ボクのセシル
「キミは生真面目なんだよ!」
キミの目が覚めたら…こう言いたい。
キミのお母さん
さっき初めて会った。
いきなり詰られて
ボクは土下座して詫びた。
「ボクのプロポーズが原因なんです」って
悔しかった!!
キミを“過去”から守ってあげられなかった。
いや!
この刹那、こんな言葉が出てしまうボク自身の心が申し訳なくて、涙で病室の床を濡らした。
キミが一夜を共にしたオトコども!!…やっぱりすべて憎い!!
付き合う前に…そんな噂を耳にしない訳では無かったのに…ボクはキミを目の端で捕まえて、追って、声を掛けて…
ふたりでカフェのテーブルをはさんだ。
そしてボクは
キミに夢中になった。
そう言えばキミは…
ふたりで“部屋”を選ぶときに…
「今日で何回目?」ってボクに聞いたね。
そして…部屋を出る前にキメたメイクは必ず強めで…
ちょっと悲し気な目の色を押し隠して
「じゃあね!」
とボクに手を振った。
去ってゆくキミの背中を見るのは
いつもいつも身を切られる思いで…
気が付くと
ボクの目に涙が潤んでいた。
でもそれがキミを苦しめて
こんな結果をもたらせてしまったのなら
ボクはボク自身が!!
この胸の内にどす黒い嫉妬や蔑みを抱え込んでいるボク自身が!!
一番憎い!!
そしたらお母さんも床に跪いて、キラキラネイルの指でボクの頬を包んでくれた。
「あの子を蔑んでいたのはワタシ。あなたは嫉妬を抱えているけれど、あの子を蔑んではいない」
でもボクは…ボクだって今までに…他の子と付き合った事もあるくせに! エッチな目で…女の子の事を見たりして来たのに!!
そしたらお母さんは
アハハハと笑って
薬指で目尻を押さえ
涙の粒をネイルアートに付け足して
ボクに囁いてくれた。
「私の若い頃じゃあるまいし…アナタ達!生真面目過ぎよ!」
それからふたりで
まだ目覚めないキミの顔を覗き込んだ。
真っ青だったキミの頬に赤みが戻って来て
“刻”の訪れをボクたちに知らせた。
安堵と愛おしさでボクの胸はいっぱいになり…
ボクは屈んで
キミにキスをひとつ、またひとつ…
目が覚めたキミからの
『断りもなく私にキスするな!!』
ってクレームも
またキスで塞ぎたい。
キミの枕元に置いてあるティファニーブルーのケースに気付いたお母さんが
「あなた、指輪のサイズ知ってるの?」
って尋ねたから
ボクはケースを開けて
胸の上に重ねられたキミの左手を取る。
そしたらキミはうっすら目を開けた。
「…左の薬指を教えたのは…カレだけなの…」
指輪を通されたキミの左手と指輪を通したボクの右手
指と指を絡めて…
ボクたちは深い深いキスを交わした。
別の作品の下調べで…昔の曲もいくつか並べていました。
昨日、たまたまその内の1枚のCDをPCにツッコんだら…流れてきたエレキのイントロがカッコよくて、そのまま聴いていたら…泣かされました。
今の時代ならどうかな? 相手の男の子はどう思っていたのかな?って、考えていたら…思い付いたお話です。
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