チョセーン国防戦線
世の中上手く行く事と行かない事がある。極寒の汽車の中でシャオはそんなことを考えていた。まだ着慣れない軍服を身にまとい、小さな軍人は我が国チョセーンの壁となるべく、最前線であるメラノマへと送られていた。彼が18歳になっても、遂に戦争は終わらなかった。チョホン戦争。もう四半世紀も前のことになる。近年の帝国主義の風に当てられて、Asiaの強国ホニーンが神聖なるチョセーンの領土を侵した。彼らは圧倒的な軍事力と、死を恐れない国民性によってチョセーン軍を殺戮し、あろうことかチョセーン人を迫害し、重労働に従事させた。チョセーンはAsiaの雄チャオゴクと手を結び、必死に抵抗を続けている。
「死ぬのが怖いか?」
シャオに声がかかる。同期のトルハだ。シャオよりも一回り小柄だが、訓練や体力テストではいつも1位を保ち続けている。いつも落第点すれすれのシャオとは雲泥の差である。
「あの女とやれば良かったわぁー」
彼は持ち合わせている精一杯のユーモアで返した。当然死ぬのは怖い。だからこそ、事態を直視したく無かった。
「聞いたか?ホニーンには学校があるらしいぞ、士官のつかないな。女もいるし、訓練もない。考えられないな、相手も戦時中なのに。」
「そんなとこ辞めるンゴねぇ」
「丁度俺たちぐらいの奴らが通うんだとよ、羨ましいね青春ってやつは。」
戦争の長期化は人的資源の枯渇に繋がる。チョセーン政府は苦肉の策として、徴兵制を実施した。シャオたちはその14代目であった。そのため彼らにとって青春とは訓練であり、恋愛にうつつを抜かす暇はなかった。
「まぁ給料分は働くよ。既に40万ヴォン貰ってるんでね。」
シャオはそう言い放つと、目を閉じた。
ドーンドーンドーンドーンドーンドーンドーンドーンドーン
汽車は空爆されましたとさ。めでたしめでたし。