表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

はじめまして、ムスクの香

私は子供の時から可愛いとか、綺麗とか言われたことがなかった

要領も良くなくて、いつも他の子と比べられていた

大人になるにつれて諦めて

私は醜いんだ

皆と違う

できない子

そう思いながらあまり目立たぬように生きてきた

就職した呉服屋でも、なかなか仕事が覚えれず先輩方もイライラしているだろう

辛いな、やだな

昼間、今日は生憎の雨

ショッピングモールにもお客様は疎らで少し淋しい

「いらっしゃいませー!只今和雑貨半額です!お立ち寄り下さいませー!」

前を通る人声かけ

大体は素通りされるけれどそれも慣れてしまった

「これもなるの?」

「はい、2つまで半額です。」

異常に距離が近い

触られる

気持ち悪くなって来て先輩と接客を代わってもらった

ダメだなぁ、慣れないといけないのに

また、お客様からは離れないようにって怒られてしまう

少し離れて足袋を見るふりをして座る

するとムスクの爽やかな香りが後ろに広がった

「君ならどっちの帯締が好きかな?」

男性が持っていたのは、鮮やかな青と森林のような緑

どちらも好きだけど、私はお客様を見て青を選んだ

「ありがとう、あと1つ、、、、男性用の紐で同じのはあるかな?」

紐、、、、珍しい

でも男性のは無いなぁ

そうだ、あれなら!

「帯締は無いので羽織紐はいかがでしょうか?飾りはちょっと違いますがこちらの青も綺麗ですよ?」

「うん、この色綺麗だね、、、、あの時の色だ」

「ん?色、ですか?」

「あ、ごめん何でもないよ」

慌てる男性に思わず笑ってしまった

「帯締、絶対喜んで貰えますよ」

「ありがとう。じゃあこの羽織紐も」

男性に帯締と羽織紐を渡して今日の営業は終わった。

不思議と、その人は嫌じゃなかった

朝、レジの横にはメモで

レジの切り方が何も出来ていない、また教えながらやって行って下さい


そう書かれていた

出来て、なかったんだ

チェックしてもらったし、OKだって言われたのに、、、、

殴り書きされたような文字を見て静かにメモをレジに戻した

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、、、、あ、昨日の」

そこには、ムスクの香りの男性が笑っていた

その手には綺麗なはぎれ

「このはぎれ綺麗ですね、海みたい」

「うん、僕もそう思って、、、、どうにかして使いたいんだけどどんな使い道があるかな?」

男性からはぎれを受け取り大きさを見るそこそこあるからバッグやショールとかにも使えそうだ

「綺麗なはぎれですね、リメイクですか?」

「はい、この方にどんな感じが喜ばれるか聞こうかと思いまして」

「あ、え?はい」

「そうですか、、、、こちらも参考にカタログ見てみて下さい」

ベテランの社員さんに、男性との話は中断され私はただ、頷くしかできなかった

「うん、ありがとうございます。またリメイクの日に持って来て相談します」

「はい!あ、そうだお兄さん今お客様に聞いてるんですがこの反物、アンケートで好きな色、着心地、何処に着ていきたいかを聞いているんです。お兄さんこのえんじ色とターコイズどちらが好きですか?」

「、、、、僕は」

違う、何だかそう思って目にとまった男性のはぎれをぱっと取る

「青」

社員さんのそんなはぎれの青じゃあダメとか言われたけど、男性を私はじっと見つめる

「あはは、そうだね僕は青が好きかな?」

笑う男性にハッとしてあわてて頭を下げる

いきなりお客様のものを触ってこれだと言ってしまったんだ

失礼な事をした、、、、

きっと笑っているけれど、怒っているに違いない

あわてて小紋の反物を持ってマニュアルと教えてもらった通り

「大変失礼致しました。こちらの2つもございますがどのような色がよろしいですか?」

反物で顔を隠してなるべく感情を出さないように、バレないように

「そうですね、、、、僕は、やっぱりこの色かな?」

恐る恐る顔を上げれば男性が指差していたのは、綺麗な青のはぎれだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ