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【続編】お誘い②

 


「ステラ……僕と放課後にデートをしてくれないか?」

「……え? デ、デートですか?」


 レオン様の口から一体どんな重大なことが告げられるのかと身構えていた。しかし彼が告げたのは、デートのお誘いだった。質問に対して質問で返すのは失礼であるが、私は思わず聞き返してしまう。


「嗚呼、そうだよ。普通のデートをしていないのは承知の上でのお願いだ。ただ、先日に先輩方の卒業する姿を目にしたら、学園生活も残り一年だ。この学生服に袖を通すのもあと少しということになる。ステラとの学園生活の思い出を作りたい」


 私の返事に気分を害することなく、レオン様は優しい丁寧な説明をしてくれる。その内容は納得できるものであり、私も彼との思い出作りをしたいと願っていた。有り難い申し出である。しかしレオン様は王太子殿下だ。簡単に外出を許可されるとは考え難い。


「今しか出来ないステラとの思い出を作りたい。……駄目かな?」

「うっ! ……いえ、大変素晴らしいご提案だと思います。流石はレオン様ですわ」


 こてんと、レオン様が首を傾げた。柔らかいゴールドの髪が揺れ、エメラルドグリーンの瞳が真っ直ぐに私を見上げる。大変可愛らしい。普段ではレオン様の方が、身長があるため上目遣いになることなど殆どない。つまり貴重な上目遣いを体験しているのだ。大変可愛らしいレオン様に、私は賛辞を送る。


「ありがとう! 嬉しいよ! ステラならそう言ってくれると信じていたよ!」

「わ……私も……。レオン様がそこまで、私とのことを考えてくださりとても嬉しいです」


 レオン様は立ち上がると私を抱きしめた。突然の抱擁に驚くが、そっと愛しい彼の背中に腕を回す。そしてデートのお誘いへのお礼を口にした。私ではレオン様をデートに誘うなど出来なかっただろう。折角の機会を設けてくれた彼に感謝の気持ちでいっぱいになる。


「僕こそ、誘いに応じてくれてありがとう。そうだ……勿論、思い出と記録用に撮影をするよ。僕自身の方でも録画をするけど、周囲に術者を配して撮影させるからね。安心しておくれ」

「え? レオン様?」


 少し身体を離したレオン様が笑顔で、とんでもないことを口にした。先日の卒業パーティーで、私は録音魔法と録画魔法により醜態を晒したのだ。そのことは録音魔法と録画魔法を行使したレオン様が一番理解している筈である。



「放課後が楽しみだね。ステラ」

「……え?」


 弾むようなレオン様の声色が鼓膜を揺らす。彼の輝く笑顔と相まって、とても可愛らしい。可愛らしいのだが、私は状況を上手く吞み込めずに首を傾げる。


 遠くから昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響いた。



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