあんなモンまで直す気なのか? 直せるのか?」

『UFOは冗談だが、いくつかの装備は修復したい。ヤツらの逃亡生活に付き合うなら武器がいる。ボロボロの防弾布一枚では生き残れない。生き残れないのはいいが、足を引っ張るのはよくない』

「あああ、たしかに」


 博士よりは大丈夫だと思うけどな。


「で、おそらくなんなん? カード凍結されへんのは」


 イチコはそっちの方が気になるらしい。もしくは別れの話を切り上げたいのか。


『あぁ、そうだな。なに、カードの履歴を見れる方が居場所を探りやすいだろうとな。連中の目的は彼女を連れ戻すことであって、兵糧攻めじゃないからな』

「なるほど」

『その金が私の食事や軍備増強に流れている。これはもうエスパークの経済的勝利では?』

「虚しくならないの?」

『むなしいでしゅ……』






 なんだかんだ言いつつ、たくさんの電化製品がメロの手に渡った。これが武器に変わるかもしれないと思うと、立派な軍事費横流しだ。荷物運びを手伝わされている僕らも裏切り者か?

 でもお金は日本経済内で循環しているので、経済戦争では問題ないものとする。


『いやぁ、付き合ってくれて感謝感謝だ。お礼にサーティーワン三段までなら奢るぞ? ソラコの金で』

「なんてカッコ悪いヤツなんだ」

『私はカワイイ系だからな。カッコいい必要などない。シックスパックのジャンガリアンハムスターなど』

「例えが酷すぎる」

「ゴールデンおハムやったらええの?」

『ケーブル噛まずに引きちぎるぞ』

「ペットに不適格すぎる」


 しょうもないことを話していると、「寒いネタだぞ」とブーイングかのように風が。


『おぉ寒い。秋とは言うが、もう冬の世界だな。温かい缶コーヒーでも買うか』

「アタシ、ココアがええ」

『よしよし。ハバトケントはおでん缶か?』

「またマニアックなものを」


 目の前に出てきた自販機には、そもそもマニアックな商品はなかった。カフェオレにしてもらって一休み。


『他人の金で割高な自販機のドリンク買うの気持ちえぇ〜!』

「オマエ、すっかりエスパーク人の誇りとか失ったよな」

『何を言う。誇りがあるからこうやって経済戦争を』

「はいはい」


 ああ言えばこう言う。ある意味舌戦では負けないかもしれない。

 相手してたら際限ないので視線を外す。なんとなく空に向けると、イチコも同じようにした。


「もう冬っぽいけど、秋晴れやねぇ」

「うん」

『アキバの秋晴れか?』

「黙ってコーヒー飲め」

『苦いんだもん』


 なんなのこのアホは。それに比べてイチコは


「この天気が夜まで続いたら、流星群見れそうやねぇ」


 ロマンティック風味。温度差で風邪引きそう。

 と、神さまってのは嫌がらせが趣味らしい。そのセリフを聞くやいなや、


「あれ? なんか曇ってきた?」


 急に日差しが暗くなった。

 ただ、


「曇っては、なくないか? たしかに暗いけど雲なんか出てないし。ていうか」



 黒い。青空そのものが黒ずんでいる。

 いや、アレは何かの影が?



 少しずつ天気を理解しはじめたその時。



「な、なんだアレ!?」

「映画の撮影かなんかか!?」

「キャーッ!!」



 阿鼻叫喚の電気街。

 それもそのはず。轟音で空気を振動させ、青空を割って()()()()()



「ケンちゃん!!」

「な、なんだ!? あの、あれ、鉄の塊!?」


 巨大で細長い、なんかアニメで見たことあるような感じの、なんだ!?


『なんだと? どういうことだ?』


 僕の横でメロも震えている。

 でも僕らみたいな未知と脳のパンクで起きる混乱じゃない。

 目の前のものを理解したからこその困惑、『どうして?』。


 別に説明してくれてるワケじゃないんだろうけど、彼女はポツリと呟いた。



『アレは、エスパーク地球侵攻艦隊旗艦、ソーレシー……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ